「線路敷設権」に関する弊社要望等について
平成12年1月26日
第二電電株式会社
1 基本的考え方
(1)線路敷設権の問題は、電気通信事業を展開するために必須のものでありながら、特に非差別的な開放と利用促進という観点等では、従来は民民の私的契約上の問題として埋没していました。
(2)電気通信事業者間の競争を促進し、結果としてお客様の利便性向上と市場の発展を計る観点から、昨年度に引き続き、政府において線路敷設権の問題について広く意見聴取を行っていただいたことは、高く評価できるものであります。
(3)一方、線路敷設権に関するルールは、単に表面上の公平性が担保されるだけではなく、実態面での公平性や利用促進策が担保される必要があると考えております。
こうした観点と議論の継続性担保の観点から、弊社では、線路敷設権に関する法的整備の必要性を含む種々の意見に対する政府の考え方(案)をご公表いただき、当該(案)に対して再意見を提出できるスキームの実現を要望いたします。
(4)なお、弊社では、ルールは制定することも重要ですが、常に最適なものへと整備することがさらに重要と考えておりますので、上述のようなスキームによる検討を、毎年度継続的に実施していただくよう要望させていただきます。
*ここでは、管路等とは、管路、とう道、電柱等の全般を指しています。
2 個別事項 ~NTT管路等について(1)~
アクセスについて
現在NTT管路等について、次ページに示す(1)の区間については、法的根拠を有する接続ルールにより、ボトルネック設備として他事業者によるアクセスが可能と なっておりますが、次ページに示す(2)(3)の区間については、接続のいわゆる一般区 間となっており、法的根拠を有するルールがありません。
実際は(1)の区間まで自前で設備を設けることに非常にコストと時間がかかるのが現状であることから、後述する「3 諸外国の事例」のように法的根拠を有する形 態で他事業者によるアクセスを担保していただきたいと考えます。
料金について
現在NTT管路等について、次ページに示す(1)の区間については、法的根拠を有する接続ルールにより、(正味)帳簿価額をベースに料金が算定されておりますが 、一方、次ページに示す(2)(3)の料金については、法的根拠を有するルールがなく、再調達価格をベースに算定されております。
つきましては、次ページに示す(2)(3)の料金についても、法的根拠を有する形態で 、(正味)帳簿価額としていただきたいと考えます。
*敬称は省略させていただきます。以下同様。
2 個別事項 ~NTT管路等について(2)~
(注)図は編集の都合で省略。段組等に変更あり。
MH:マンホール
POI:相互接続点
IGS:関門交換機
ZC:中継交換機
GC:加入者交換機
区分
(1)NTTの通信用建物から、工事可能な最も近いマンホール等までの管路等
(2)接続に必要な管路等
(3)その他の管路等
現状
(1)NTT接続約款で規定
(2)(3)民民による私的契約
料金
(1)(正味)帳簿価額
(2)再調達価格
2 個別事項 ~顧客ビル引き込みの問題について~
顧客ビル引き込みの問題について
ビル引き込み管路等は、現在のところそれぞれの事業者が独自に引き込んでおりますが、こうした複数事業者による引き込みは、コスト的にも時間的にも競争の進展を阻害するものと考えます。ついてはその解決策として、いわゆる公益事業特権を有する事業者に対して、当該管路等や心線の提供を義務づける方法等で解決し、競争の促進とお客様利便の向上を図るよう要望いたします。
なお、それらの管路等や心線が足りない場合等もあり得ますが、増設や既存ケーブル(心線)の張り替え等を含め、競争が進展する方策を取ることとしていただきたいと考えます。
3 諸外国の事例 ~米国(1)~
管轄権
- 管路等の料金及び条件に関して、州が規制している場合はそれに従う。【米国通
信法第224条(c)】
- 州に規制がない場合は、FCCの規定に従う。【米国通信法 第224条(c)】
連邦法/FCCにおける規定
(1) アクセス:通信法は、公益事業者に対して管路等に関する非差別的アクセスを義
務づけている。【米国通信法 第224条(f)】
FCCは(ディスカッションの中で)以下の考え方を示している。
- 既存地域電話会社等は開放義務あり。逆に既存地域電話会社からの要求はできない。(非対称規制)
- 容量不足等の理由であっても、アクセス要求を拒否することはできない。(容量を増やさなければならない。)
