1. わが国政府は、開発途上国の温暖化対策に対する円借款等による支援策のさらなる拡充を決定し、12月8日、京都において気候変動枠組み条約第3回締約国会議閣僚級会合の開会に際して橋本総理大臣より発表した。この拡充策は、既に発表されている「京都イニシアティブ」の3本柱のひとつである「最優遇条件による円借款」を強化拡充するとともに、国際機関を通じた支援を強化するものであり、次の3つからなる。
- (1)温暖化対策対象分野の拡充
- (2)中進国金利のさらなる引き下げ
- (3)国際機関を通じた支援の強化
2. 温暖化対策案件対象分野の拡充・提示
わが国は、本年9月、省エネルギー、新・再生可能エネルギー、および森林の造成・保全等の温暖化対策案件について、金利0.75%、償還期間40年(うち10年据置)の最優遇条件を適用することとした。今般、温暖化問題の重要性及び緊急性に鑑み、同最優遇条件の対象となる円借款案件対象分野を大幅に拡充するとともに新たに例示し(別添を参照)、途上国が温暖化対策に円借款を利用しやすいよう配慮した。
同メニューには、従来、環境案件として取り扱われていなかった渋滞緩和のための都市大量交通システム(地下鉄、モノレール等)、水力発電所(環境への負荷が大きくない案件に限る)、天然ガス発電関連設備、省エネルギー・省資源のためのリハビリ等も含まれている。これら分野は、途上国が地球温暖化問題に配慮しつつ経済開発を進めるという持続可能な開発の実現に貢献するものである。
3. 中進国金利のさらなる引き下げ
わが国は、本年9月、途上国の公害対策案件および温暖化問題を含む地球環境問題対策案件を対象として円借款の供与条件を大幅に緩和した。その際2.5%に引き下げた中進国(注)向け円借款の金利を、温暖化防止における中進国の重要性等を踏まえ、今般、1.8%までさらに引き下げることを決定した。
中進国は、途上国の中でも比較的工業化の進んでいる国であり、二酸化炭素排出量が大きく、今後とも増加を続けることが予想される。また、地球温暖化問題についての認識も深く、排出抑制のための潜在的能力を有している。しかしながら、これらの国においては、技術および資金の不足から、必ずしも十分な対策がとられているとは言えず、これら諸国による温暖化防止のための取組を支援することは、温暖化防止対策における重要な鍵を握っている。
(注)中進国とは一人当たりGNPが$3,035を超える国々であり(1995年世銀見積り)、マレーシア、ブラジル、メキシコ、チリ、南アフリカ、ハン ガリー、およびチェコ等が円借款の対象国である。
4. 国際機関を通じた支援の強化
(1)途上国の温暖化防止努力に対する支援にあたっては、気候変動枠組み条約上の資金メカニズムである地球環境ファシリティー(GEF)や、世界銀行・アジア開発銀行等の国際開発金融機関、国連開発計画(UNDP)・国連環境計画
(UNEP)等の国際機関も重要な役割を担っており、わが国はこれら組織の主要なメンバーとして引き続き積極的に支援を行っていく。
特に、国際機関を通じた技術援助等について、世界銀行グループ、アジア開発銀行、UNDP等が実施する環境関連の技術援助等に対する支援を強化するため、これら機関に対し環境分野への資金面での貢献を拡充する。
(2)また、円借款による地球環境保全策の効果を一層高めるため、国境を越えた地域を対象とするプロジェクトについて、地域的な国際機関等とも協調して取り組んでいくこととする。具体的には、優良な地域的な国際機関等に対して円借款を供与することにより、地域環境案件を実施することとする。
別添
温暖化対策円借款案件対象分野(例示)
1. 省エネルギー
- 省エネルギー設備の購入・設置
- 省エネルギー・省資源を目的とした発電所、送配電線、鉄道、工場等の高規格 化、リハビリ
- 地域熱供給
- 渋滞緩和のための都市大量交通システム(地下鉄、モノレール等)
2. 新・再生可能エネルギー
- 太陽光発電
- 風力発電
- 廃棄物発電及び熱利用
- 太陽熱利用
- バイオマスエネルギー
- 地熱発電
- 水力発電(環境への負荷が大きくない案件に限る)
- 天然ガス発電、受入基地及びパイプライン
3. 森林の保全・造成
4. 大気汚染対策
- 大気汚染防止施設の設置
- 大気汚染防止のための都市ガス化