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(2002年6月13日 於ローマ) 日本政府代表 (冒頭) 私は、世界食糧サミット5年後会合に出席し、日本国政府を代表して所見を述べることができることを大変光栄に思います。この会議の準備に携わってこられたディウフFAO事務局長をはじめ、FAO事務局関係者、またこの会合をホストしていただいたイタリア政府の方々に心から敬意を表します。 (現状認識) 議長、 21世紀の食糧・農業問題の重要性を認識し、飢餓や栄養不良の撲滅と世界の食糧安全保障の達成に向けて議論するため、1996年、各国首脳がイタリアに集い、「世界食糧サミット」が開催されました。既に、同サミットから5年半が過ぎましたが、未だに約8億人の栄養不足人口が存在することを深く憂慮します。 このような事態を改善するためには、開発途上国の自助努力に加え、ドナー国やFAOを中心とする国際機関が協力し、世界が一体となって、飢餓や栄養不良の問題に取り組むことが肝要と考えます。 このため、この5年後会合において、飢餓と闘うための各国の政治的意志の強化及び資源の動員について再確認することは非常に意義のあることと考えます。 (多様な農業の共存、持続可能な農業・農村開発、農業の多面的機能) 議長、 飢餓や栄養不良の問題の解消のためには、まず、各国政府が「農業の役割」を再び認識することが最も重要と考えます。農村部には、開発途上国及び移行国の貧困層の約4分の3が居住しており、貧困削減との関連においても、農業は、人々の生存の基本となる食糧を確保する手段としてのみならず、農家所得の向上や貧困層に就業の機会を与える機能など重要な役割を果たしております。また、農業は、食糧安全保障、国土の保全、水資源の涵養、自然環境の保全等の多くの機能、即ち多面的機能を有しております。これら農業の果たす役割・機能は、持続可能な農業・農村の開発があってはじめて実現できるものであります。 私は、21世紀が、様々な国家・地域が、それぞれの歴史・文化等を背景にした価値観を互いに認め合い、共存すべき時代でなければならないと考えております。各国の社会の基盤である農業については、各国の自然的・歴史的条件が異なる中で、その多様性と共存が確保され続けなければなりません。このため、我が国としては、WTO農業交渉においても、「多様な農業の共存」を基本哲学として、こうした農業の多面的機能に十分配慮した貿易ルールづくりがなされることが必要と考えております。 特に、今後の世界の食糧需給のひっ迫の可能性や、開発途上国等の経済力と不安定な社会情勢を考慮すれば、輸出国への食糧依存を高めるのではなく、国内での持続可能な食糧生産の確保を基本に据えつつ、輸入と備蓄を適切に組み合わせて食糧安全保障を確保することが重要であります。 (国際備蓄) 我が国は、自然災害等に伴う一時的かつ大規模な食糧不足の発生に際し、開発途上国に対する食糧の支援スキームを強化する観点から、基礎的食糧を国際的に現物で備蓄し、円滑な食糧援助の実施に資する国際備蓄の仕組みをWTOに提案しております。また、我が国は、この提案の実現に向けた具体的な第一歩として、アセアン諸国と協力して、「東アジアにおけるコメ備蓄に関する研究」に取り組んでおります。この研究成果は、本年10月のアセアン+3(日、韓、中)農林大臣会合において検討されることとなっており、東アジアにおける新たなコメ備蓄管理システムにつき参加国間で意見の一致を見ることを期待しております。 (林業、漁業) 本年3月に開催された国連森林フォーラム(UNFF)における閣僚会合では、貧困撲滅や持続可能な開発を達成するため、持続可能な森林経営が果たす役割が認識されました。また、同閣僚会合では、「持続可能な開発に関する世界首脳会議」(WSSD)に向けて、貧困撲滅、食糧安全保障、安全な飲料水の確保等に不可欠な手段として、持続可能な森林経営を推進すべきであるとのメッセージが採択されました。違法伐採問題等、持続可能な森林経営を阻害する問題に対し、今後も国際社会が一体となって取り組んでいく必要があると考えており、これらの分野に対し、バイによる協力のみならず国際熱帯木材機関(ITTO)等を通じて積極的に協力を行っております。 また、漁業につきましては、過剰漁獲の削減、違法漁業の撲滅、海洋生態系の総合的な管理を行い、海洋生物資源の持続的利用と保全を推進していくことが重要であります。水産物は国民への栄養供給という面でも重要な役割を担っていることから、持続的な漁業が食糧安全保障や貧困削減に果たす役割を十分考慮し、その管理や開発を行う必要があります。 (我が国のODAと世界食糧サミットのフォローアップ等) 議長、 我が国は、1954年のコロンボ・プラン加盟以来、2000年までに累計で約2千億ドルの政府開発援助(ODA)を行っており、厳しい経済財政状況の中にありながらも、世界食糧サミットのフォローアップについても着実に実行しております。具体的には、「食糧安全保障特別事業」(SPFS)を、2000年から5カ年計画で、インドネシア、ラオス等のアジア4か国において実施しております。 また、FAOに対する新たな協力活動として、アジア地域のバイオテクノロジーに係る事業、WTO農業関連キャパシティ・ビルディング、アセアン各国の食糧安全保障関連情報を整備し食糧安全保障の状況を把握するための事業などを予定しているところであります。 これらの事業により、世界の栄養不足人口の減少に貢献することを期待しております。 また、我が国は、世界最大の農産物の純輸入国として、開発途上国からの農産物輸入についても積極的に貢献しているところであります。 (食品の安全性) また、世界的に食品の安全性や品質・食品表示等に関する消費者・市民社会の関心が高まっております。このような中、我が国では、昨年のBSE問題発生以降、食品の安全性を確保するための様々な対策を講じてきております。我が国としてはこのような経験を教訓に、今後アジア地域を中心に積極的な協力を行ってまいりたいと思います。 (アフリカへの支援) 議長、 我が国は、93年から、アフリカにおける持続可能な開発を目指すアフリカ開発会議(TICAD)を開催しており、2003年には、アフリカの首脳が多数参加する第三回アフリカ開発会議(TICADⅢ)を我が国において開催することとしております。また、本年のG8サミットやヨハネスブルグサミット(WSSD)等においては、アフリカ問題が重要なテーマとして取り上げられることになっております。このような中、我が国としても、農業分野についてはアジアでの食糧改善面での経験を生かして、アフリカへの農業協力を進めており、その一例として、アフリカにおけるネリカ(NERICA)米の試験研究に取り組んでおり、アフリカの飢餓の改善に資するものと脚光を浴びております。今後とも、ネリカ米に代表されるような支援を積極的に進めてまいりたいと考えております。 また、2000年以降、新たに、食糧安全保障の実現に向け、FAOを通じて、「人間の安全保障基金」等を活用し、栄養不足の状況が極めて厳しい状況にあるアフリカの国々に対する支援を実施しております。 (食糧と水問題) また、食糧増産のため開発途上国の水資源開発に積極的に支援を進めてきているところでありますが、水資源が限られる中で効率的な水資源管理が求められております。このような課題に対処するため、2003年3月に第3回世界水フォーラムが我が国で開催されることとなっており、これに併せて我が国とFAOの共催により農業大臣会合を開催することとしております。 (まとめ) 最後になりますが、1996年の世界食糧サミットで合意された「2015年までに世界の栄養不足人口を半減する。」という目標に向けて、各国が連携して取り組むことは誠に重要な課題であります。我が国といたしましても、世界の各国とともに、栄養不足人口の削減に向けて積極的に取り組んで行く所存であります。 ご清聴ありがとうございました。 |
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