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人権・人道

人種差別撤廃委員会の日本政府報告審査に関する
最終見解に対する日本政府の意見の提出

  1. パラ7の人口の民族的構成比について、韓国・朝鮮マイノリティ、部落民及び沖縄のコミュニティを含む本条約の適用範囲の全てのマイノリティの経済的及び社会的指標に関する情報を提供すべし、との勧告に関し、

    (1) まず、アイヌの経済的社会的指標については、第1回・第2回報告と同様に次回も報告する。また、在日韓国・朝鮮人の経済的社会的指標についてどのような情報の提供が可能か、検討したい。

    (2) 他方、本条約の適用範囲については、次の通り考えている。
    (イ) そもそも本条約の適用対象となる「人種差別」とは、本条約第1条1において、「人種、皮膚の色、世系又は民族的若しくは種族的出身に基づくあらゆる区別・・・」と規定している。このことから、本条約は、社会通念上、生物学的諸特徴を共有するとされている人々の集団、及び社会通念上、文化的諸特徴を共有するとされている人々の集団並びにこれらの集団に属する個人につき、これらの諸特徴を有していることに基づく差別を対象とするものであると解される。沖縄県に居住する人あるいは沖縄県の出身者は日本民族であり、一般に、他県出身者と同様、社会通念上、生物学的又は文化的諸特徴を共有している人々の集団であると考えられておらず、したがって、本条約の対象とはならないものと考えている。
    (ロ) 更に、本条約第1条1に規定する"descent"については、本条約の審議経緯において、"national origin(民族的出身)"という語が「国籍」という法的地位に基づく概念も含み得るかのような誤解を招くとの問題があり、その問題を解決するため、"national origin"に代わる語として"place of origin"とともに提案されたものである。しかし、その後、文言の整理が十分になされず、そのまま本規定中に残ったものであると承知している。
     このような審議経緯を踏まえれば、本条約の適用上、"descent"とは、過去の世代における人種若しくは皮膚の色又は過去の世代における民族的若しくは種族的出身に着目した概念を表すものであり、社会的出身に着目した概念を表すものとは解されない。
     他方、同和問題については、日本政府としては、同和対策審議会答申(1965年8月11日)の通り、「同和地区の住民は異人種でも異民族でもなく、疑いもなく日本民族、日本国民である」と考えている。

    (3) なお、我が国の国勢調査は、国内に居住するすべての人に申告義務を課して行う統計調査であることから、調査事項は、記入者負担等を考慮しつつ、国の基本的政策遂行上、必要最小限に限定して実施している。

  2. パラ7の「沖縄の住民は、特定の民族的集団として認識されることを求めており、また、現在の島の状況が沖縄の住民に対する差別的行為につながっていると主張している。」について、

    (1) 沖縄の住民が日本民族とは別の民族であると主張する人々がいることは承知しているが、それが沖縄の人々の多数意志を代表したものであるとは承知していない。また、上記1.(2)(イ)のとおり、沖縄県に居住する人あるいは沖縄県の出身者は日本民族であり、社会通念上、日本民族と異なる生物学的または文化的諸特徴を共有している人々であるとは考えられていない。

    (2) なお、委員会が指摘する「現在の島の状況が沖縄の住民に対する差別的行為につながっている」ということが具体的に何を意味しているのか必ずしも明確ではないが、沖縄の米軍施設・区域については、在日米軍施設・区域の75%が集中することによる沖縄県民への負担の負担の軽減のため、日本政府は米国政府とも協力しつつ、米軍施設・区域の整理・統合・縮小を図ったSACO(沖縄に関する特別行動委員会)最終報告の着実な実施に全力で取り組んでいるところである。

    (3) また、米兵による事件・事故の防止については、日本政府としては、これまでも閣僚レベルを含め、累次の機会に米側に綱紀粛正と再発防止を申し入れてきており、今後とも事件・事故の未然防止に努めるよう米側に働きかけていく所存である。これに関連して、2000年秋より、米軍、国、地方自治体、地元警察、商工会議所等関係者により構成されるワーキング・チームにおいて、特に飲酒に絡む事件・事故の再発防止のためにとりうる具体策につき検討・決定するという協力体制が実施されている。