- 拒否する前に、スペースを確保するための合理的な措置を取ること。
- 空きスペースを確保することは、原則的に認められていない。
- 管路の所有権を利用した子会社等への有利な取引の禁止。全事業者に対する非差別的な対応を要求。(FCC96-325 )
(2) コスト算定:料金は、上限が完全配賦費用、下限が追加費用の範囲で、歴史的原価を用いている。
【~2001年】
- 帳簿価格をベース
- 本あたり(電柱)、1m(もしくは1フィート)あたり(管路)の平均価格
- 地域電話会社で1つの式が明示されている
- 2001年から適用されるハーフダクト方式*適用の前倒しを検討中
【2001年~】
- 帳簿価格をベース
- 1本あたり(電柱)、1m(もしくは1フィート)あたり(管路)の平均価格
- 地域電話会社で1つの式が明示されている
- ハーフダクト方式*の適用
*ハーフダクト方式: 1本の管路(ダクト)に2本のケーブルを通すことを前提に、料金は総費用×1/2とする。
(3)情報開示:公益事業者は、CATV事業者及び電気通信事業者が苦情申立てをする場
合、その申立てに必要とされる料金及び条件についての情報を開示しなければならない。【Sec.1.1404(FCC98-20,C.F.R.(97年版)】
(4)裁定:FCCは苦情処理の手続きを制定し、また、裁定しなければならない。【米国
通信法 第224条(b)】
*日本語訳は全て仮訳。以下同様
3 諸外国の事例 ~米国(2)~
現在適用されているルール等
州における規定及び協定の実例等
イリノイ州
(1)アクセス: |
管路等の非差別的な提供が、公益事業者に義務づけられている。【事業者間協定/州の公益事業委員会の裁定】 |
(2)空きスペース: |
管路等の空きスペースを公益事業者が保留することを禁じている。【州の公益事業委員会の裁定】 |
(3)コスト算定: |
料金は帳簿価格により算定。【州法】
|
オレゴン州
(1)アクセス: |
管路等の非差別的な利用を認めている。【事業者間協定】 |
(2)空きスペース: |
空きスペースの保持は禁じている。【同上】
使用済みケーブルを管路又は電柱から取り除かなければならない。【同上】 |
(3)コスト算定: |
料金は帳簿価格により算定と理解。【州規則】 |
(4)情報開示: |
情報開示の義務規定あり。建造物利用可能性のため利用者側に、職員の派遣を認めている。【事業者間協定】 |
(5)容量の拡張: |
必要に応じて容量の拡張を義務づけられている。【同上】 |
オハイオ州
(1)アクセス: |
管路等の非差別的な提供が、公益事業者に義務づけられている。【州の公益事業委員会命令/ガイドライン】 |
(2)空きスペース: |
管路等の空きスペースを公益事業者が保留することを禁じている。【同上】
|
(3)コスト算定: |
料金はTELRICにより算定。ただし、FCCで規制される上限を超えない範囲 【同上】 |
マサチューセッツ州
ハーフダクト方式を採用。【事業者間協定/州の公益事業委員会の裁定】 |
ハーフダクト方式: |
1本の管路(ダクト)に2本のケーブルを通すことを前提に、料金は総費用×1/2とする。 |
3 諸外国の事例 ~EU~
EU相互接続指令 (Directive 97/33/EC)
ここでいう “Collocation and facility sharing”は管路等の共同利用が含まれる模様
Article 11 (Collocation and facility sharing)
- 事業者の設備設置権が法律によって保証されている場合、各国の規制当局は、管路等設備の共同利用を促進しなければならない。
- コロケーションもしくは管路等設備の共同利用に係る協定は、通常は、当事者間の商業的及び技術的協定とすること。また、各国の規制主管庁は、紛争の解決のため介入することができる。
- 加盟国は、適切な公の諮問期間を経てのみ、費用配分を含む管路等の共同利用に係る方法を義務づけることができる。
Article 23 (Transposition)
- 加盟国は1997年末までに本指令を施行するため、国内法に置き換えること。
【参照:http://www.ispo.cec.be/infosoc/telecompolicy/en/d1-en.htm】
EU完全自由化指令 (Directive 96/19/EC)
Article 4d
