外務省 English リンクページ よくある質問集 検索 サイトマップ
外務省案内 渡航関連情報 各国・地域情勢 外交政策 ODA
会談・訪問 報道・広報 キッズ外務省 資料・公開情報 各種手続き
トップページ 外交政策 地球環境
地球環境

ワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)第13回締約国会議(10月2-14日、於:バンコク(タイ))
(概要と評価)

平成16年10月14日

1.全体の概要

(1) 10月2-14日にかけて、バンコク(タイ)でワシントン条約第13回締約国会議(参加国数:152ヵ国(全締約国数166ヵ国)、議長:スウィット・タイ天然資源・環境大臣)が開催された。同会議には、我が国より、小井沼外務省国際社会協力部参事官、中前水産庁増殖推進部長、福島外務省気候変動室長、小松水産庁漁場資源課長、長畠水産庁生態系保全室長、有吉経済産業省貿易審査課長、名執環境省野生生物課長他、関係省庁の関係者等が出席した。

(2) 今次会議に臨み、我が方代表団は、我が国として、野生動植物の保護を重視しているが、その多様な価値にも留意すべきであり、適切な保護のためにも科学的な根拠に基づく議論を行い、「持続可能な利用(sustainable use)」を図っていくことが重要である旨会議や記者ブリーフ等の場を通じ一貫した主張を行った。

(3) このような対処振りの結果、ミンククジラについての我が国提案は否決されたものの過半数に迫る多くの支持を得たほか、我が方主張を理解する諸国の支持により、我が国が次期常設委員会アジア地域代表に選出される等の進展があった。

2.個別問題の討議の結果

(1) クジラ関係

(イ) 我が国による鯨類資源のCITES附属書掲載とIWCに関する決議案
 第1委員会(12日)における議論の結果、CITES及びIWCとの関係の提案(IWCに改訂管理制度(RMS)の早期完成を促す)については賛成57、反対63、棄権13で否決されたが、過去最大の賛成票を得ることができた。

(ロ) 我が国による北半球ミンククジラのダウンリスティング( I → II )提案
 第1委員会(12日)における議論の結果、北半球ミンククジラ(個体数16万頭)の提案については賛成55、反対67、棄権14で否決されたが、過去最大の賛成票を得ることができた。
 その後、全体会合(14日)において、ミンククジラ提案について、我が方より再審議を求めたが、再審議に必要な有効投票総数の3分の1の支持を得られず、再審議に至らなかった。

(2) サメ類関係

(イ) サメ類保存に関する決定
 サメ類については、CITESではなく漁業の専門機関であるFAOや地域漁業管理機関で管理を行うべきとの基本的立場の下、我が国が主体的かつ精力的に交渉を行った結果、当初のCITESが主体となって魚種別管理を行う案を、FAOの主催によるサメ類管理のワークショップの開催を求めることを主な内容とする案に大幅に変更させ、かつ各国国内での厳格なサメ保存管理措置の採用要請も削除させ、これがコンセンサスで承認された。

(ロ) 豪州及びマダガスカルによるホホジロザメの附属書 II 掲載提案
 第1委員会(12日)において、本提案を支持するEU(25ヵ国)をはじめとする欧米諸国に対し、我が方は特に中南米地域の票がまとまらず、賛成87、反対34、棄権9で承認された。

(3) 米国による「海からの持ち込み」の解釈と実施に関する決議案
 CITESにおいて、公海漁業の陸揚げ規制を意図する本提案に対し、FAOや地域漁業管理機関に検討を委ねるべきとの主張を繰り返し行った結果、FAOも参加の上で、今後検討するとの内容に変更され、合意された。

(4) CITESとFAOの協調

 CITESとFAOとの了解覚書(MOU)については、常設委員会において継続検討していくことにつき合意された。

(5) タイによるカワゴンドウ(イラワジイルカ)のアップリスティング( II → I )提案

 第1委員会(8日)での議論の結果、賛成73、反対30、棄権8で承認された。

(6) アフリカゾウ関係

(イ) MIKE(ゾウ原産国の違法捕殺監視システム)とETIS(ゾウの違法取引情報システム)の報告から、中央アフリカで密猟が起こり、取引規制ができていないエチオピアやナイジェリアで違法取引が行われていることが明らかになった。またETISの結果から過去のCITES締約国会議での南部アフリカ個体群のダウンリスティング及び1回限りの象牙の国際取引の時期と違法取引の変化との間に顕著な関係は認められないことが明らかになった。