  3. パラ8について

    (1) パラ8の本条約第1条の1にいう"descent"の意味については、日本政府としては上記1.(2)(ロ)のように理解しており、したがって委員会の"descent"の解釈を共有するものではない。

    (2) いずれにせよ、本条約の前文に謳われた精神を踏まえれば、同和問題のような差別も含めいかなる差別も行われることがあってはならないことは当然のことと考えており、同和関係者については、日本国憲法の規定により、日本国民として法の下に平等であることが保障されているとともに、日本国民としてしての権利をすべて等しく保障されていることから、市民的、政治的、経済的及び文化的権利における法制度上の差別は一切存在しない。

    (3) また、政府としては、同和地区の経済的低位性や生活環境等の改善を通じて同和問題の解決を図ることを目的として、同和対策事業特別措置法、地域改善対策特別措置法、地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律の3つの特別措置法を制定し、30年余にわたって各種の諸施策を積極的に推進してきた。
     これまでの国、地方公共団体の長年にわたる同和問題の解決に向けた取り組みにより、同和地区の生活環境の改善をはじめとする物的な基盤整備が概ね完了するなど、様々な面で存在していた格差は大きく改善され、また、差別意識の解消に向けた教育・啓発も様々な工夫の下に推進され、国民の間の差別意識も確実に解消されてきているものと考える。

  4. 「最終見解」パラ9について

    (1) 裁判所における個別具体的事件に関する条約の規定の適用の在り方については、政府としてコメントすべき立場にはないが、一般論として考えた場合に、(a)裁判所が判決においていかなる法規を適用するかについては、当事者が主張した事実や提出した証拠に基づいて裁判所が認定する事実を前提とするという制約があること、(b)条約の規定の趣旨がすでに国内法の規定に反映されていることなどから、条約の規定そのものを適用しなくても判決の結論に影響しない場合も少なくないこと、などの点にかんがみれば、裁判例の中に本条約の規定に言及している事案が少ないからといって、直ちに裁判所が本条約の適用に消極的であるとの結論にはならないと考えられる。

    (2) 国内法における本条約及びその規定の地位については、我が国の憲法第98条第2項は、「日本国が締結した条約及び確立した国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする」と規定しており、我が国が締結し、公布された条約等は国内法としての効力を持つ。我が国の憲法には、我が国が締結した条約と法律との関係についての明文の規定はないが、一般的に条約が法律に優位するものと考えられている。
     ただし、本条約の実体規定(第2条~第7条)が、「締約国は、....約束する。」等と規定していることからも明らかなとおり、そもそも直接個人の権利義務を創設するものではなく、締約国に対して人種差別の撤廃の義務を課しているものと考えられる。我が国は、第1回・第2回政府報告で報告したとおり、本条約が締約国に課している義務を誠実に履行している。

  5. 「最終見解」パラ10について

    (1) 第4条及び第5条に関して、まず、第4条の(a)及び(b)については、処罰立法することを義務づけているが、以下6.で述べるように、わが国は憲法と抵触しない限度において第4条の義務を履行する旨留保を付している。第4条(c)については、締約国がとるべき具体的な措置について何ら規定されていないことから、各締約国の合理的な裁量に委ねられているものと解される。また、第5条においてはその柱書に「条約第2条に定める基本的義務に従い...」とあり、第2条の定める義務の範囲を超えるものではないと解されるが、一方、第2条1では、すべての適当な方法によりと規定されていることから明らかなように、立法措置は、状況により必要とされ、かつ立法することが適当と締約国が判断した場合に講じることが求められていると解される。我が国の現状が、既存の法制度では差別行為を効果的に抑制することができず、かつ、立法以外の措置によってもそれを行うことができないほど明白な人種差別行為が行われている状況にあるとは認識しておらず、人種差別禁止法等の立法措置が必要であるとは考えていない。

