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軍縮・不拡散


2005年NPT運用検討会議第2回準備委員会における猪口軍縮代表部大使による一般演説(仮訳)


平成15年4月29日


議長、

尊敬する代表団の皆様、

まずはじめに、モルナール大使が2005年NPT運用検討会議第2回準備委員会の議長に選出されたことについて、心からの祝意を表明したい。閣下のリーダーシップの下、この会議が実りの多いものであることを確信しており、また日本代表団は会議中あらゆる協力を惜しまないことを保証する。

また、ジャヤンタ・ダナパラ 軍縮問題担当・国連事務次長と国連軍縮局のスタッフに対して、この会議のための念入りな準備に心からの謝意を表明したい。

(1.NPTの役割と多国間軍縮・不拡散体制の重要性)

議長、

NPTは核不拡散と核軍縮の2つの側面に係わる条約であり、相互に補完しあっている2つの側面は密接に関連しており、両者は同時に促進されねばならない。核不拡散の側面に関しては、NPTは、ほぼ全世界的な普遍性の達成、1995年の無期限延長の決定、及び追加議定書を含むIAEAの強化された保障措置システムの導入により大いに強化され、国際安全保障の強化に大きく貢献している。さらに一昨年の9月11日の米国同時多発テロ事件は、核テロ防止におけるNPTの役割を一層際立たせることとなった。

核軍縮の側面に関しては、NPTは核兵器国に対して核軍縮を行うことを義務づけている。核兵器の全面的廃絶はNPT条約第6条の完全な履行により達成される。1995年の「原則と目標」に関する決定及び2000年の最終文書はこの目的を再確認している。

すべての締約国はNPTが世界規模の核不拡散及び核軍縮を達成するための主たる手段であることを完全に確信し続けなければならない。核兵器国及び非核兵器国の両者とも条約上の義務と約束を完全に遵守し続けなければならない。

核兵器を含む大量破壊兵器が現在も存在し、地域紛争や局地化された戦争が大量の虐殺と受難を世界の各地で引き起こし続けていることは遺憾である。大量破壊兵器及びその運搬手段の拡散はこうした地域紛争の危険性を増し、テロの脅威を高める。

従って、大量破壊兵器の拡散の防止・抑止は緊急課題である。この目的は、各国独自、二国間、地域、また多国間アプロ-チを含む、重層的かつ相互補完的な努力によって追求されるべきである。特に多国間軍縮・不拡散体制は国際安全保障環境を改善するために主要な役割を果たし続けなければならないし、またNPTはこれらの体制の主たる柱として一層強化されなければならない。

議長、

この機会に日本の非核政策に関する立場を繰り返したい。唯一の被爆国である日本は核兵器を保有する意図はなく、いわゆる「非核三原則(核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず)」を堅持している。小泉内閣を含む、歴代の内閣はこの三原則を明確に支持してきたし、日本はこの立場をとり続けていく。

(2.NPT第2回準備委員会)

議長、

ご記憶の通り、NPT第1回準備委員会は、国際政治及び戦略環境がかなり劇的に変化しつつある中で開催された、その主要な課題は新たなNPT運用検討のサイクルを円滑に開始することであった。同委員会においては、議長サマリーが作成され、2005年NPT運用検討会議に向けて第一歩を踏み出すことができた。

今回の第2回準備委員会は、国際安全保障環境が引き続き悪化している中にあって、NPTに対する大きな挑戦の時代の中で開催されている。従って、同委員会では、NPT体制の維持と強化を目的として、核不拡散、核軍縮、そして特に核物質の管理との関係で原子力エネルギーの平和利用を最も効果的でバランスのとれた方法で扱わなければならない。

この準備委員会は第1回委員会と同様に、「条約の実施に関する実質事項」、1995年に採択された3つ決定の内容及び、「条約の運用と目的に影響を及ぼす進展を含む、今後の運用検討会議の成果」の実施について審議することとしている。つまり、今次委員会は、2005年運用検討会議への提言を含めた、全会一致に基づく報告書の作成が課せられている第3回委員会とは異なり、合意に基づく提言のための交渉が課せられていない、2回ある会合のうち第2回目である。このため、今後数年間において、NPT締約国が自由に、広範でかつ相互作用的な議論ができる最後の機会である。

