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第4節 開発人材の発掘・育成・活用



 多様化・複雑化する援助課題に応えるためには、地域にとって重要なインフラである道路や橋の整備に加え、その運営手法や地域全体の開発との連携など、ソフト面・政策面での支援を併せ行うことが不可欠です。また、インフラ建設をはじめとして、ソフト面、さらには経済・社会制度そのものの設計や構築のための支援、加えて、国際社会と協調しながら援助を進めていくためには、専門分野や途上国の実情についての高度な知識や経験とともに、外国語でのコミュニケーション能力をあわせ持った多くの人材の確保や育成が不可欠です。援助人材の発掘・育成は、上述の実施体制の改善と併せ、ODA改革の成否を握る鍵の一つであり、国民参加型援助を推進していく上での重要な要素となります。
 こうした要請に応えるため、90年に国際開発大学構想を推進する機関として設立された(財)国際開発高等教育機関(FASID:Foundation for Advanced Studies on International Development)は、援助人材を対象とした研修事業や海外への派遣事業、調査・研究事業を実施しており、2000年4月、政策研究大学院大学(GRIPS:National Graduate Institute for Policy Studies)と連携して、同大学院博士前期課程に国際開発プログラム(共同講座)を開設しました。同プログラムは、開発経済学や、プロジェクト管理、貧困問題など実践的かつ国際的に通用する高いレベルの大学院教育を通じ、国際機関の幹部候補生となる人材や、日本政府や援助実施機関等の中核を担う人材等の育成を目指すものです。さらに、神戸、名古屋などのいくつかの国立大学や私立大学を中心に開発協力関連の講座や学科等が開設され、FASIDも講師派遣等を通じて協力しています。
 また、技術協力の実施機関であるJICAにおいても、政府内の関係機関や地方自治体の専門家が有する専門知識を活用する一方で、分野と内容によっては外部人材、特に若手人材・専門家を援助実務の現場に採用すべく一般公募制度を通じ、専門家を広く民間より公募することに努めています(注1)。2002年度からは、民間業界に蓄積された高度な技術を一層積極的に活用すべく、民間人材活用をさらに促進することとしました。このほか、途上国への派遣が予定されている専門家を対象として、語学、医療事情に加えて分野横断的な課題である環境、途上国の女性支援(WID:Women in Development)などに関する研修や、地方自治体職員やNGO職員を対象とした研修、セミナーを実施しています。
 さらに、青年海外協力隊やシニア海外ボランティア等さまざまな世代の参加や、独自の経験や技術を有する地方自治体職員や現役の企業関係者のODA参加を積極的に進めることによって、わが国が比較優位を持つ技術やノウハウを途上国の開発に活かしています(注2)
 NGO等との連携の重要性が指摘されていることを踏まえ、JICAは2002年度より国民参加協力推進事業を創設し、この中で草の根技術協力事業を実施することとしました。同事業ではわが国のNGO、地方公共団体、大学等の有するノウハウを最大限に活かし、積極的な援助を実施することが期待されています。
 コンサルタントについても、制度・政策に関わる支援を行ういわゆる「ソフト分野」での需要が高まっており、そのための能力強化が求められています。被援助国のソフト分野のニーズを把握し、今後のわが国の取組強化を図るために、ソフト関係のコンサルタントとも積極的な意見交換に努めています。
 第2次ODA改革懇談会最終報告においても、開発人材を発掘・育成・活用する方策が取り上げられており、例えば義務教育における開発教育の充実や「国際協力人材開発センター(仮称)」の創設、外務省や援助実施機関における外部人材の起用などの具体的提言が示されています。本節の冒頭にも述べたとおり、わが国にとり、多様化する開発ニーズにこたえ、国際的に高い評価を得られるような援助人材を幅広く育成、確保することは大きな課題であり、今後、中長期的な視点に立って、この課題に取り組んでいきたいと考えております。


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