    (2) なお、人種差別思想の流布や表現に関しては、それが特定の個人や団体の名誉や信用を害する内容を有すれば、刑法の名誉毀損罪、侮辱罪又は信用毀損・業務妨害罪で処罰可能であるほか、特定の個人に対する脅迫的内容を有すれば、刑法の脅迫罪等により処罰可能である。また、人種差別的思想を動機、背景とする暴力行為については、刑法の傷害罪、暴行罪等により、処罰可能となっている。

    (3) また、私人による差別について、不法行為が成立する場合には、そのような行為を行った者に損害賠償責任が発生するほか(民法709条等)、公序良俗違反の法律行為である場合には、民法90条により無効とされる。

    (4) 法務省に設置された人権擁護推進審議会においては、1999年9月から「人権が侵害された場合における被害者の救済に関する施策の充実に関する基本的事項」について本格的な調査審議が行われ、2001年5月に人権救済制度の在り方についての答申がなされた。
     答申では、政府からの独立性を有する人権委員会(仮称)を中心とする新たな人権救済制度を創設、整備し、同委員会は、一定の人権侵害に関して、より実効性の高い調査手続と救済手法を整備した積極的救済を図るべきであるとしており、その積極的救済を図るべき人権侵害について、人種差別撤廃条約の趣旨も踏まえ、人種・皮膚の色・民族的又は種族的出身等を理由とする社会生活における差別的取扱いや人種等にかかわる嫌がらせを含む形で、その範囲を明確にする必要があると提言している。
     政府としては、同審議会の答申を最大限尊重し、提言された新たな人権救済制度の確立に向けて、全力を尽くしていく考えである。

  6. パラ11の第4条(a)及び(b)の留保に対する委員会の懸念表明について

     人種差別撤廃委員会の一般的勧告7及同15については我が方も十分承知しているところであるが、第4条の定める概念は、様々な場面における様々な態様の行為を含む非常に広いものが含まれる可能性があり、それらのすべてにつき現行法制を越える刑罰法規をもって規制することは、その制約の必要性、合理性が厳しく要求される表現の自由や、処罰範囲の具体性、明確性が要請される罪刑法定主義といった憲法の規定する保障と抵触する恐れがあると考えたことから、我が国としては、第4条(a)及び(b)について留保を付することとしたものである。
     また、右留保を撤回し、人種差別思想の流布等に対し、正当な言論までも不当に萎縮させる危険を冒してまで処罰立法措置をとることを検討しなければならないほど、現在の日本が人種差別思想の流布や人種差別の扇動が行われている状況にあるとは考えていない。

  7. パラ12の、人種差別の処罰化及び人種差別的行為からの効果的な保護と救済を確保すべきとの勧告について

     上記6.のとおり、我が国は、憲法の保障する表現の自由等の重要性にかんがみ、本条約の締結に際し、右保障と抵触しない限度で第4条(a)及び(b)の義務を履行する旨の留保を行っているが、かかる範囲での処罰立法義務については、上記5.のとおり、名誉毀損等既存の刑罰法規で十分に担保されており、また民事上の手続により損害賠償請求が可能であるなど、上記留保の下、本条約上の義務の履行を確保する国内法は整っている。
     この他、法務省の人権擁護機関においては、人権尊重の普及高揚を図る立場から、人種差別の問題も含めあらゆる差別の問題について積極的に啓発活動を行い、また、人権相談所を設けて差別を受けた方からの相談に応じているほか、具体的に基本的人権の侵害の疑いのある事案を認知した場合には、人権侵犯事件として速やかに調査し、侵犯事実の有無を確かめ、その結果に基づき、事案に応じた適切な処置を講じるよう努めているところである。
     法務省に設置された人権擁護推進審議会においては、人種差別についても、人種差別撤廃条約の趣旨も踏まえて、救済施策が検討され、2001年5月に出された人権救済制度の在り方についての答申においては、政府からの独立性を有する人権委員会(仮称)を中心とする新たな人権救済制度を創設、整備し、同委員会は、人種・皮膚の色・民族的又は種族的出身等を理由とする社会生活における差別的取扱いを含む一定の人権侵害に関して、より実効性の高い調査手続と救済手法を整備した積極的救済を図るべきであると提言している。
     政府としては、同審議会の答申を最大限尊重し、人種等を理由とする差別的取扱い等による被害者についても実効的な救済を図ることができるよう、提言された新たな人権救済制度の確立に向けて、全力を尽くしていく考えである。

