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第3節 ODA制度の見直し



 限られたODA資源を透明性を確保しながらより効率的に活用していくためには、ODAの各種制度について総点検し、その改善を図る必要があります。わが国は、二国間の援助形態として技術協力並びに無償及び有償の資金協力制度を有していますが、こうした各々の協力形態において、実施の過程でこれまで多くの制度上の工夫や改善が加えられてきているものの、全体として、非常に複雑で専門家でないと良くわからない、また、途上国の状況や援助需要の急速な変化に迅速かつ柔軟に対応できないとの批判もあります。
 まず、これまでアジア諸国を中心に経済社会開発等に大きな貢献をしてきたとして高い評価を得ている円借款制度については、時代の変化に合わせてより効果的、効率的なものとすべく、2000年1月に「円借款制度に関する懇談会」(外務省経済協力局長の私的懇談会)が立ち上げられ、同年8月に報告書が公表されました(注)。これを受けて、円借款と無償資金協力や技術協力との有機的連携の強化、円借款の貸付金利や償還期間の多様化、及びソフト面の強化等の制度の見直しを図っているところです。2002年7月からは、より効果的・効率的な円借款の実施を目指して、円借款の償還期間の短縮化オプションの導入、ブラジル等中進国に対する円借款の対象分野の拡大とともに従来の優遇金利制度の簡素化や日本の優れた技術を活用してわが国の「顔の見える援助」を促進するために「本邦技術活用条件」の導入等の円借款の供与条件の改善を図ることとしました。
 無償資金協力の改善例としては、債務救済無償及び食糧増産援助によって供与した資金の使途については、従来、物品の 輸入に充てることのみを認めていましたが、被援助国側の要望を踏まえ、2001年度より、サービスの輸入や援助協調の一形態であるコモン・ファンドへの投入に充てることも認めることとしました。
 また、技術協力においては、2002年度より、個別専門家派遣等とプロジェクト方式技術協力の予算を整理・統合し、達成すべき目標に見合った投入(専門家、研修、機材等)を自由かつ柔軟に組み合わせて実施する体制を整備しました。
 各スキーム間の連携についても、さまざまな改善策が講じられています。例えば、わが国が行うさまざまな形態の技術協力と資金協力をこれまで以上に効果的に連携させて実施するための新しい支援形態として、2001年度に開始された「セクタープログラム開発調査」があります。これは、相手国の特定分野(セクター)を選択して相手国政府や他ドナーとの調整を行いつつ、具体的な開発政策を策定するとともに、その分野に対するわが国の技術協力・資金協力の総合的な調整を行うものです。2001年度にはタンザニアの地方開発セクター、ベトナムの初等教育セクター、インドネシアの農水産業セクターについてこの形態での開発調査が開始されました。
 このほかにもスキーム間の連携により、各国で大きな成果を挙げているものとして次の事例があります。
 モロッコにおける道路網の整備に関し、わが国は、無償資金協力で「道路保守建設機械訓練所建設計画」を実施するとともに、円借款でも「道路セクター整備計画」、「高速道路建設計画」などを実施したほか、2001年6月には「地中海道路建設計画」の交換公文を締結しました。技術協力でも「道路建設機械訓練センター」においてプロジェクト方式技術協力を実施しています。
 ベトナムの交通セクターにおいては、わが国開発調査「運輸交通開発戦略調査」において策定された全国版のマスタープランに基づき、同国南部の都市ホーチミン市の都市交通マスタープラン等を策定するため、開発調査「ホーチミン市都市公共交通システム整備計画調査」を実施しているところです。同調査では、円借款、無償資金協力、技術協力といったわが国援助の総合的実施が想定されており、各種のスキームを有機的に活用した援助の典型例となることが期待されています。


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