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防災協力イニシアティブ
平成17年1月
日本政府 I. 基本的考え方 2004年12月に発生したスマトラ島沖大地震およびインド洋津波災害は、周辺国において未曽有の人的、物質的被害をもたらした。地震、津波、豪雨、豪雪、暴風(台風、竜巻など)、洪水、土砂災害(土石流、がけ崩れ、土壌流出など)、火山噴火、森林火災、干ばつなどの自然災害は、人的損失、財産上の損害はもとより、広く社会経済の混乱を引き起こし、人類の生活を脅かしてきた。自然災害は、毎年世界各国に様々な形で深刻な被害を及ぼす地球的規模の問題である。度重なる被害により人々の生活や経済社会の開発が阻害される悪循環を断つことは、貧困削減、持続可能な開発を実現する上で最も重要な前提条件の一つである。特に、開発途上国の多くは、災害に対して脆弱であり、災害により極めて深刻な被害を受ける。政府の防災白書の統計によれば、1978年から2002年までの25年間で自然災害により死亡した人数の9割以上が開発途上国に集中している。また、一般に開発途上国においては、自然災害に脆弱な貧困層が大きな被害を受けて災害難民となる場合が多く、衛生状態の悪化や食糧不足などの二次的影響が長期化することが大きな課題となっている。 自国の防災への取組の第一義的責任はその国自身にあるが、同時に、自助を支える互助、共助も重要である。わが国は、開発途上国のオーナーシップに基づく取組を促進するとともに、これを支援するパートナーシップを重視している。 災害は人間に対する直接的な脅威であり、グローバルな視点や地域、国レベルの視点とともに、個々の人間に着目した「人間の安全保障」やジェンダーの視点を踏まえて対処することが重要である。また、災害への対処に効果的に協力していくためには、受益者の立場を十分考慮して災害の各段階に応じて対処していく必要がある。 わが国は、防災分野において2003年度には約330億円の資金協力を供与し、国際的に見ても最高水準の協力を行っている。さらに、国際的に高い比較優位を有する自国の経験や人材、技術を活用して、防災分野の協力に積極的な役割を果たしてきた。わが国は、スマトラ島沖大地震およびインド洋津波災害に対し、資金、知見、人的貢献の3点で最大限の支援を行うため、緊急支援措置として当面5億ドルを限度とする協力を無償で供与し、インド洋における津波早期警戒メカニズムを速やかに構築するため関係国・機関との協力を推進するほか、復旧、復興面においても最大限の支援を行う方針である。地震、津波をはじめとする自然災害に包括的かつ一貫性をもって対処するため、今般、国連防災世界会議が開催されるにあたり、ODAによる防災分野の協力に関するわが国の基本方針や具体的取組を以下の通り発表する。 II. 基本方針 わが国は、以下の基本方針に基づき、ODAを通じて防災分野における開発途上国の自助努力を支援する。 1. 防災への優先度の向上 防災を通じて自然災害による被害を軽減することが可能であることから、政策決定者、政府などの関係者の防災に対する意識の向上を図り政策優先度を高めることは極めて重要である。わが国は政策協議、セミナーの開催、啓蒙活動、災害リスクの評価等を通じて、防災の重要性に関する開発途上国の意識向上を支援するとともに、防災の普及・定着を図る。 2. 人間の安全保障の視点 防災協力の推進にあたっては、「人間の安全保障」の観点から一人一人の人間を中心に据えて、災害から個人を保護し、また、災害に対して個人や地域社会が自ら行動する能力を高めることが重要である。このために、まず住民のニーズを的確に把握することが重要である。また、地域社会の能力強化を支援する。更に、子供や貧困層などの災害に対して特に脆弱な人々に配慮する。 3. ジェンダーの視点 政策決定への参画、経済社会活動への参加、情報へのアクセスといった様々な面で男女格差が存在するために、女性は災害時に特に被害を受けやすい。したがって、防災協力の全ての側面においてジェンダーの視点に立った支援を行う。 