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我が国における「線路敷設権」に関する検討結果

平成10年12月25日



 関係省庁(参加省庁:内閣内政審議室、公正取引委員会、警察庁、経済企画庁、法務省、外務省、大蔵省、厚生省、通商産業省、運輸省、郵政省、建設省)は、規制緩和推進3か年計画、及び「規制緩和及び競争政策に関する日米間の強化されたイニシアティブ」(第1回)共同現状報告に基づき、我が国における「線路敷設権」(注)に関して、本年4月から12月にかけて、13回の検討会議を開催し、広く公募した関係企業及び団体並びに米国、EU等内外の意見を聴取しつつ、検討を行った。

(注)線路敷設権(rights of way):電気通信事業者やケーブルテレビ事業者が線路(電線及びその支持物(電柱等))及び空中線(アンテナ)並びにこれらの附属設備(マンホール、水底線標示柱等)を敷設、保守するために、自ら所有していない土地、水底等を使用できる権利、またはそのための線路等用地を含む場合もある。

1.「線路敷設の円滑化」の重要性

 情報通信の分野における自由化及び近年の著しい技術発展を背景として、多くの新規事業者がこれらの分野に進出し、様々な新たなサービスが提供されてきており、今後もこの傾向は続くと予測される。これに伴い、電気通信事業者及びケーブルテレビ事業者による線路敷設に対する需要も拡大していくと予想される。また、21世紀は「高度情報通信社会」となることが予想され、情報に対する安価で、多様なアクセスが円滑に確保されることは、わが国国民にとって重要と考えられる。
 電気通信事業者及びケーブルテレビ事業者が新規にサービスを提供する場合やサービス対象範囲を拡大する場合に、線路を円滑に敷設できるようにすることは、これらの事業における活発な競争を通じ料金の低廉化、多様なサービスの提供を可能にする。
 こうした観点から、電気通信事業者及びケーブルテレビ事業者による線路敷設の申請に対し、線路を敷設する土地、施設等の所有者或いは管理者がオープン、無差別で透明性のある手続で処理すること等により、線路敷設の円滑化を図ることが有益である。

2.検討結果の概要

 検討会議は、以上の基本的認識に立って、わが国における「線路敷設権」に関する現状について検討を進めてきた。

(1)「線路敷設権」の法的検討

 電気通信事業者及びケーブルテレビ事業者が線路を敷設する場合には、線路を敷設する土地、施設等の所有者或いは管理者との関係が重要な課題となる。現在、電気通信事業法及び関連法令により、第一種電気通信事業者に対しては、公有地及び私有地を利用する場合において一定の権利(いわゆる「公益事業特権」)が認められており、ケーブルテレビ事業者によるインフラ整備にも優遇措置が存在している。
 仮に、電気通信事業者及びケーブルテレビ事業者に対し、線路敷設の円滑化に向けた措置の改善を法律により行う場合には、土地、施設等の所有者或いは管理者の権利を制限することとなる。検討会議は、電気通信事業及びケーブルテレビ事業の公共性に鑑み、線路敷設の円滑化による利益を認める。しかし、意見聴取の場において提起された問題点は以下に示される現状の整理と改善措置の提案により、相当部分が解決できると考えられる。従って、現時点で、電気通信事業者及びケーブルテレビ事業者に対し、法律により線路敷設の円滑化に向けた措置を改善し、土地、施設等の所有者或いは管理者の権利を制限する必要性は大きくないと考える。