今次委員会において、前回委員会での議論や各国の報告、1995年の「原則及び目標」及び2000年最終文書に基づいた、自由かつ建設的な意見交換がなされ、そのような意見交換が2005年運用検討会議に近づくにつれ、条約の実施を促進することになるよう希望する。

(3.普遍性)

議長、

日本はキューバ共和国のNPTへの加入を歓迎する。キューバの加入はNPT体制を一層強化し、この体制は普遍性をほぼ達成した。しかし遺憾なことに、インド、イスラエル、パキスタンはNPT非締約国のままである。これらの国に対して遅滞なく非核兵器国として条約に加入することを引き続き求めるべきである。これに関連して、NPTへの早期加盟に関する日本の要請に対して、東チモールの外務・協力上級大臣は、先週、加入準備を進め、早期にNPTに加入したいとの回答があったことを、私は大いなる歓迎の意をもって紹介したい。

(4.不遵守)

NPT等の多国間軍縮条約は、我々が全人類に対して平和と安定を与えるために行った努力の成果である。唯一の被爆国から来た私は、我々の世代のみならず次世代のためにも、NPTの遵守に関わる問題を克服し、核不拡散体制を守り、維持し、強化するために、我々が平和的に力を合わせて努力していくことを願う。

この観点から、日本は北朝鮮によってとられた措置を深く懸念する。多国間主義は重要であり、多国間軍縮条約の信頼性が損なわれることは我々の誰にとっても利益にならないとの考えを我々皆が共有していると確信している。

現在の国際社会は安全保障面で多くの不確実性と困難に直面しており、日本は、北朝鮮に対して、具体的な行動を起こすことで、この不確実性を減らし、また、相互信頼を増すために協力するという政治的意志を示すことを強く求める。日本は、北朝鮮が核兵器を開発、移転或いは保有することを決して認められない。日本は、北朝鮮に対してNPT上のすべての義務、そしてその帰結としてIAEAとの保障措置協定上の義務を遵守し、核関連施設を再凍結し、核兵器開発計画を検証可能且つ不可逆的な形で撤廃するために速やかに行動をとることを強く要請する。

私は、先週北京で開催された三者会談のために払われた、中国による中心的な役割を含むすべての関係国による努力を歓迎する。日本は、この会談の結果を注意深く検討している。日本は、この問題が、日韓を含む関係国の早期参加を伴って、引続き多数国間で対処されるべきと考える。私は北朝鮮に対して、状況を緩和し、改善するために必要な措置をとり、また、関係国との協議に責任ある前向きな、かつ、建設的な形で臨むことを要請することについて、全ての関係国の間に強い共通の利益があると信じる。我々の政治的意志と協調努力が、21世紀における人類の安全保障環境に大きな違いを生み出し得るのだと我々の子供達に伝えることができるよう、国際社会はこの問題を平和的に解決するよう努力すべきである。

議長、

イラクにおける大量破壊兵器開発疑惑に関する事項は新たな段階に入った。日本は、イラクにおける再構築が円滑に進むこと、及び出来る限り早期に地域の安定が回復されることを希望する。我々はイラクに対し、NPTを含む軍縮体制の下での義務を遵守するよう要請する。

(5.核軍縮)

日本は唯一の被爆国であり、出来る限り早期に核兵器のない平和で安全な世界を実現することは、日本の国民及び政府の願いである。 この目的を達成するために、日本はすべての締約国、特に核兵器国に対し、核軍縮の為の建設的なロードマップを示している、2000年運用検討会議の最終文書にある「13項目」を含む具体的な核軍縮措置の実施上の進展が見られるよう誠実に努力する事を要請する。

日本は2000年以来、「核兵器の全面的廃絶への道程」と題する決議を毎年提出してきた。これらの決議は2000年運用検討会議での合意に基づいた、核兵器の全面的廃絶への具体的な道筋を示したものであり、また核軍縮・不拡散の現状を反映したものである。これらの決議は国際社会に対し核軍縮が進展することの必要性を強く訴えるものである。