  8. パラ13の「委員会は、高官による差別的発言及び、特に本条約第4条(c)に違反する結果として当局がとる行政的又は法的措置の欠如や、またそのような行為が人種差別を助長し扇動する意図を有している場合にのみ処罰可能であるとする解釈に、懸念をもって留意する。」に関し、

    (1) 第4条柱書は、締約国が非難すべき対象を、ある人種の優越性等の思想若しくは理論に基づく宣伝等又は人種的憎悪及び人種差別を正当化し若しくは助長することを企てる宣伝等に限定していることからも明らかなように、同条は、人種差別の助長等の意図を有する行為を対象として締約国に一定の措置を講ずる義務を課しており、そのような意図を有していない行為は、同条の対象とはならないと考えている。

    (2) かかる解釈をとっている国は我が国のみではなく、例えば英国の1986年の公共秩序法第18条第5項には、「人種的憎悪を扇動する意志があったことが証明されなかった者は、その言葉、行動、筆記物が脅迫的、虐待的、侮辱的であるとの意識がなくかつそれに気づかなかった場合には、本条の下の犯罪として有罪にはならない。」と規定している。

    (3) また、「人種主義とメディア」に関する共同声明(意見と表現の自由に関する国連特別報告者、メディアの自由に関するOSCE(欧州安保協力機構)代表及び表現の自由に関するOAS(米州機構)特別報告者による共同声明)の中でも、差別的な発言に関する法律は、「何人も、差別、敵意ないし暴力を扇動する意図をもって行ったことが証明されなければ、差別的発言(hate speech)のために罰するべきではない。」とされている。

  9. パラ13の「公務員、法執行官、及び行政官に対し適切な訓練を施すよう要求する。」について、

     従来より国家公務員に対して各種研修においても人権に関する科目をカリキュラムに積極的に取り入れ、その中で人権諸条約及び人権尊重を謳っている我が国憲法の理念を徹底して教育している。
     警察官については、新たに採用された警察官や昇任した警察官に対して各級警察学校で行う研修において、人権の基本法である憲法又は職務倫理、社会等の授業の中で、人権の尊重や人権関係諸条約等人権の擁護に関する授業を行っている。
     また、警察業務が人権に深く関わりを持つ職務であることから、職場における研修等あらゆる機会をとらえ、人権関係諸条約及び憲法の趣旨を踏まえ、人権に配慮した職務執行が行われるよう教育を行っている。
     裁判官についても、検察官及び弁護士とともに、司法研修所において修習を受けた後、法曹資格を取得するが、修習中の講義において、国際人権規約や外国人の人権に関する諸問題が取り上げられている。また、裁判官に任官した後も、司法研修所での各種研究会において、国際人権規約等人権問題に関するカリキュラムが設けられている。
     このように我が国では、公務員や法執行官及び行政官に対し、人種差別撤廃を含む人権教育を行っており、今後とも更に右教育の充実に努めていく所存である。

  10. パラ14の「委員会は、韓国・朝鮮人、主に児童、学生を対象とした暴力行為に係る報告及びこの点に関する当局の不十分な対応に対し懸念を有するものであり、政府に対し、当該行為を防止し、これに対処するためのより毅然たる措置をとることを勧告する。」に関し、