- 加盟国は、公衆電気通信網の提供のための公道使用権の付与について、公衆電気通信網の提供事業者間で差別をしてはならない。
- 新たに公道使用権を付与することが、適用される必要不可欠な要件のためにできない場合、合理的条件のもとで、既存の管路に対するアクセスを保証しなければならない。
Article 2 (Transposition)
- 加盟国は、本指令が発効してから9ヶ月以内に、本指令のArticle 1から8を遵守していることを欧州委員会に通知しなければならない。
【参照:http://europa.eu.int/comm/dg04/lawliber/en/9619.htm】
3 諸外国の事例 ~英国~
1997年電気通信(相互接続)規則
Article 10 (Collocation and facility sharing)
(1)貿易産業省大臣及び電気通信長官は、管路等設備の共同利用を促進しなければならない。
(2)電気通信長官は、事業者間の紛争の解決のため介入することができる。またその決定は事業者の要求に応じて通知すること。
(3)電気通信長官は、適切な公の諮問期間を経て、管路等の共同利用に係る費用配分を含む方法について規定することができる。
(4)公衆電気通信事業者は、上記(2)に基づく決定、及び(3)に従って規定された方法を遵守しなければならない。当該決定および条件は、免許事業者の条件として取り扱うこと。
EU相互接続指令の条文内容とほぼ同様。
BT及び公衆電気通信事業者(PTO)の免許条件
顕著な市場支配力を有する(SMP)事業者のみに適用
Condition 45(コロケーション及び設備の共同利用を含む公衆電気通信事業者との相互接続協定)
相互接続協定の締結のためにオファーを示すこと。(←EU相互接続指令を踏まえ、Condition 9にはない合理性が求められる。)
45.5 (e) |
1997年電気通信(相互接続)規則10(2)に基づく決定を遵守すること。
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45.5 (f) |
1997年電気通信(相互接続)規則10(3)に基づき電気通信長官が規定した管路等の共同利用に係る費用配分を含む方法を順守しなければならない。
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SMP事業者以外の公衆電気通信事業者に適用
Condition 9 (コロケーション及び設備の共同利用を含む接続サービスを提供する義務)
交渉ベースで相互接続協定を締結すること。
9.3 (e) |
1997年電気通信(相互接続)規則10(2)に基づく決定を遵守すること。
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9.3 (f) |
1997年電気通信(相互接続)規則10(3)に基づき電気通信長官が規定した管路等の共同利用に係る費用配分を含む方法を順守しなければならない。
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*上記免許条件は、英国政府の解説(http://www.dti.gov.uk/cii/telecom/licences/condoc2/draft2/ldcondo3.pdf)を参考に概要を作成。
Schedule 4, PART 2, Condition 10.1-(g)
公衆電気通信事業者は、新しいダクトの建設を最低限に抑えるため、その建設の前に、既存の管路の利用可能性を検討するためあらゆる合理的な措置を執らなければならない。【参照:http://www.dti.gov.uk/cii/】
管路及び電柱の共同利用に関する声明文書(OFTEL, 1997. 10)
Para. 3.20長官は限定された場合において、電気通信法により発行された免許条件に基づき、管路及び電柱の共同利用の拒否が支配的地位の濫用と見なされ得る場合、介入することができる。
(参照)「公正取引条項に関するガイドライン」(http://www.oftel.gov.uk/fairtrade/guidelin.htm)paragraph 71.「乏しい物理的資源の共有拒否」【参照:http://www.oftel.gov.uk/competition/dp1097.htm】
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