NPT第3回準備委における一般討論演説(骨子)
平成16年4月26日
- 序
- NPTの意義
- NPTは核不拡散と核軍縮の2つの側面に係わる条約であり、相互に補完しあっている2つの側面は密接に関連しており、両者を促進させねばならない。
- 核不拡散の側面に関しては、NPTは、ほぼ全世界的な普遍性の達成、1995年の無期限延長の決定、及び追加議定書の導入により大いに強化され、国際安全保障の強化に大きく貢献している。核軍縮の側面に関しては、NPTは核兵器国に対して核軍縮を行うことを義務づけている。核兵器の全面的廃絶はNPT第6条の完全な履行により達成される。1995年の「原則と目標」に関する決定及び2000年の最終文書はこの目的を再確認している。
- 全ての締約国はNPTが世界規模の核不拡散及び核軍縮を達成するための主たる手段であることを完全に確信し続けなければならない。核兵器国及び非核兵器国の両者とも条約上の義務と約束を完全に遵守し続けなければならない。
- 日本の立場
- 我が国は、まず我が国自身が世界に対する脅威とならないことを世界に明らかにすることが重要と考え、自らの核武装を否定した。1955年、我が国は、原子力基本法を制定し、原子力活動を平和目的に限定した。さらに、1967年、我が国は、「核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず」という非核三原則を表明し、爾来、この原則を堅持している。この方針は今後とも変わらない。
- 1976年、我が国は、非核兵器国として核兵器不拡散条約に加入し、自ら核武装する選択肢を放棄することを国際的にも約束した。そして、現在、NPTを礎とする国際的核軍縮・不拡散体制は、我が国の安全保障を支える重要な柱となっている。同時に我が国は、国際原子力機関(IAEA)の保障措置を受け入れ、自らの原子力活動の透明性を確保し ている。1999年には、いち早く追加議定書も締結した。このように、我が国は、NPT体制が、自国の平和と繁栄のために死活的重要性を有すると考えており、このような認識は、国際社会の圧倒的多数の国々が共有するところと確信する。
- 我が国は、核兵器のない平和で安全な世界の一日も早い実現を目指した積極的な外交努力を展開してきた。94年以降毎年、我が国が国連総会へ提出してきた核軍縮決議案(「核兵器の全面的廃絶に向けた道程」)は国際社会の圧倒的多数の支持を得て採択されてきた。
- NPT運用検討会議が開催される2005年は広島、長崎の悲劇から60周年にあたる。一般市民及び国際社会からの核廃絶を求める声は大きく、核の惨禍は再び繰り返されてはならないという決意の下、2005年の運用検討会議に向けて、全ての締約国は核廃絶に向けたコミットメントを再確認すべきである。
- 北朝鮮の核問題やカーン博士の地下ネットワーク問題等によりNPT体制が重大な挑戦を受けている今こそ、締約国が一丸となってNPT体制の維持・強化に向けた姿勢を国際社会に対し示すことが重要である。我が国は、2005年運用検討会議成功に向けて、2000年最終文書に従い、特にコンセンサスによる勧告の採択を重視している。
- 重点事項
- 国際社会が核拡散の挑戦に曝されている中開催されるNPT第3回準備委では、「核不拡散」は重要なテーマ。カーン博士の地下ネットワークを通じた核関連技術の拡散というケースを踏まえた上で、既存の核不拡散体制の強化に向け、IAEA保障措置の強化・効率化及び普遍化、核物質防護、輸出管理の強化といった具体的措置につき集中的に議論する必要がある。また、我が国はアジアにおける不拡散体制の強化を重視。我が国はアジアにおける不拡散体制の包括的な強化に向けた努力を継続。
- 同時にNPT体制の維持の為には「核軍縮」についても進展が求められる。我が国は、今後とも全ての核兵器国に対して具体的な核軍縮措置を要請していく。この点、NPT体制の下で、これまでにほぼ全ての国により、核兵器保有という選択肢を放棄する約束がなされたという事実を核兵器国は重く受け止めるべき。また、1995年NPT無期限延長決定が、核軍縮の推進を含む「原則及び目標」とパッケージで合意されたことにつき、想起されなければならない。NPT締約国の圧倒的多数を占める非核兵器国のかかる決断に対し、核兵器国が目に見える核軍縮の成果を示すことが求められている。
- 我が国は、更なる核軍縮の一歩となるべき米露間のモスクワ条約の発効を歓迎。両国による完全な履行を期待する。他方、これまでの累次の合意に反して、CTBTの発効、FMCTの交渉開始に進展がないことは遺憾。CTBTは核兵器の質的向上を制限することにより、核軍縮及び不拡散を進める歴史的条約であり、我が国はその早期発効を特に重視。昨年の第3回CTBT発効促進会議では、川口大臣が自ら出席し、条約の早期発効及び発効までの核実験モラトリアムの重要性を改めて強く訴えた。
- 遵守問題
- 北朝鮮によるNPT脱退宣言、IAEA保障措置の受け入れ拒否は遺憾であり、国際社会として決定の速やかな撤回を求める。六者会合プロセスを継続し、早期に平和的解決へ向けた成果を上げることの重要性を確認すると共に、北朝鮮に対し全ての核計画の完全、検証可能且つ不可逆的な廃棄を求める。
- イランの追加議定書の発効を待たずにそれを実施するとの決定を歓迎。イランが国際社会の懸念を払拭するためIAEA理事会決議の要請に全て応えること、追加議定書を速やかに批准すること、詳細且つ迅速な情報提供によりIAEAとの協力を継続・強化することを期待。
- リビアが全ての大量破壊兵器の開発計画を廃棄するとの決定を歓迎。リビアが速やかにIAEA追加議定書を批准し、完全に実施することを求める。北朝鮮及び大量破壊兵器等の開発疑惑が指摘されている国々がリビアの姿勢に倣うことを強く期待。
- 市民社会・次世代との対話の強化(軍縮・不拡散教育)
- 現下の不安定な安全保障環境において、大量破壊兵器がもたらす危険について人々に理解してもらう必要性がある。軍縮・不拡散問題の解決のためには次世代を担う若者や市民社会の理解と支持を得ることが必要。こうした観点から、我が国は軍縮・不拡散教育を重視しており、軍縮・不拡散教育専門家グループによる報告書を歓迎。我が国は、海外の軍縮教育者の招聘を含む積極的な取組をこれまで行ってきており、今後とも継続していく。
- 我が国は、第2回準備委に引き続き、作業文書を今次準備委において提出する予定。2005年運用検討会議に向け、より多くの国が同作業文書の共同提出国に加わり、自発的にその取り組みを紹介することを期待。我が国は、我が国の取り組みに関する作業文書についても今次準備委に提出予定。
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