    (1) 我が国においては、こうした暴力行為については、刑法に定める殺人罪、傷害罪、暴行罪、暴力行為等処罰に関する法律違反等により、処罰の対象とされており、人種差別的動機に基づく暴力行為については、法と証拠に基づき厳正に処分を行うよう努めている。

    (2) 警察では、過去この種の事案については、被害が予想される場所における警戒強化、登下校の時間帯における警戒強化、関係機関との連携及び学校側との協力などにより、新たな事案の未然防止を図っている。
     また、刑事訴訟法第189条第2項において、司法警察職員は、犯罪があると思料するときは捜査するものとすることが規定されており、日本国憲法第14条第1項に定める法の下の平等を遵守して、当該事件の被害者が日本人であると外国人であるとを問わず、事件解決のため、積極的に捜査を行ってきているところであり、最終見解における「不十分な対応」との指摘は当たらない。

    (3) また、法務省の人権擁護機関は、この種の事案に対し、速やかに情報を収集するとともに、在日韓国・朝鮮人児童・生徒が多数利用する通学路、利用交通機関等において、差別の防止を呼びかける街頭啓発、啓発冊子等の配布及び啓発ポスターの掲示等を行うなど、かかる事態を防止するための積極的な啓発活動を行っている。今後とも、人権侵犯の疑いのある事案については、積極的に調査を行って事案に応じた適切な措置を講じるとともに、関係者に対して人権尊重思想を啓発することとしている。

  11. パラ15について

    (1) 外国籍の児童が日本の教育を受けることを選択しなかった場合、日本の学校教育を受けた児童と、その後の教育及び訓練、雇用において何らかの差異が生じる可能性があることは否定できない。

    (2) そうした差異が、条約第5条(e)の経済的、社会的及び文化的権利の侵害につながるものであってはならないことは当然であり、我が国の制度において、右権利は、人種、皮膚の色または民族的若しくは種族的出身による差別なく保障されている。

  12. パラ16の「在日韓国・朝鮮人学生が高等教育へのアクセスについて不平等な取扱いを受けていることに懸念を有している。」について、

    (1) 我が国では、1999年9月に規程を改正し、韓国・朝鮮人学校等の外国人学校等の卒業者について、大学入学資格検定の受検による大学入学資格の取得を可能としたところである。また、1979年以降、インターナショナル・スクール等の卒業者が、スイスの非営利教育団体が実施する国際バカロレア資格を取得した場合にも、大学入学資格が認められている。

    (2) 公教育のスタンダードを満たさない外国人学校の卒業者について、上記(1)のように個々人が学力面で一定の要件を満たすことにより大学入学資格を取得できるとの取扱いは、世界各国においても同様であると理解しており、不平等な取扱いとの指摘は適当ではない。

    (3) なお、主として韓国・朝鮮人学生が在籍する学校でも、一定の公教育のスタンダードを満たせば、正規の学校として認可を受けることが可能であって、現に認可を受けている学校の卒業生には当然に大学入学資格が認められており、当該学校がこのような認可を受けるか否かは、その選択に任されている。

    (参考)
     諸外国における外国人学校の位置づけや大学入学資格の扱い等について、米、加、英、仏、独、スイス、伊、豪、印、シンガポール、タイ、韓国、中国等23カ国・地域を対象に調査を実施した(1999年7月公表)。その結果、外国人学校卒業者の高等教育機関への進学について、各大学の判断に任せている国等も一部にあるが、制度上外国人学校の卒業のみにより所在国の大学入学資格を認めている国はないに等しく、当該校の卒業に加え、国際バカロレア資格等の一定の資格あるいは所在国の全国統一試験の成績等を要件として所在国の大学入学資格を取得できる場合が多い。

  13. パラ16の「日本の公の学校においてマイノリティの言語による教育が確保されるべきと勧告する。」について、

    (1) 勧告に言う「マイノリティ言語による教育」が具体的にどのような教育を指すのか明確ではない。本条約の各締約国にはそれぞれ言語的マイノリティが存在すると思われるが、日本国政府としては、多くの国において、マイノリティ言語のみを用いた公教育が行われているとは承知していない。したがって、日本においてマイノリティ言語によってすべての公教育が行われているわけではないということをもって、日本の公教育が人種差別的であるとするのは適当ではないと思われる。