(2)「線路敷設権」に関する現状と改善策

 関係省庁・団体・事業者等からの意見聴取を行った結果、民間事業者相互の関係は契約に委ねられており、土地、施設等の所有者或いは管理者は、電気通信事業者及びケーブルテレビ事業者に対し、線路敷設の許可・承認に際して、基本的にオープンで無差別な取扱いを行っていると検討会議は理解している。しかしながら、土地、施設等の種類毎にそれぞれ別個の手続が定められていることから、新規参入事業者にとって線路敷設の際に土地、施設等を如何なる方法で利用可能か明瞭でないという指摘が為されていること、及び線路敷設の許可・承認に際し、申請者がその無差別、透明性等に関して疑念を表明している例が散見されることは考慮すべきであると考える。
 そこで、今般、初めての試みとして、電気通信事業者及びケーブルテレビ事業者が線路を敷設する場合に、現在利用可能な土地、施設等や利用のための手続等の現状につき整理を行い、透明性の向上に努めた。
 また、検討会議は、関係事業者等が、透明性の更なる向上のために線路敷設に関連する事項(例えば、取扱い窓口、線路敷設に関する手続、料金又はその算定方法、線路敷設の申請からこれに対する回答までの期間等)が明確化されていない場合には、これを個別の状況に応じて明確化し、適切な方法で公表することが有益であると考える。検討会議は、線路敷設の円滑化のため、下記4.の改善策について、関係事業者等が自主的な改善を行う用意がある、或いは、関係省庁が法令の範囲内で可能であり必要と考える場合には当該関係省庁より関係事業者等に要請を行うと承知している。更に、検討会議は、電気通信事業者及びケーブルテレビ事業者による線路敷設に関する苦情に関しても、下記5.のとおり対応することとする。
 この検討結果が、電気通信事業者及びケーブルテレビ事業者が新たに線路を敷設する際の一助となることが期待される。

(3)今後の検討

 「線路敷設権」については、これまで必ずしも広く一般に認知されておらず、今回のような分野横断的な検討は初めてであることから、今回提案された改善措置の運用状況を勘案し、これに対する広範な意見を聴取しつつ、今後更に検討していく必要がある。従って、平成11年度に、関係省庁の参加を得てレビューを行うこととする。

3.現状の整理

(1)NTT等第一種電気通信事業者

(a)許可基準・現在の利用状況
 線路敷設を求める事業者が、管路等を所有或いは管理する事業者に対して、必要とする区間の管路等の使用の可否に関する調査依頼を行い、管路等を所有或いは管理する事業者が、使用可能と判断した場合には、事業者間で条件等の協議を行い、契約を締結する。
 例えば、NTTは、原則的に、自ら使用する予定のない場合は、管路等の使用の申請に応ずることとしており、現在既に自らの管路等に他の第一種電気通信事業者のケーブルを約500km収容しているとともに、ケーブルテレビ事業者等に約230万本の電柱を提供している。NTTの管路等の使用を申請する際に必要な手続きについては、NTTの事務処理要綱に定められており、NTTより申請者に対し管路等の使用申請の際に条件等を説明している。なお、同要綱は未公表である。

(b)料金
 NTTの電柱の共架の料金は、全国均一(1600円/年・箇所)。NTTの管路等の共同収容の料金は、地域によって建設コストが異なることから個別算定。

(c)処理期間
 NTT等の事業者は、処理に要する期間の標準化が困難という理由から策定していない。

(d)その他
 NTTは、従来、道路単位で申込みを受け調査してきたが、これをエリア単位にまで拡大し、1回の調査依頼で空きのあるルートを絞りこめるよう改善している。

(2)電気事業者

(a)許可基準・現在の利用状況
 電気事業者の所有する電柱等の利用については、電気事業法第39条に基づく「電気設備に関する技術基準を定める省令」等関係法令に適合することが必要である他は、事業者間の契約の問題。
 電気事業者は、技術的に困難な場合等を除いて、電柱への共架申請をほぼ100%認めており、現在既に電柱総数2000万本のうち延べ約700万本が、NTT及び電力系以外の第一種電気通信事業者及びケーブルテレビ事業者等に共架柱として提供されている。一部の電気事業者は電柱共架に関するパンフレットを作成しているが、全国的には行われていない。
 電気事業者の管路及びとう道については利用希望が極めて少ないが、管路は電柱、家屋等の立ち上がりまで一連となっている場合が稀で、線路を敷設しようとする事業者が掘削・埋め戻し等を実施する必要があること、また、とう道は変電所引出口近辺に限られているケースが多いことが、その背景にあると考えられる。

