拡散安全保障イニシアティブ(PSI)
阻止原則宣言(仮抄訳)
拡散安全保障イニシアティブ(PSI)は、大量破壊兵器並びにその運搬手段及び関連物資(以下、「大量破壊兵器等」)の世界的な拡散によって増大しつつある挑戦への対応である。PSIは、大量破壊兵器等の拡散防止のための既存の条約及び制度を含む国際社会による努力をその基礎としている。PSIは、すべての大量破壊兵器の拡散が国際の平和と安全への脅威であると宣言し、国連加盟国による拡散防止の必要性を強調した1992年1月の国連安全保障理事会議長声明と合致しており、かつ、その実施における一つのステップである。また、PSIは、大量破壊兵器等の拡散防止のためにより一貫しかつ調整された努力が必要である旨表明した最近のG8及びEUのステートメントとも合致している。PSI参加国は、この脅威及び大量破壊兵器等がテロリストの手に渡ることの危険性につき深く懸念し、大量破壊兵器等の拡散懸念国家・非国家主体(以下、「拡散懸念国等」)への流れ及び拡散懸念国等からの流れを断ち切るための努力を共同で行うことにつきコミットする。
PSIは、不拡散に利害を有し、海・空・陸において大量破壊兵器等の流れを断ち切るための措置をとる能力及び意志を有するすべての国家が、何らかの形で関与することを求める。また、PSIは、その船舶、国旗、港湾、領海、領空及び領土が拡散懸念国等によって拡散目的のために使用される可能性のあるいかなる国の協力も求めている。既存の不拡散規範の外に留まり、かつ抜け穴を利用し、そうした取引によって利益を得ようとする拡散者による攻撃性を増す努力は、国際社会による新たなかつより強力な行動を必要としている。以下の「阻止原則」に示されているとおり、我々は、全ての関係国と共に、これらの国がとり得、とる意志のあるPSIを支持するための措置について取り組んでいくことを期待している。
拡散安全保障イニシアティブ(PSI)のための阻止原則
PSI参加国は、国内法並びに国連安保理を含む関連する国際法及び国際的な枠組みに従い、大量破壊兵器等の拡散懸念国等への及び拡散懸念国等からの輸送を阻止するためのより調整され効果的な基礎を構築するために、以下の阻止原則にコミットする。PSI参加国は、国際の平和と安全に対するかかる脅威に懸念を有するすべての国が同様に阻止原則にコミットするよう呼びかける。
- 単独又は他国と協調して、拡散懸念国等への及び拡散懸念国等からの大量破壊兵器等の移転及び輸送を阻止するために、効果的な措置をとる。拡散懸念国等とは、一般的に、(a)化学、生物、及び核兵器並びにそれらの運搬手段の開発又は獲得への努力、又は(b)大量破壊兵器等の移転(売却、受領及び促進)を通じ、拡散に従事しているとしてPSI参加国が阻止対象とすべきことを確定する国家又は非国家主体を指す。
- 本イニシアティブの一環として他国より提供される機密情報の秘密を保全しつつ疑惑のある拡散活動に関連する情報の迅速な交換のため合理化された手続きをとる、阻止オペレーション及び阻止能力のために適切な資源及び努力を投入する、阻止努力における参加国間の調整を最大化する。
- これらの目的を達成するため、必要に応じて、関連する国内法を見直すと共にその強化に努力する。また、これらのコミットメントを支持するため、必要な場合には、適切な方法によって関連する国際法及び国際的枠組みを強化するために努力する。
- 各国の国内法権限が許容する限りにおいて、国際法及び国際的な枠組みの下での義務に合致して、大量破壊兵器等の貨物に関する阻止努力を支援するために、以下を含む具体的な行動を取る。
a.拡散懸念国等への又は拡散懸念国等からのかかる貨物の輸送及び輸送協力は行わない。また、自国の管轄権に服する何人にもこれを許可しない。
b.自国の発意又は他国の要請若しくは理由の提示に基づき、自国籍船舶が拡散懸念国等との間で大量破壊兵器等を輸送していると疑うに足る合理的な理由がある場合には、内水、領海、及び他国の領海を越えた海域において乗船し立入検査するための措置をとり、確認された関連貨物を押収する。
c.適切な状況の下で、他国による自国籍船舶への乗船、立入検査及び、当該国に確認される場合には、当該船舶における関連貨物の押収につき同意を与えるよう真剣に考慮する。
d.以下のために適切な行動をとる。(1)拡散懸念国等へあるいは拡散懸念国等から大量破壊兵器等の貨物を運搬していると合理的に疑われる場合、内水、領海、接続水域(宣言されている場合)において停船および立入検査し、発見された関連貨物を押収する、(b) 大量破壊兵器等の貨物を運搬していると合理的に疑われ、その港、内水及び領海に入ろうとしあるいは出ようとする船舶に対し、乗船、立入検査を求め、関連物資の押収を行う等の条件を付ける。
e.自国の発意又は他国の要請若しくは証拠提示に基づき、(1)拡散懸念国等へ又は拡散懸念国から大量破壊兵器等の貨物を運搬していると疑うに足る合理的な理由があり、自国領空を通航している航空機に対し、検査のため着陸を求め、確認される場合にはかかる貨物を押収する、又は(2) かかる貨物を運搬していると疑うに足る合理的な理由がある航空機に対して、事前に自国領空の通航権を拒否する。
f.港湾、空港その他の施設が拡散懸念国等への又は拡散懸念国等からの大量破壊兵器等の貨物運搬の中継地点として使用される場合には、かかる貨物を運搬していると疑うに足る合理的な理由がある船舶、航空機その他の輸送手段を
検査し、確信される場合には、当該貨物を押収する。
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