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平成18年5月1日
戦略兵器削減条約(START: Strategic Arms Reduction Treaty)交渉は、冷戦期に増大していった米露両国の戦略核戦力を、はじめて削減したプロセスであった。(中距離核については、87年12月に米ソ間で地上配備の中距離核を全廃するINF条約に署名し、88年6月の発効以降、実施している。)これによって両国の戦略核戦力は大幅に減少することとなり、核軍縮の観点からも好ましい動きであったといえる。START(I)プロセスの結果、米露の戦略核弾頭数は冷戦期の約60%となり、STARTは核軍縮の1つの重要な基礎を構成してきたということができる。 1.第1次戦略兵器削減条約(START I) 91年7月に米国及びソ連により署名されたSTART Iは、戦略核の三本柱、すなわち、両国が配備する大陸間弾道ミサイル(ICBM)、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)及び重爆撃機の運搬手段の総数を、条約の発効から7年後にそれぞれ1600基(機)へ削減することを規定した。また同条約は、ロシアの保有している重ICBM(破壊力、すなわち発射重量又は投射重量が大きいICBMを指し、多弾頭化されたSS-18がこれに該当する)の上限を154基と規定した。さらに、配備される戦略核弾頭数の総数は6000発に制限され、このうちICBM及びSLBMに装着される戦略核弾頭の総数は4900発を越えてはならない等が規定された。 ソ連の崩壊により、戦略核兵器が配備されていたベラルーシ、カザフスタン、ウクライナ、ロシアと米国の5カ国は、START Iの当事国となること、並びにベラルーシ、カザフスタン及びウクライナは非核兵器国として核兵器不拡散条約(NPT)に加入することが定められた(リスボン議定書)。また、ロシアを除く旧ソ連3カ国は領域内のすべての核兵器を撤去し、ロシアに移管することとし、96年11月にベラルーシからロシアへの核弾頭の移送が完了したことをもって、すべての核弾頭がロシアに移管された(カザフスタンは95年5月、ウクライナは96年6月に完了)。 なお、2001年12月、米露両国は、START Iに基づく義務の履行を完了したことを宣言した。この結果、2001年12月現在のSTART Iに基づく米露の核弾頭保有数は、米国:5949発、ロシア:5518発(米国政府FACTSHEETによる)となっている。 2.第2次戦略兵器削減条約(START II) START Iの発効を待たずして、92年6月には米国とロシアの間でSTART IIの基本的枠組が合意され、93年1月には、米国及びロシアが配備する戦略核弾頭数を2003年1月1日までに3000~3500発以下に削減すること、そのうちSLBMに装着される核弾頭数を1700~1750発以下にすること、さらにICBMを単弾頭にする、すなわち、多弾頭ICBM及び重ICBM(SS-18)を全廃すること等を規定するSTART IIが署名された。ただし、97年9月に署名されたSTART II議定書により、削減期限が2007年まで延長された。 2000年4月にロシア議会はSTART II批准法案を可決したが、これには米国がABM条約からの脱退などを行った場合は、START IIから脱退する権利を留保する旨の規定が含まれていた。米国は96年1月にSTART II条約を批准したもののSTART II条約を修正した同議定書については批准せず、START IIは発効していない。 その後、2002年6月14日、ロシア外務省は米国のABM条約からの脱退を受けて、米国がSTART II条約議定書の批准を拒否し、ABM条約から脱退したことを指摘し、「ロシア政府は、米国の行動、及びSTART II条約が効力を発する如何なる必要条件も存在しなくなったことに留意し、条約の目的達成に質さない行動を抑制する如何なる国際法上の義務ももはや負わないと考える」旨を表明した。 3.第3次戦略兵器削減条約(START III) 97年3月、ヘルシンキ米露首脳会談の結果発表された「将来の核戦力削減のパラメーター」に関する共同声明において、米露両国は、START IIが発効し次第START III交渉を開始すること、及びSTART IIIの基本的要素として、2007年12月31日までに双方の戦略核弾頭数を2000 ~2500発にすること、その他戦術核兵器、潜水艦発射巡航ミサイル(SLCM)などについて交渉することに合意した。しかしながら、START IIが発効しなかったため、START IIIの交渉は進展しなかった。 その後、米露間における戦略核兵器の削減に関する交渉は、新たな米露間の戦略核兵器の削減に関する条約(モスクワ条約)へと繋がっていくこととなる。 |
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