NPTジャカルタ・ワークショップにおける
飯村駐インドネシア大使の冒頭挨拶の骨子
平成16年3月29日
- 本件ワークショップを主催するスジャトナム外務次官のイニシアチブを高く評価。我が国が共催者として、本件ワークショップに臨めることは光栄。多数の参加者を歓迎。また、第3回準備委を目前にして、今次ワークショップが建設的な成果を生むことを期待。
- 今日、核兵器を始めとする大量破壊兵器及びその運搬手段の拡散の問題は、国際社会の平和と安定に対する脅威。この問題に対処するためには、各国が不拡散政策を強化し、NPTを始めとする軍縮不拡散関連条約や規範に強くコミットし、その普遍化と遵守に努めることが重要。
- 2001年9月11日のテロ事件は、テロリストという非国家主体も国家の安全を脅かす敵となり得ることを白日の下にさらし、人々の「脅威認識」を一変させた。特に、大量破壊兵器が、テロリストの手に渡ればその脅威は計り知れない。この「新たな脅威」に対応するための新たな国際的取組が開始されており、我が国も積極的に参加している。他方で、こうした新たな取組が真に有効であるためには、その前提となる多数国間軍縮・不拡散体制が有効に機能していることが必要。この意味からも今ほどNPTを始めとする軍縮・不拡散条約の維持・強化が必要とされていることはない。
- 大量破壊兵器の拡散、テロリストと大量破壊兵器の繋がりの可能性という新たな状況の下、冷戦期とは異なる文脈での核の惨禍のおそれ。各国は核の惨禍を回避するためのあらゆる努力を行うべき。
- 国際社会が核拡散の挑戦に曝されている中開催されるNPT第3回準備委では、「核不拡散」が重要なテーマとなることは間違いない。カーン博士の地下ネットワークを通じた核関連技術の拡散というケースを踏まえた上で、既存の核不拡散体制の強化に向け、IAEA保障措置の強化・効率化及び普遍化、核物質防護、輸出管理の強化といった具体的措置につき集中的に議論する必要がある。
- 同時にNPT体制の維持の為には「核軍縮」についても進展が求められる。我が国は、今後とも全ての核兵器国に対して具体的な核軍縮措置を要請していく。この点、NPT体制の下で、これまでにほぼ全ての国により、核兵器保有という選択肢を放棄する約束がなされたという事実を核兵器国は重く受け止めるべき。また、1995年NPT無期限延長決定が、核軍縮の推進を含む「原則及び目標」とパッケージで合意されたことにつき、想起されなければならない。NPT締約国の圧倒的多数を占める非核兵器国のかかる決断に対し、核兵器国が目に見える核軍縮の成果を示すことが求められている。この文脈で米露間のモスクワ条約の発効を歓迎する。他方、CTBTの発効、FMCTの交渉開始に進展がないことは残念。
- 第3回準備委は、前2回の準備委と異なり勧告の採択が予定されているため、困難なものとなることが予想される。北朝鮮の核問題やカーン博士の地下ネットワーク問題等によりNPT体制が重大な挑戦を受けている今こそ、締約国が一丸となってNPT体制の維持・強化に向けた姿勢を国際社会に対し示すことが重要である。
- 我が国は、2005年運用検討会議成功に向けた第3回準備委の成功、就中、コンセンサスによる勧告の採択を重視している。また、我が国としては、NPT体制を維持・強化する具体的措置として、CTBT早期発効、カットオフ条約の早期交渉開始、IAEA追加議定書の普遍化等を重視しており、NPTプロセスにおいても引き続きこれらを重点事項として主張していく。
- 最後に軍縮・不拡散教育の重要性を指摘したい。軍縮・不拡散問題の解決のためには次世代を担う若者や市民社会の理解と支持を得ることが必要。こうした観点から、我が国は軍縮・不拡散教育を重視しており、海外の軍縮教育者の招聘を含む、積極的な取組をこれまで行ってきており、今後とも継続していく。
- このワークショップにおいて、今日国際社会が直面する危機を打開するための有益な議論が活発に展開され、その成果がスジャトナム外務次官が議長を務める予定の第3回NPT準備委の成功に繋がることを強く期待。
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