    (2) 第2に、本条約において定められた教育についての権利が人種、皮膚の色、民族的または種族的出身について区別なく保障されることを確保するという点に関しては、マイノリティ言語を使用する子どもに対して、希望する場合には公立の小・中学校に受け入れ、日本人と同一の教育を受ける機会を提供しており、その際、子どもたちが円滑に日本の教育を受けられるようにするとの観点から、日本語指導、教師による支援、更には彼らの母語(マイノリティ言語)を話せる者による支援等、マイノリティ言語を使用する子どもたちに最大限の配慮をしている。例えば、日本語の不自由な韓国・朝鮮人の児童生徒に対して韓国・朝鮮語を話せる者と教師が協力して、日本語指導も含め円滑に教育が受けられるよう支援している。

    (3) こうした取り組みにより、既に我が国では、本条約に定められた教育についての権利は確保されていると認識している。

  14. パラ17の「委員会は締約国に対し、先住民としてのアイヌの権利を更に促進するための措置を講じることを勧告する」に関し、

    (1) アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する国民に対する知識の普及及び啓発を図るための施策に関する基本方針(平成9年9月18日総理府告示第25号)に盛り込んでいるとおり、我が国としては、アイヌの人々は、少なくとも中世末期以降の歴史の中では、当時の「和人」との関係において北海道に先住していたと考えられており、独自の伝統を有し、日本語とは異なる言語系統のアイヌ語や独自の風俗習慣をはじめとする固有の文化を発展させてきた民族であると認識している。

    (2) しかしながら、「先住民」という言葉の定義については、国際的な定義がなく、上で述べたような意味においてアイヌが「先住民」であるかどうかについては、国際的な議論との関係において慎重に検討する必要があるものと考えている。

    (3) いずれにせよ、政府としては、アイヌの人々の社会的、経済的な地位の向上を図るため北海道が実施しているウタリ福祉対策を円滑に推進するため、昭和49年5月に、北海道ウタリ対策関係省庁連絡会議を設置し、関係行政機関相互間の連絡を図りつつ諸般の施策の充実に努めているところであり、また、アイヌの人々の民族としての誇りが尊重される社会の実現を図り、あわせて我が国の多様な文化の発展に寄与することを目的として制定された、アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律(平成9年5月14日法律第52号)に基づき、アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する国民に対する知識の普及及び啓発を図るための施策を推進しているなど、アイヌの人々に関する様々な施策に取り組んでいるところである。

  15. パラ17の「原住民及び種族民に関するILO第169号条約を批准すること及び(又は)これを指針として使用することを慫慂する。」に関し、

     本条約については、ILOが本来取り上げるべき労働者保護以外の事項が多く含まれており、また我が国の法制度に整合しない規定が残されているという問題もあるため、ILO総会での採択のための票決において我が国政府は棄権したところであり、直ちに批准するには問題が多いと考えている。

  16. パラ18の「当局が引き続き申請者に氏名を変更するよう求めており、又、韓国・朝鮮人は差別をおそれ、そのようにせざるを得ないことに懸念を表明する。」について、

    (1) 在日韓国・朝鮮人に対する差別が存在するとの指摘のあることは承知しているが、政府としては学校教育や各種の啓発活動を通じて、差別のない社会を作るべく努力を続けてきており、徐々にではあるが改善してきていると考えている。

    (2) 他方、当局が帰化により日本国籍を取得しようとする者に氏名を変更するよう求めている事実はなく、申請者に対しては、帰化後の氏名は自由に定めることができる旨の周知を図っているところである。

