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軍縮・不拡散

NPT運用検討会議における山本外務政務次官演説

平成12年4月24日

1.(序)

 議長、
 私は日本政府及び国民を代表して、閣下が本会議の議長に選出されたことに対し、心から祝意を表明いたします。日本代表団は、閣下の重要な責務の遂行に対し、あらゆる協力を惜しまぬ所存であります。
 5年前のNPT運用検討・延長会議に日本国政府代表として出席した河野外務大臣は、参集した各国代表に対し、「NPTが核兵器の不拡散、軍縮、更に原子力の平和利用の分野に果たしてきた役割を単に自国との関わりばかりでなく、人類、更に地球の将来も見据えた視点から、評価・検討すべきである」と訴え、核拡散に対する懸念が強まっている中、核不拡散の基本的枠組みを確固たるものとすることは、極めて重要であるとの考えの下、我が国として、敢然、NPTの無期限延長に賛成いたしました。
 私は、日本のこの決定及び国際の平和と安全の礎として大きく貢献してきたNPTの無期限延長は、我が国にとっても、また、国際社会全体にとっても正しい選択であったと考えます。その後、新たに9カ国が加盟し、締約国は187カ国となり、その普遍性は一層増しました。

2.(今次会議の意義及び目的)

 議長、
 95年のNPT運用検討・延長会議では、無期限延長の決定と同時に「条約の運用検討プロセス強化に関する決定」並びに「核不拡散と核軍縮のための原則と目標に関する決定」がなされ、「中東に関する決議」が採択されました。国際社会は、これらの決定並びに決議に基づき、核不拡散及び核軍縮のための具体的な措置が、国際社会、就中、核兵器国の一致した積極的努力により取られていくことを強く期待致しました。かかる期待に応えて米露両国は、97年のヘルシンキ首脳会談において、来るべきSTARTⅢでの戦略核弾頭数の大幅削減に合意し、英仏両国は、各々の核戦力の自発的削減を行う等前向きの動きがありました。また、96年には、CTBTが採択され、将来に期待を抱かせる動きもありました。
 しかるに、最近に至り、南アジアでの核実験、CTBTが署名後3年以上経たにも拘わらず未だ発効していないこと、カットオフ条約交渉が95年のジュネーブ軍縮会議での合意にも拘わらず未だ開始されず、又、その見込みも立っていないこと、更には、いくつかの国によるミサイルの発射等、不拡散分野での明らかな後退が見られました。日本政府が提唱し、世界的に著名な専門家の参加を得た東京フォーラムの報告書は、現在の核不拡散体制は「四面楚歌」の状況にあるとまで評しました。
 かかる厳しい状況下で開かれる今次会議の重要性は、極めて大きいと言わざるを得ません。冷戦終結により、人類にとり明るい未来を築くべきであった20世紀最後の10年間がこのような不安定な状況のまま終わり、21世紀にバトンタッチせざるを得ないのか、あるいは、締約国の協調と努力により将来に曙光を抱かせる結果となるのか、まさに我々の知恵と意志が試されているとも言えるでしょう。今次会議は、NPTの無期限延長後開かれる初の運用検討会議であり、今後NPTが、その普遍性のみならず、真にその規範力への信頼性を維持・強化していけるか否かを占う上での試金石となるものと考えます。我が国は、かかる観点から、今次会議においては、まずは95年の「原則と目標」の早期実現の必要性を再確認することを強く主張したいと思います。
 しかし、遺憾ながら、これらの目標が既に十分に達成された、あるいは達成されつつあるとは言い難い現状にあることも事実として認めざるを得ません。そこで我が国としては、過去五年間に現出した新たな状況をも踏まえ、今後、我々締約国として95年の「原則と目標」の早期完全実施を含め、NPTの完全実施を図る上からも重要と考えられるいくつかの点につき、今次会議で具体的な提案を行うこととしております。
 また、NPT体制が維持・強化されていくためには、やはり95年に決定された条約運用検討プロセスの強化を図っていくことも重要であります。今次会議においては、過去三回行われた準備委員会が十分な成果を挙げ得なかった経験も踏まえ、今後の準備委員会の作業をより効果的なものとする方策が検討されるべきであります。我が国としては、この点に関しても具体的な提案を行う予定であります。

