日本の多国間軍縮・不拡散外交における最近の主な成果
平成14年11月27日
1.CTBTフレンズ外相会合(9月14日)
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2002年5月頃より、日本、豪、蘭3ヶ国の在ウィーン代表部大使が中心となって、CTBTの早期発効に寄与することを目指したCTBTフレンズの活動を開始した。9月14日、共同議長である川口外務大臣、豪・蘭外相を含めたCTBT批准国の外相は、ニューヨークの国連本部においてCTBTフレンズ外相会合を開催し外相共同声明を発表した。右声明は、CTBTの可及的速やかな署名・批准を求めることを主な内容としており、当初は18ヶ国の外相が署名したが、その後、英、仏、ロの3核兵器国を含む50ヶ国の外相の賛同を得た。
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本会合の開催および声明の発出により、発効要件国を中心とする未署名・未批准国に対して、CTBTの早期署名・批准を求める国際社会の強い政治的意思を示し、2003年開催が見込まれる次回発効促進会議への橋渡しができた。
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なお、日本は、本会合の開催以外にも、二国間、多国間の場でハイレベルでのCTBT早期批准の働きかけを行った他、国際監視制度(IMS)整備の一環として、国内に設置される10ヶ所の監視施設の建設を2002年から順次始めると共に、近々CTBT国内運用体制を立ち上げる。
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2.猪口軍縮代大使の2003年小型武器中間会合議長就任(10月18日)及び国連総会における小型武器決議案の国連総会第一委員会における採択(同22日)
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10月22日、国連総会第一委員会において、小型武器非合法取引に関する決議案が満場一致で採択された。同決議案は、日本、コロンビア及び南アフリカの共同提案の形をとっているが、実質的には日本(代表団長は猪口邦子軍縮会議日本政府代表部大使)が起案したものである。内容的には、2001年の国連小型武器会議で採択された「行動計画」において開催が定められている国連小型武器中間会合を、2003年7月にニューヨークで開催することを盛り込んである。
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また、日本は猪口邦子軍縮会議日本政府代表部大使を2003年の中間会合の議長に擁立していたところ、10月18日の協議において、同大使の議長選出が満場一致で合意された。
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3.第5回生物兵器禁止条約運用検討会議再開会合(11月11日~15日)
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11月11~15日、ジュネーブで開催された生物兵器禁止条約(BWC:75年発効、146ヶ国加盟。)の運用検討締約国会議において、今後の作業計画が全会一致で採択された。日本としては、この成果を高く評価している。
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今回合意された作業計画により、2003年から次回運用検討会議が開かれる2006年まで、毎年締約国会合などを開催し、各国国内の取締法規の強化や、病原菌の安全管理など5つの分野(注)において、生物兵器禁止条約の強化の方法を討議することになる。
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今回の会議は、2001年11月に開かれた運用検討会議が何ら成果を上げずに中断した後、一年間の調整期間を経て再開されたものである。会議の開始に先立つ約半年の間、日本は、関係各国や会議議長との間で今回の合意形成に向けて精力的な調整を積み重ね、また、最終段階の公式会合が行き詰まりに陥った局面では、猪口大使の主催にて西側と途上国側の主要諸国が出席する非公式協議を行った。最終段階におけるこの協議が、今回の合意形成の実質的機会として役立つことになった。
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(注) |
この2分野の他に、生物兵器使用の疑いのある感染症の発生に対する国際的対応の強化、感染症の監視に関する国内・国際的努力の強化、科学者のための行動規範、の3分野。
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4.核軍縮決議案の国連総会本会議での採択(11月22日)
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11月22日、国連総会本会議において、日本が提出した「核兵器の全面的廃絶への道程」決議案が国際社会の圧倒的多数(賛成156-反対2-棄権13)の支持を得て採択された。本決議案は現実的かつ漸進的なアプローチに基づき、核軍縮に向けた具体的な措置を積み重ねることにより、核兵器のない平和で安全な世界の実現を図ることを目的としている。本決議案がこのような圧倒的多数の支持を得て採択されたことは、日本の核廃絶に向けた取組みを国際社会が強く支持していることを表している。
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2002年の特徴は、露、イラン(2001年はともに棄権)を始めとする数カ国が賛成に回った結果、2002年は棄権国が減少し、賛成国が増加した(2001年は賛成139-反対3-棄権19)。また、本決議案の共同提案国数も2001年の5カ国から9カ国に増加した。これらの事実は核廃絶に向けた日本の一貫した立場への支持が広がっていることを示している。
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5.「弾道ミサイルの拡散に立ち向かうための国際行動規範(ICOC)」立ち上げ会合(11月25日)
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オランダのハーグにおいてICOC立ち上げ会合が開催されるところ、日本からは、新藤義孝外務大臣政務官が出席したほか、主要国からも閣僚級をはじめとするハイレベルの関係者が出席した。
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これまでのミサイル不拡散分野における国際的取組がミサイル技術管理レジーム(MTCR)を通じた一部諸国による輸出管理協調の枠組みのみであったのに対し、ICOCは大量破壊兵器(WMD)を運搬可能な弾道ミサイルの拡散を国際的なルールにより防止することを目指すものである。
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日本は、北朝鮮のミサイル問題を視野に入れ、ICOCが日本の安全保障にとってプラスになることを目指し、独自の案を提出したほか、常に米国と協調しつつ本件に対応してきた。その結果、合意された案文には日本の主張が随所に盛り込まれている。ICOCは、この分野では初めての合意であり、日本の外交・安全保障上の取組を補完するものとなることが期待される。
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(注) |
ICOC(International Code of Conduct against Ballistic Missile Proliferation)とは、大量破壊兵器(WMD)を運搬可能な弾道ミサイルの拡散を防ぐ上で尊重すべき原則と、そのために必要な措置を示した新たな国際的なルールであり、全ての国に開かれている。法的拘束力をともなう国際約束ではなく、あくまで政治的な文書。
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