「13項目」の12番目として、締約国はNPT第6条の実施に関する定期報告を提出することが要請されている。この定期報告は、具体的な核軍縮措置の実施を促進するための有効な手段である。日本は今次準備委員会において自国の定期報告を提出する予定である。全ての締約国、特に核兵器国が、 「13項目」実施のための努力及び今後とる予定の具体的な措置についての報告を提出することを期待する。

議長、

核軍縮に関して、次の具体的な事項について言及したい。

第1回準備委員会において、NPT締約国は、戦略核兵器削減に関して続いていた米露2国間交渉を歓迎した。多くの締約国はこのような米露間の努力が法的拘束力を持つ文書となることへの希望を表明した。米露戦略攻撃力削減条約(モスクワ条約)の署名は両国の核軍縮・不拡散にむけた努力を示したものである。日本は、米国が同条約を批准し、ロシアが同様の措置をとるための努力を続けていることを歓迎し、また同条約の早期発効及び着実な実施を希望する。

他の核兵器国も核軍縮へのコミットメントを進めて行かなければならない。日本は、すべての核兵器国が核兵器廃絶に向けてのプロセスに従事し、各国独自でまたは他国との交渉を通じて核兵器のさらなる削減を進めていくことを要請する。これに関して、G8カナナキス・サミットにて合意された「大量破壊兵器及び物質の拡散に対するG8グローバル・パートナーシップ」は、核軍縮・不拡散の実際的な措置を促進するという意味において歴史的な重要性を持つものである。日本は、このグローバル・パートナーシップの下、ロシア、ウクライナ、カザフスタン、ベラルーシに対して核兵器廃絶に関する種々のプロジェクトへの協力を行ってきている。

議長、

核兵器に関する多国間軍備管理・軍縮については、残念ながら非常に限られた進展しか見られない。

CTBTが核兵器の拡散防止に貢献するだけでなく、核兵器の質的向上を抑制していることを強調したい。CTBTはIAEA保障措置と同様に、NPT体制における主要な柱の一つであり、核兵器のない世界を達成するための現実的かつ具体的な手段である。CTBTが1996年に採択されて以来6年を経てもなお未発効のままであり、核軍縮の将来を不確定な状況にしていることを非常に遺憾に思う。

CTBTの早期発効は達成されなければならず、日本はこの為のあらゆる努力を行ってきている。CTBTの未署名国・未批准国に対し、署名・批准するよう促す努力を続けてきているのに加え、同様の目的で日本はオーストラリアとオランダとともに、昨年9月に「CTBTフレンズ外相会合」を開催した。さらに日本は、CTBT国内運用体制を立ち上げ、国内の監視施設の建設を開始した。現在から本年9月に予定されている次回CTBT発効促進会議までの間に、さらに多くの国がCTBTに署名・批准することを強く希望する。CTBT発効までの間、核実験のモラトリアムは全ての関係国によって遵守され続けなければならないということを全ての国が認識する必要がある。

軍縮会議(CD)はその作業計画にかかる停滞を打開しなければならない。CDにおいて、兵器用核分裂性物質生産禁止条約(カットオフ条約:FMCT)についての交渉が開始されておらず、核軍縮を取り扱うアドホック委員会が設立されていないことは非常に残念である。日本は、作業計画が早期に合意され、FMCT交渉が開始されることを非常に重要視している。この関連で、日本はオーストラリアとUNIDIRと共同で、本年3月にFMCT交渉の開始にモメンタムを与えるためにワークショップを開催した。CDの加盟国が、CDのマンデートに関する相違を乗り越えて、この多国間軍縮体制を通じて、国際安全保障を強化するという共通の目的のために、実質的な作業を再開する時期はすでにきている。

議長、

核軍縮・不拡散を促進するために、非戦略核兵器の更なる削減も重要である。非戦略核兵器を保有している全ての国に対して、2000年運用検討会議の最終文書に基づいて、透明性のある方法でこれらの核兵器を更に削減することを要請する。更に、1991年及び1992年の非戦略核兵器削減についての大統領イニシアチブの実施に関する情報の提供を希望する。