 議長、
 我が国の核軍縮・不拡散政策の原点は、唯一の被爆国としての広島・長崎の体験にあります。NPTに対する我が国のコミットメントは、核軍縮・不拡散を求める国民の一致した強い支持に裏付けられたものであります。同時に、NPTは我が国の安全保障政策における重要な基礎の一つをなすものであります。我が国が94年に国連総会に提案した究極的核廃絶決議は、その後、毎年の国連総会において、核兵器国を含む圧倒的多数の国の賛同を得ており、核兵器が究極的には廃絶されるべきものであることが、人類共通の目標として広く受け入れられていることは誠に重要であります。
 まさに、今次会議の最大の意義は、全ての締約国がNPTへのコミットメントを新たにし、同時に、核廃絶へ向け一歩一歩着実に前進する意志をあらためて確認することにあると考えます。

3.(NPTの三つの柱)

(イ.核不拡散)

 議長、
 98年5月のインド、パキスタン両国による核実験は、核の拡散が新しい危険な段階に達したとの現実に世界を引き戻しました。これらの核実験は、南アジア地域の安全保障を巡る情勢の質的変化をもたらしたのみならず、過去30年間、国際安全保障の礎となってきたNPT体制に対する極めて深刻な挑戦として、容認し難いものであります。両国による核実験により、国際社会は、NPTを中核とした核不拡散体制を、より実効性あるものとするための国際社会の更なる努力の必要性を痛感致しました。まず、我々国際社会としては、NPT未加盟の国々に早期加盟を求めることが必要です。また、NPTに参加している国が、NPTを完全に遵守することを確保していくことが重要であります。そのためには、全てのNPT加盟国がIAEAの包括的保障措置を完全に受け入れることが必要であり、さらに右保障措置を強化するための追加議定書の普遍性が高められることが重要であります。我が国は、率先してこれを締結しており、他の国に対しても早期締結を求めます。

(ロ.核軍縮)

 議長、
 NPT第六条に規定されている核兵器国による核軍縮努力は、NPTが無期限延長された今、従来以上にその重要性を増したと言えるでしょう。将来に亘り核兵器保有の可能性を放棄した非核兵器国が、核兵器国に対し、従来以上の核軍縮努力を求めるのは極めて当然なことでありましょう。ミサイルの拡散を含め、安全保障環境が変化する中で、戦略的安定を維持しつつ核軍縮を行うことは必ずしも容易でないことは理解いたしますが、我が国としては、核兵器国に対し、その特別の責任に鑑み、以下の措置を誠実に取ることを求めたいと思います。
 第一に、我が国は、ロシアによるSTART IIの批准を大変勇気づけられる前進として歓迎するとともに、今後、米露両国に対し、START IIの完全実施と併せて、START III交渉を早期に開始し、更に、それ以降の戦略兵器削減交渉による大幅な核兵器削減に向かって努力を倍加することを訴えます。第二に、我が国は、英仏両国によるこれまでの一方的削減措置を高く評価します。そして、これら核兵器国による核軍縮措置が不可逆的なものであることが重要と考えます。第三に、米露の核軍縮プロセスが継続している間、その他の核兵器国に対し、更なる核兵器削減を行うこと、あるいは、少なくとも核戦力を増強しないよう最大限の自制を求めたいと思います。そして、五核兵器国による核軍縮交渉が早期に現実のものとなることを強く期待致します。