4. ソフト面での支援の重要性 災害予防や緊急対応時に適切な行動をとることが被害を軽減し、災害に対する脆弱性を減らす上で重要である。この観点から、経済社会基盤整備などのハード面での取組に加えて、制度構築、人材育成、計画策定等のソフト面での支援を行う。その際、現地の経済社会状況を的確に把握して、実効性のある支援に努力する。 5. わが国の経験、知識及び技術の活用 わが国は、地震、津波、台風、洪水、火山噴火など様々な災害を繰り返し経験して、高い災害対応能力を備えるようになった。開発途上国の災害対応能力を向上させるために、わが国の有する経験と優れた知識と技術を効果的に活用する。 6. 現地適合技術の活用・普及 開発途上国の実情に即した防災に関する技術及び知見を適用した協力を行う。このため、必要に応じて費用対効果の高い、開発途上国においても入手可能な材料や技術、手段を、現地条件に適した持続可能な方法で活用、普及する。また、小規模な投入であっても高い波及効果が期待されるモデルケース的な案件を実施する。 7. 様々な関係者との連携促進 災害予防の普及を幅広く進めるため、様々な分野で活動を行う国際機関、地域機関、他の援助国、地方自治体、内外のNGO、民間部門、学術機関等との連携を図ることは重要である。特に、地域社会や個人などに直接裨益する草の根レベルの協力を強化するため、開発途上国において災害予防に積極的に取り組むNGOとの連携を促進する。 III. 災害の各段階に応じた協力 わが国は、上記の基本方針に基づき、 (1) 災害予防の開発政策への統合 (2) 災害直後の迅速で的確な支援 (3) 復興から持続可能な開発に向けた協力 のそれぞれの段階に応じて、一貫性のある防災協力の実施に努力する。 1. 災害予防の開発政策への統合 開発途上国において災害による被害の拡大を最小限にするため、想定される災害への備えを念頭に置くことが重要である。“予防の文化”を長期的な国家政策や都市計画、地域計画、規制や基準に取り入れるために、政策提言や制度構築、人材育成を支援する。
災害が発生した際、人命救助のための国際緊急援助隊の派遣、生活必需品などの物資の供与及び食糧支援、基礎的経済社会基盤の復興を迅速に行う。さらに、研修、建築物の危険度判定や洪水防御などの防災専門家の派遣を通じて、緊急時に対応できる人材の育成を支援する。
開発途上国において地震や津波、風水害などにより大規模かつ広範囲に被災した地域や災害が頻発し成長の妨げとなっている地域を対象に、災害復興時における災害の悪循環を断ち、災害に強い地域づくりと持続可能な開発に向けた取組を支援する。このために、災害に強い経済社会基盤・建築の分野やシステムづくりを中心とした協力を行う。
わが国は、以下の取組を通じて開発途上国の防災戦略を具体化する。その際、政策目標及びその達成度の評価をできる限り考慮することにより、効果的援助に努める。 1. 制度構築 専門家派遣などを通じ、開発途上国において防災に関する次に示すような制度の創設・改善に関するノウハウを提供して、災害に強い国土づくりのための協力を促進する。
2. 人づくり 防災行政の担当者や専門家を養成するため、地震、津波、治水・砂防、火山噴火、気象分野について下記のとおり研修、専門家の派遣及び開発途上国政府との共同調査研究などを通じた技術移転、知的協力を行う。また、ジェンダーの視点に立った協力や開発途上国の学校教育において防災をカリキュラムの一部に組み入れるための協力を検討する。
3. 経済社会基盤整備 洪水対策や植林など災害予防を目的とした経済社会基盤整備に加えて、災害による経済社会的影響を軽減するため、本邦技術活用条件(STEP)等により交通施設などの災害に強い経済社会基盤整備を支援する。その際、人づくりや制度構築などのソフト面の協力をハード面の協力に適切に組み合わせる。
4. 被災者の生活再建支援 地震や津波などによる自然災害発生直後に、被災者、避難民の生命、生活を守り最低限必要な衣食住を確保するため、住居、衣料、食料、水、衛生、保健などに関するニーズに即した迅速かつ効果的な支援を行う。 |
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