(b)料金
 電気事業者は、共架料金及び電柱改修料金について、実費に基づいて算定している。共架料金は約1700円/年・本。

(c)処理期間
 標準処理期間については、改修の要否等が現行の設備実態に左右されるため、一律の設定は困難。

(3)道路

(a)許可基準

(占用許可)
 電気通信事業者及びケーブルテレビ事業者が道路に線路を敷設する場合には、道路管理者による占用許可が必要(道路法32条1項)。道路管理者は、第一種電気通信事業者が設置する電線等については、許可基準に適合する限り、許可を与えなければならない(同法36条2項)。道路占用許可に係る基準は、道路法33条及び同法施行令等に定められている。
 建設省は、道路管理者に対し、ケーブルテレビ事業者が放送施設を設置しようとする場合に、第一種電気通信事業者と同様に道路法等に規定する基準に適合する時は許可を与えるよう指導している。
 高速道路については自動車の高速交通の用に供されている等の特殊性から、交通の安全と円滑及び道路構造の保全には特段の配慮を要する。高速道路への電気通信事業用ケーブル等の縦断方向の敷設は、原則として、当該高速道路の他に設置の余地がない長大トンネル及び長大橋に限り許可している。

(使用許可)
 空中又は地中に線路を敷設する行為自体については、線路が「石碑、銅像、広告板、アーチその他これらに類する工作物」に当たる場合(道路交通法77条1項2号)を除き、道路使用許可は不要。しかし、線路の敷設自体が道路使用許可を要しない場合であっても、空中又は地中に線路を敷設するために路上で工事又は作業を行う行為は、道路使用許可が必要(道路交通法77条1項1号)。

(b)料金
 占用料の額は、指定区間内の国道については道路法施行令、それ以外の道路については道路管理者である地方公共団体の条例で定められており、公表されている。占用料の額は、土地の価格や国有財産の使用料率等をもとに算出し、妥当な水準となるよう必要に応じて改定している。
 道路使用については使用料を徴収していない。

(c)処理期間
 道路管理者は、行政手続法第6条等の規定に基づき、道路占用の許可申請から許可までに要する標準処理期間を定め、公表している。従前は概ね1か月間であったが、原則として2~3週間を目安とするよう、建設省は本年8月に指導を行った。
 各警察署長等は、道路使用の許可申請から許可までに要する標準処理期間について定め、公表している。また、警察庁は、都道府県警察に対して、原則として7日以内で各都道府県の実情に応じた標準期間を定めるよう警察署長等に示達するべき旨指導している。

(d)苦情処理
 道路占用及び道路使用申請に対する許可及び不許可の決定に不服がある者は、行政不服審査法による不服申立て、行政事件訴訟法による取消訴訟又は不作為の違法確認の訴えをすることができる。

(4)鉄道・地下鉄

 電気通信及びケーブルテレビ放送のための鉄道施設の利用については、他の業種と比較すると、これまでのところ申し込み件数が極めて少ないことから、各鉄道事業者において、定型的な申し込みに対応するという観点での具体的な許可基準は定めていない。
 電気通信事業者やケーブルテレビ事業者から、鉄道事業者が所有する鉄道施設へのケーブル等の線路敷設の申請があれば、各鉄道事業者が個別に協議に応じ、敷設が可能な場合については対応している。実際に複数の電気通信事業者及びケーブルテレビ事業者の施設が鉄道事業者の施設内に敷設されている。