議長、

核兵器の使用に対する敷居は可能な限り高く維持されなければならないことを、強調したい。国際社会は、核兵器の使用が悲惨で長期に渡る結果をもたらすものであることをよく知るとともに常に意識していかなければならないと確信している。

(6.核不拡散)

日本は、核不拡散体制の信頼性と有効性を維持すること、特に、IAEA保障措置の完全な実施を確保し、未申告の核関連活動を探知する能力を強化することを非常に重視している。

追加議定書の普遍化もIAEA保障措置の強化を図るために重要である。日本は昨年12月東京に於いて、「IAEA保障措置強化のための国際会議」を開催した。

日本は、高度な原子力関連技術を有する国ほど、透明性の確保を含め原子力の平和利用についてより大きな責任を持たなければならないと、確信する。日本はこれらの技術を持つ国、特に発達した核燃料サイクル技術を保有する諸国に対して、追加議定書の即時締結によってその責任を果たすよう要請する。

(7.核テロ)

議長、

2001年9月11日以来起きた、一連のテロ関連の事件を通じて、国際社会はテロリストによる核物質及び核兵器の入手が現実のかつ差し迫った脅威であることを再認識した。核テロを防止するために、国際社会は国家、地域及び国際レベルで協力しなければならない。

日本は、全ての国に対して、大量破壊兵器及びその運搬手段がテロリストの手に渡らないように、最大限の対策をとることを要請する。更に日本は、各国が核テロ防止のために、放射線源の安全な管理を確保する国内的・国際的に必要な全ての措置をとることを訴える。

(8.非核兵器地帯)

日本は、関係地域の国の提唱により、また当該地域の安定と安全保障に貢献するという条件を満たすような非核兵器地帯の設立を強く支持する。中央アジア諸国が、同地域の安全保障及び核テロ防止に貢献する中央アジア非核兵器地帯の設立のために協議を重ねていることは歓迎すべきことである。5核兵器国と中央アジア5ヶ国との協議会合の結果が、関係国にとって満足のいくものであり、核軍縮・不拡散の分野での新たな成果となることを希望する。日本は国連を通じて、同非核地帯設立のための努力を支援してきている。

(9.原子力の平和利用)

議長、

安定した原子力の平和利用は、安定したエネルギー供給の確保のみならず、地球環境を保護するためにも極めて重要である。日本はNPTの締約国として、原子力の平和利用の権利を享受し、促進してきた。日本はまたNPT第4条に基づいて、原子力の平和利用の分野での国際協力推進のために貢献している。

(10.市民社会及び次世代との対話の強化:軍縮・不拡散教育)

議長、

軍縮・不拡散を進めるために、若い世代と全体としての市民社会の理解と支持を得ることが必要である。この観点から、バランスがとれた軍縮・不拡散教育は重要である。日本は、昨年7月に政府間専門家グループによって提出された「軍縮・不拡散教育についての国連の研究」報告書を歓迎する。この報告書は、軍縮・不拡散教育及びトレーニングの促進についての具体的な提言を含んでいる。日本は、海外の軍縮教育者の招聘等の措置をとり始めており、上記提言の実施のために多大な貢献をしている。

(11.地域軍縮会議)

地域軍縮会議は、地域レベルで軍縮の重要性についての認識を高めるもう1つの有効な手段である。日本は毎年、国内の異なる地方都市における国連軍縮会議を後援しており、世界中から集まる著名な軍縮専門家が有益な議論をする、貴重な機会を提供している。今年の国連軍縮会議が大阪で開催されることを喜んでお伝えする。私は、国連アジア太平洋平和軍縮センターが従事してきた、軍縮における弛まざる貢献に対して、この機会に心からの謝意を表明したい。

議長、

NPTは1970年の発効以来、国際平和と安全保障の維持・強化に多大な貢献をしてきた。NPTは核不拡散体制における礎石であり、また核軍縮を促進するための基礎である。その役割は絶対に不可欠のものである。

日本政府代表団は、NPTの重要性を高め核不拡散・軍縮に対する我々のコミットメントを新たにするために、全ての参加者と緊密に努力を続けていきたいと考える。


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