 議長、
 NPT体制を補完する重要な柱であるCTBT並びにカットオフ条約について申し述べたいと思います。
 CTBTについては、我が国は、昨年10月にウィーンで開かれた同条約発効促進会議で議長を務めるとともに、その後、国際社会の先頭に立って、未署名・未批准の国々に対し我が国政府関係者を逐次派遣するなどにより、その早期署名・批准を働きかけて参りました。私自身もかかる働きかけの一環として、昨年10月には米国、インド、パキスタンを、また、本年2月には中国を訪問し、これら諸国による早期批准を訴えました。このような国際社会の努力もあり、本年に入り、リトアニア、トルコ、バングラデシュ、マケドニア、チリの各国が批准し、更に、先週ロシア議会が批准法案を可決したことを高く評価したいと思います。CTBTはすでに署名開放から3年半がすぎましたが、米、中の二核兵器国をはじめ、重要な国々が未署名乃至未批准であり、これら諸国の早期批准を強く望むとともに、その間の核実験モラトリアムの維持を求めたいと思います。
 カットオフ条約は、CTBTと並び、将来NPT体制のもう一つの重要な柱となるものです。95年のジュネーブ軍縮会議において、条約交渉開始が合意されていたにも拘わらず、その後、未だにその目途が立っていないことは誠に遺憾であります。ジュネーブ軍縮会議での早期交渉開始のための関係国の最大限の譲歩と協調の精神が切に望まれます。また、右条約成立までの間、全ての核兵器国及びIAEA包括的保障措置を受け入れていない国による兵器用核分裂性物質生産モラトリアムの実施が強く望まれます。

(ハ.原子力の平和利用)

 議長、
 我が国は、安定的エネルギー供給源として、また、環境への負荷が少ないとの点も重視し、原子力の開発・利用を推進しておりますが、我が国としての核燃料リサイクル政策、特に、その中でのプルトニウムの位置づけ等については、最大限の透明性を維持していきたいと考えております。原子力の平和利用の分野においては、NPTに基づき、締約国間の国際協力が一層拡充されるべきであります。我が国は、そのための国際協力については、従来より、積極的に対応しており、特にIAEAを通じた技術協力基金や、アジア太平洋地域協力協定を通じ、資金的、技術的貢献を行っております。
 他方、今後、このような国際協力が質的、量的に拡充されていくためには、核拡散の一切の懸念が払拭されることが重要であり、そのための枠組みが従来以上に整備される必要があります。即ち、IAEAの追加議定書が、原子力平和利用を進めんとする各国により汎く受け入れられることが極めて重要です。遺憾ながら、現時点でのこの追加議定書の締約国は、我が国を含めわずか8カ国にとどまっています。現行保障措置と、追加議定書に基づく強化された保障措置とが適切に統合された形で運用されるようにすることがまず必要でありますが、そのための作業を急ぐとともに、追加議定書の締結促進のための具体的な国際的行動計画策定の検討を提言したいと思います。

4.(結語)

 議長、
 人類の歴史に前例を見ない惨禍をもたらした二度の世界大戦を経験した20世紀は、間もなく終わりを告げようとしています。しかし、残念ながら、20世紀に生まれた核兵器との決別という人類にとっての大きな課題は、21世紀に受け継がれざるを得ません。
 世界で唯一、核兵器の惨禍を経験した我が国は、核兵器は二度と使われてはならないとの強い決意の下、核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず、という非核三原則を堅持しております。
 我が国としては、新しい世紀を迎えるにあたり、核のない世界の実現を目指し、今後とも、世界の平和と繁栄のために取り組みたく、軍縮、就中、核軍縮・不拡散のためのねばり強い努力を重ねていく所存であります。
 しかし、かかる我が国の努力は、国際社会の幅広い努力と相まって、初めて実を結ぶものであることは言うまでもなく、その意味からも、NPT体制の堅持・強化による国際安全保障の確保、並びに核兵器の究極的廃絶という、我々共通の旗の下への国際社会全体の参集を強く呼びかける次第であります。
 ありがとうございました。



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