(5)民間所有建物

 「民間所有建物へのアクセス」に関しては、電気通信事業者及びケーブルテレビ事業者が、そのサービスの提供のために必要な設備を民間所有建物に設置する権限を取得することが前提となるが、これは、電気通信事業者及びケーブルテレビ事業者と建物所有者との間の契約によることになる。当事者間の契約については、民事法上、契約を締結するか否か、どのような内容の契約をするかということは、当事者の自由な意思に委ねられており、何ら規制は存在しない。
 なお、区分所有建物の場合には、共用部分の変更或いは管理に区分所有者全員の同意を要することはなく、区分所有者の集会の決議により電気通信事業者及びケーブルテレビ事業者に対する権限賦与を決することができる。
 第一種電気通信事業者の設置する電気通信回線設備と利用者の端末設備との分界点については、電気通信事業法第49条第2項3号及び端末設備等規則第3条により明確に定めることとされている。
 例えば、集合住宅においては、電気通信回線設備との切り分け機能及び雷等の過電流による装置破壊を防止する機能を持つ保安器等が、両者の分界点になっている。

4.改善策

(1)NTT等第一種電気通信事業者

 NTT等第一種電気通信事業者は、管路、とう道、電柱への線路敷設に関し、申請方法、線路の敷設に応じられない一般的事由、基本契約条件、線路敷設の申請からこれに対する回答までの期間、料金の算定方法等の明確化を図り、公表する。

(2)電気事業者

 電気事業者は、電柱への線路敷設に関し、申請方法、線路敷設に応じられない一般的事由、基本契約条件、線路敷設の申請からこれに対する回答までの期間、料金の明確化を図り、公表する。

(3)道路

(a)許可申請手続きの効率化
 道路管理者及び各警察署長は、道路占用許可及び道路使用許可について、いずれかの窓口において両方の許可の申請が行えるよう窓口の一本化に努めているところである。
 建設省は、電気通信事業者、ケーブルテレビ事業者等の道路占用許可の申請に伴う負担の軽減及び高度情報化に向けた基盤整備等を目的として、道路占用許可手続の電子化に関する研究を実施する。

(b)電気通信事業者等が利用し得る施設の整備
 道路管理者は、電気通信事業者等の光ファイバー網の全国整備のため、共同溝及び電線共同溝の整備を推進してきており、今後も都心部等を中心にこれらの整備を引き続き実施する。加えて、指定区間内の国道を中心に道路管理用光ファイバーケーブルを収用する情報ボックスを積極的に整備し、電気通信事業者等に対してその空間の使用を認めることにより、民間事業者の施設整備を支援している。
 また、道路管理者は、従来より、道路、共同溝、電線共同溝及び情報ボックスの建設計画を公表しているほか、必要に応じてインターネットホームページへの掲載等により情報の公開にも積極的に努めているが、今後これを更に推進していく。

(c)高速道路
 建設省及び日本道路公団は、今後新設される高速道路については、日本高速通信株式会社(日本道路公団の道路管理用通信システムと一体的に線路を整備してきた。なお、本年12月に合併によりケイディディ株式会社となった。)以外にも所要の管理能力を有する第一種電気通信事業者が同様の方法によって事業用ケーブルを敷設することが可能となるよう検討する。

(4)鉄道・地下鉄

 主要鉄道事業者においては線路敷設の申請窓口が定まっていない場合もあることから、主要鉄道事業者は、自主的に窓口を設置し、当該窓口で一元的に対応することを検討していく。

5.苦情への対応

 電気通信事業者及びケーブルテレビ事業者による線路敷設に関する苦情に関しては、上記3.(3)(d)の手続による場合を除き、「線路敷設権」関係省庁検討会議(平成11年度はレビュー)においても受け付け、関係事業者の協力を得られる範囲内で事実関係等の必要な調査を行い、その結果を適宜とりまとめて苦情申し立て者への回答を行う。これらの事例は、平成11年度におけるレビューで更なる改善につき検討する際に参考とする。

6.改善策等の公表

 事業者等による改善策等の現状を調査した結果はこちらをご覧下さい。



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