(ロ) ナミビアによる自国個体群(附属書 II )に関する注釈改正(年間2トンの輸出割当(生牙)、商業目的での象牙加工品の取引、商業目的での革・毛製品の取引)
 第1委員会(11日)での議論の結果、革と毛製品の商業的取引については採択(全会一致)、象牙加工品の商業的取引については否決(賛成35、反対54、棄権23)、前回締約国会議で承認された1回限りの象牙輸出(10t)の1年後以降、年間2000kgの生牙の輸出割当を設定することについては否決(賛成31、反対59、棄権20)された。
 その後、全体会合(14日)において、ナミビアより、象牙加工品に関し再審議を求め、非商業目的での象牙加工品の取引とした修正提案が賛成71、反対23、棄権35で承認された。

(ハ) 南アフリカによる自国個体群(附属書 II )に関する注釈改正(商業目的 での革製品の取引)  第1委員会(11日)での議論の結果、コンセンサスで承認された。

(7) その他陸上動物関係

(イ) インドネシアによるコバタンのアップリスティング( II → I )提案
 第1委員会(12日)での議論の結果、コンセンサスで承認された。

(ロ) メキシコによるフジイロボウシインコのアップリスティング( II → I )提案
 第1委員会(12日)での議論の結果、コンセンサスで承認された。

(ハ) マダガスカルによるクモノスガメのアップリスティング( II → I )提案
 第1委員会(12日)での議論の結果、コンセンサスで承認された。

(ニ) 米国及びインドネシアによるニシクイガメ、ムツイタガメ、インドシナオオスッポン、スッポンモドキ、マコードナガクビガメの附属書 II 掲載提案
 第1委員会(8日、12日)での議論の結果、コンセンサスで承認された。

(8) 植物関係

(イ) 米国及び中国によるアジアのイチイ種の附属書 II 掲載提案
  第1委員会(8日)での議論の結果、コンセンサスで承認された。

(ロ) インドネシアによるラミンの附属書 II 掲載提案
  第1委員会(8日)での議論の結果、コンセンサスで承認された。

(9) 予算

 対前3年度比3%増の3カ年予算(2006-2008年)が承認された。

(10) 附属書掲載基準の見直し

 第1委員会での審議の結果、コンセンサスで採択された。我が国がこれまで主張してきたことのほとんどが反映された結果となった。

(11) 条約の適正な執行のための決議等の見直し

 第2委員会において、条約の適正な執行を行うため輸出許可等の規定を定めた決議等の改正に関する審議が行われた。これらの検討結果を受け、我が国としても以下の項目を中心に輸出入管理に関する必要な諸規定の改正を行い、適切な貿易管理を行うこととする。

(イ) 締約国の管理当局が行うCITES許可書発給事務の合理化(サンプル品等)。

(ロ) 締約国管理当局が実施すべき事項の見直し・合理化(各種報告書等の提出)。

(ハ) CITES許可書発給の適正化(ソースコード、輸出割当の設定等事務の適正化)。

(12) 違法取引に対する国際協力

 条約の対象となる動植物の国際違法取引について、国内取締関係当局(税関、警察)と連携を図りこれに適切に対応することはもとより、輸出国捜査当局及び国際関係機関(ICPO)等とも情報提供等の協力を促進し、違法取引の防止を図ることとなった。

(13) 条約遵守のガイドライン案

 今次会合では第50回常設委員会(本年3月、於:ジュネーブ)の決定を受けて既に設置された条約遵守のガイドライン案に関する会期間作業部会のメンバーが中心となり(豪州、米国、日本、中国、EU、ノルウェー、メキシコ、セントルシア、タンザニア等)、ノルウェーを議長とする作業部会が設置され事務局提案の本件ガイドライン案に関する活発な意見交換を行った。各国とも基本的に本ガイドライン案はあくまでも遵守に関する条約条文、既存の決議・決定及び実際の取組等を整理し、更なる遵守の効率的な運用を促進するものとの考えを共有しており、今後引き続きメールベースで右ガイドライン案に関する検討を行い、第53回常設委員会(2005年6月)に報告することで合意した。