  17. パラ20の「委員会は、国家賠償法が本条約第6条に反し、相互主義に基づいてのみ救済を提供することに懸念を有する。」について、

    (1) 我が国の国家賠償法が相互主義を採用している(第6条)のは、国際社会における国家間の主権平等の原則を基礎とするものであり、この法理は、国際的にも認められた法理である。
     また被害者である外国人の本国において、日本人に対して国家賠償が全く認められない場合に、我が国においてその外国人のために国家賠償が認められることとなると、日本国民が不当な差別を受ける結果にもなることから、現行の相互主義は、むしろ内外国人の実質的平等を図っているということもできると考えられる。

    (2) したがって、国籍に基づく差別は本条約の対象とはならないことから、国家賠償法第6条の相互主義の下で、我が国の国民に国家賠償を認めない国を本国とする外国人が国家賠償法の適用を受けない場合があり得るとしても、人種差別撤廃条約との関係で問題は生じないものと解している。

  18. パラ23の「次回報告に、(i)1997年の人権擁護施策推進法及び人権擁護推進審議会の任務及び権限に関する更なる情報を提供するよう求める。」について、

    (1) 人権擁護施策推進法は、人権の擁護に資するため、人権の尊重の理念に関する国民相互の理解を深めるための教育及び啓発に関する施策並びに人権が侵害された場合における被害者の救済に関する施策を推進する国の責務を定めるとともに、法務省に、これらの施策に関する基本的事項を調査審議するための人権擁護推進審議会を設置することを定めるものである。

    (2) 同審議会は第一回会議において、法務大臣、文部科学大臣及び総務大臣から、「人権尊重に関する国民相互の理解を深めるための教育及び啓発に関する施策の総合的な推進に関する基本的事項」(諮問第1号)、法務大臣から「人権が侵害された場合における被害者の救済に関する施策の充実に関する基本的事項」(諮問第2号)について、それぞれ諮問を受けた。同審議会は、諮問第1号について、1999年7月に答申し、諮問第2号については、2001年5月に人権救済制度の在り方について答申した。同審議会では、今後、引き続き、人権擁護委員制度の在り方について調査審議を行う予定となっている。

    (3) 政府としては、同審議会の答申を最大限尊重して、提言された人権救済制度の確立に向けて全力を尽くしていく考えであり、次回の報告には講じた施策等について情報を提供する予定である。

  19. パラ23の「次回報告に、(iii)地域改善対策特定事業に係る国に財政上の特別措置に関する法律及び同法律が2002年に終了した後に、部落民に対する差別を撤廃するために考えられている戦略、の影響に関する更なる情報を提供するよう求める。」について、

     そもそも社会的出身に基づく差別は本条約の対象ではないが、更に、2002年3月末に同和地区に限定した特別対策は終了し、2002年4月以降、施策ニーズに対しては、他の地域と同様、所要の一般対策を講じることによって対応していくことになる。

  20. パラ24の「本条約第14条に規定する宣言・・・・の可能性につき検討するよう勧告する。」に関し、

    (1) 同条約第14条が定める個人通報制度については、条約の実施の効果的な担保を図るとの趣旨から注目すべき制度であると考えているが、司法権の独立を侵す恐れがないかとの点も含め、我が国司法制度との関係で問題が生じる恐れがあるとの指摘があり、これらの点について、真剣かつ慎重に検討しているところである。従って、宣言をするか否かについては、こうした点も踏まえ、慎重に判断したいと考えている。

    (2) なお、司法制度との関係での問題に関しては、我が国の裁判は三審制度を採用して慎重な審理が行われている上、裁判確定後においても再審制度が設けられており、通常の裁判手続きにおける不服申立制度の他、非常救済手続きも完備され十分に機能しているところ、このような国内救済手続きの体系を混乱させる恐れもないわけではないと考えられる。

  21. パラ25の「本条約第8条6の改正を批准するよう勧告する。」に関し、

     我が国は、条約上の義務は締約国のみを拘束するのが原則であり、従って条約の費用は締約国が負担すべきであり、未締約国を含む国々からの分担金を主たる財源とする国連通常予算で賄うべきではないと考えており、現時点で右改正を受諾する予定はない。



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