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全般
保護重視派(豪州、EU、米国等)と持続可能な利用推進派(我が国、ノルウェー、東南アジア、西部及び南部アフリカ、カリブ諸国)の対立構造の中で会議が進展したが、会議においては環境保護NGOも発言を認められ、数の上では前者が後者を上回っていた。他方、我が国の鯨関係の提案については、いずれも過去最大の支持票を獲得するなど、科学的根拠に基づく持続可能な利用の考え方が一層定着し、支持が増加しつつあることが伺われた。他方、保護重視派であるEUが新たに加盟した中東欧諸国10カ国を含め25カ国となり同一の立場をとり、NGOが積極的に各国に働きかけている状況の下、COPの議場ではこのような影響が議決に反映される厳しい局面も見られたところ、我が国としては今後とも粘り強く科学的根拠に基づく「持続可能な利用」について理解を広める努力を続けていく必要があると感じられた。
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クジラ及び海産種
我が国は、科学的根拠に基づく「持続可能な利用」の典型例として、鯨類のダウンリスティングの提案等を行った。今次会合に先立ち、水産庁は各国にミッションを派遣して働きかけを行い、また在外公館を通じた支持要請を行って今次会合に臨んだ。これにより前回を上回る55カ国(決議については57ヵ国)の支持を得たことは、我が国支持国が定着し、それが増加しつつあるものとして評価し得る。我が国としては、これらの支持国との良好な関係の維持に引き続き努力していくべきである。
また、絶滅のおそれがないと判断され、商業的に利用されている海産種については、我が国としては、専門的な知見を有するFAOや地域的な漁業機関が第一義的に扱うべきである旨主張してきた。他方、ホホジロザメ、カワゴンドウ(イラワジイルカ)等に関する附属書改正提案及び決議案等が承認されたことは、十分な科学的根拠がなく、今後CITESが海産種に関与していくことに弾みをつけることになる可能性が懸念される。
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附属書改正提案
コバタンやクモノスガメ等国内管理が不十分なために生息数が減少した種を安易に附属書 II から附属書 I に格上げする提案が見られた。これに対してわが国は、附属書 I への格上げは、ワシントン条約による国際取引規制を通じた保全の失敗したことを示すものであり、問題の解決にならないことを主張した。今後とも、同様の立場をとるスイス等と協調しつつ、この点に関する理解を他の締約国間に広めていく必要がある。
さらに、アジア産の陸ガメ・淡水ガメの附属書 II への掲載提案が前回締約国会議同様、今回も多数見られたが、附属書 II への掲載が当該種の保全に効果があるかどうかを検証すべきである旨を表明した。今後、この点について具体的な取組をする必要があると思われる。
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常設委員会アジア地域代表
今次会議開催期間中のアジア地域会合において、我が国と中国が常設委員会新アジア地域代表に選出された(マレーシア留任)。今後、アジア地域間の協力を促進するとともに、締約国会議期間中の条約の運営を司る常設委員会においてアジア地域代表として我が方主張に基づき然るべくプレゼンスを示していくことが重要である。
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