(14) 持続可能な利用の原則及びガイドライン

 生物多様性条約(CBD)においては第2条で生物多様性の「持続可能な利用」が定義され、また、同第7回締約国会議(COP7)で生物多様性の持続可能な利用に関する「アジス・アベバ原則・ガイドライン」が採択された。本ガイドラインの概念は、CITESの第4条の履行(附属書 II 掲載種の輸出は当該種の存続を脅かさない場合に限り許可する等)に活用できるものと考えられるが、各国から賛否の意見が述べられた。今次会合では、締約国に向けた決議、事務局及び動植物委員会に向けた決定が採択された。

3.その他

(1) 常設委員会のアジア地域代表等が改選され、我が国は、マレーシア(留任)及び中国(再選)とともに、アジア地域の新地域代表に選出された。また、常設委議長にはチリが就任した。

(2) 今次会議において、我が国によるミンククジラ提案の中の日本海への言及に対して、韓国が「東海/日本海」の併記を要求する文書を場外で配布したところ、我が方より、日本海呼称に対する我が国の立場及び国連の決定を示す文書及び資料を場外で配付するとともに、全体会合でも我が方代表団より右資料等を配布した旨発言し、右を議事録に残すことを要請して、議長がこれを認めた。

(3) 次回(第14回)締約国会議は2007年に蘭で開催されることが決定した。

4.評価

(1) 全般
 保護重視派(豪州、EU、米国等)と持続可能な利用推進派(我が国、ノルウェー、東南アジア、西部及び南部アフリカ、カリブ諸国)の対立構造の中で会議が進展したが、会議においては環境保護NGOも発言を認められ、数の上では前者が後者を上回っていた。他方、我が国の鯨関係の提案については、いずれも過去最大の支持票を獲得するなど、科学的根拠に基づく持続可能な利用の考え方が一層定着し、支持が増加しつつあることが伺われた。他方、保護重視派であるEUが新たに加盟した中東欧諸国10カ国を含め25カ国となり同一の立場をとり、NGOが積極的に各国に働きかけている状況の下、COPの議場ではこのような影響が議決に反映される厳しい局面も見られたところ、我が国としては今後とも粘り強く科学的根拠に基づく「持続可能な利用」について理解を広める努力を続けていく必要があると感じられた。

(2) クジラ及び海産種
 我が国は、科学的根拠に基づく「持続可能な利用」の典型例として、鯨類のダウンリスティングの提案等を行った。今次会合に先立ち、水産庁は各国にミッションを派遣して働きかけを行い、また在外公館を通じた支持要請を行って今次会合に臨んだ。これにより前回を上回る55カ国(決議については57ヵ国)の支持を得たことは、我が国支持国が定着し、それが増加しつつあるものとして評価し得る。我が国としては、これらの支持国との良好な関係の維持に引き続き努力していくべきである。
 また、絶滅のおそれがないと判断され、商業的に利用されている海産種については、我が国としては、専門的な知見を有するFAOや地域的な漁業機関が第一義的に扱うべきである旨主張してきた。他方、ホホジロザメ、カワゴンドウ(イラワジイルカ)等に関する附属書改正提案及び決議案等が承認されたことは、十分な科学的根拠がなく、今後CITESが海産種に関与していくことに弾みをつけることになる可能性が懸念される。

(3) 附属書改正提案
 コバタンやクモノスガメ等国内管理が不十分なために生息数が減少した種を安易に附属書 II から附属書 I に格上げする提案が見られた。これに対してわが国は、附属書 I への格上げは、ワシントン条約による国際取引規制を通じた保全の失敗したことを示すものであり、問題の解決にならないことを主張した。今後とも、同様の立場をとるスイス等と協調しつつ、この点に関する理解を他の締約国間に広めていく必要がある。
 さらに、アジア産の陸ガメ・淡水ガメの附属書 II への掲載提案が前回締約国会議同様、今回も多数見られたが、附属書 II への掲載が当該種の保全に効果があるかどうかを検証すべきである旨を表明した。今後、この点について具体的な取組をする必要があると思われる。

(4) 常設委員会アジア地域代表
 今次会議開催期間中のアジア地域会合において、我が国と中国が常設委員会新アジア地域代表に選出された(マレーシア留任)。今後、アジア地域間の協力を促進するとともに、締約国会議期間中の条約の運営を司る常設委員会においてアジア地域代表として我が方主張に基づき然るべくプレゼンスを示していくことが重要である。





BACK / 目次


外務省案内 渡航関連情報 各国・地域情勢 外交政策 ODA
会談・訪問 報道・広報 キッズ外務省 資料・公開情報 各種手続き
外務省