ITTO(国際熱帯木材機関)第36回理事会
(概要と評価)
2004年8月
ITTO(国際熱帯木材機関)第36回理事会が、7月20日から23日までインターラーケン(スイス)で開催され、我が国から、外務省、林野庁、横浜市より関係者が出席した。概要及び評価は以下のとおり。
1.概要
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オープニング
ジャン・マッカルパイン理事会議長、ソブラルITTO事務局長、レディング・スイス経済省二国間経済関係局長、ビアナ・ブラジル・アクレ州知事、大滝横浜市議会議員(中田横浜市長代理)、パトサーリUNFF調整官によるスピーチが順次行われた。
ジャン・マッカルパイン理事会議長及びソブラル事務局長より、ITTOの設立(1986年)以来の日本及び横浜市の献身的な支援への謝意表明が行われた他、本年3月にメキシコが加盟したことで加盟国は59カ国となり、世界の熱帯林の80%、熱帯木材貿易の90%をカバーする機関となった旨の報告があった。
また、中田横浜市長のメッセージでは、横浜市がITTOの本部を有するホスト・シティーであることを誇りに思い、ITTOが地球規模の環境保全に対するさらなる貢献を行うよう期待が述べられた。
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主要議題についての議論
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「プロジェクト形成及び審査に係る改善措置」(議題11)
プロジェクトの形成、審査、評価、モニタリングを如何に効率的・効果的に実施するかについては、これまで複数の専門家パネルやワーキンググループにより議論が行われてきており、各々から寄せられた提言を整理・統合する必要性が指摘された。我が国からは、プロジェクトの提出国は提出前に十分な国内審査を行い、自国とITTOの目標との関連性を意識して優先順位を決定することが重要である旨を強調した。次回以降の理事会においては、これらの提言を統合し、統一的な行動計画として決議する旨が合意された。
また、本件議題に関連し、案件の発掘から終了に至るプロジェクト・サイクル全体をカバーする単一のマニュアルの作成(スイス)、Web-siteを活用したマニュアルの普及(EU)、National Clearing House(国家レベルの情報交換機関)の確立の必要性(マレーシア、ブラジル)等が提言された。
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(ロ) |
「持続可能な木材生産及び貿易との関連における森林法の施行」(議題14)
事務局より、熱帯木材製品に関する輸出入データのケース・スタディーの進捗状況について報告があった。
森林法の施行に関連する違法伐採対策協力については、我が国が2003年6月にインドネシアと共同署名を行った「アクションプラン」、米国が2003年7月に発表した「大統領イニシアティブ」の存在を踏まえ、今次理事会では、EUから「違法伐採対策に係るEU行動計画」(大綱)を欧州委員会においてすでに承認しており、各加盟国の承認手続きを経て、近い将来、概要を公表予定である旨の報告があった。
我が国よりは、1)熱帯木材製品の国際貿易に関する輸出入データの調査は違法伐採とそれに関連する貿易を規制するために極めて有益であること、2)我が国におけるケーススタディーについてはコンサルタント契約が結ばれ現在鋭意調査進行中であり、次回理事会で発表予定であること、本件遂行にあたり追加的な資金が必要な場合には拠出の用意(林野庁)がある旨を述べた。
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(ハ) |
「CSAG(市民社会諮問グループ)及びTAG(貿易諮問グループ)によるパネル・ディスカッション-森林法とガバナンス、違法伐採とそれに関連する貿易」(議題15)
冒頭、両グループの代表によるプレゼンテーションが行われ、熱帯林に関する基礎データの整備とデータの質の向上、熱帯林に関する法律・規制の見直し、合法的な伐採とそれに関連する貿易を促進するための国際的な取り組みに加え、国家規模や地域規模の取り組みの重要性について説明が行われた。我が国は、両グループの提言を踏まえ、違法伐採の取り締まり強化のための税関職員の訓練や関連するワークショップ開催経費として15万ドル(外務省10万ドル、林野庁5万ドル)の拠出を表明した。
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(ニ) |
「持続可能な森林経営のための基準・指標」(議題17)
2004年3月にフィリピンで開催されたFAOとITTOによる基準・指標に関する合同専門家会議の模様について紹介があり、1)各国による情報の共有、用語・定義の統一、手続きの簡素化の必要性、2)International Technical Advisory Group(国際的な技術諮問グループ)設置の必要性、3)各国への普及を図るため、簡素な基準・指標からの段階的な導入の必要性等について合意した旨報告された。
本件議題に関連して、ITTOは、2004年から2005年にかけてベネズエラ、メキシコ、ナイジェリア、ガボン、カンボジア等で順次ワークショップを開催予定であり、ワークショップでの対話を踏まえ、「基準・指標」に係るフォーマットの改訂につなげていきたい旨が表明された。
スイス及びガーナは、国際的な基準・指標の確立及びフォーマットの簡素化は、森林法の施行を推進し持続可能な森林経営を実現していくために不可欠である旨を指摘した。我が国は、これらの基準・指標への取り組みに対する財政的な支援(1万ドル)を表明した。
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(3) |
決議の概要等
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「プロジェクト等の承認」(決議1)
●今回の理事会では、19のプロジェクトについて、我が国は337万2,224ドル(外務省295万6,882ドル、林野庁41万5,342ドル)の拠出を決定し、これらを含むプロジェクト等の承認が決議された。なお、承認されたプロジェクトのうち、我が国は、基準・指標支援のための専門家会議等開催経費に1万ドル、森林認証に関するワークショップの開催支援に2万5,000ドル、愛知万博等の国際イベントへのITTO参加支援に20万ドルの拠出表明を行った。
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(ロ) |
「2004~2006年会計監査機関の決定」(決議2)
●2004年から3年間のITTOの会計監査機関に"Grant Thornton-ASG Audit Corporation"を指名する旨が決議された。
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(ハ) |
その他
●2004年3月、メキシコがITTOに加盟し、加盟国は59カ国(消費国26, 生産国33)及びEUとなった。
●インドネシアより、2004年10月のワシントン条約締結国会議において、熱帯木材のラミンを附属書 II(取引の一部規制)に掲載するよう提案を行う予定である旨の報告があった。
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2.評価
(1) |
全世界に500余りの国際機関が存在するなかで、ITTOは我が国が唯一本部を有する国際機関である。また、ITTOはガイドラインの策定等に係る政策活動(企画・立案)に加え、各加盟国に裨益する個別・具体的なプロジェクトを承認・実施することで、他の国際機関(FAO等)や国際的なフォーラム(UNFF等)と差別化を図ってきた歴史がある。
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(2) |
従前より極めて親日的な雰囲気のなかで理事会が開催されてきたが、今次理事会では、マレーシア、ブラジル等をはじめとする生産国、理事会議長及びITTO事務局から、各種プロジェクトに対する我が国の拠出協力について深甚なる謝意が表明される一方で、我が国の拠出額が減少した場合の深刻な懸念が表明された。
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(3) |
我が国は、莫大な財政赤字を背景に従来通りの拠出水準の維持は困難である旨を説明。ITTOの安定的な運営のためには、消費国側が責任を共有し、ITTOを共同で支えていくことが必要との認識を示し、会場の内外で、中国等未だ任意拠出を行っていない加盟消費国に拠出を促した。
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(4) |
今後のITTOのあり方として、新協定の策定(2006年12月末に現行協定が期限切れを迎える)にあたっては、分担金だけでなくプロジェクト実施のための拠出金についても何らかの資金確保のメカニズムを導入し、他のドナーの資金協力を継続的に確保する工夫が必要であり、新しい課題とともに右を意識したITTOとしての取り組みを促していくこととしたい。
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