軍縮会議における猪口大使離任スピーチ(骨子)
平成16年3月25日
- 本使の2年の任期の期間における最大の課題は、軍縮における多国間主義の再興であった。
- 小型武器は、軍縮における多国間主義が機能している分野である。本使が議長を務めた2003年の第1回国連小型武器中間会合では、各国の立場の違いを乗り越え、最終報告を採択することに成功した。同会議は、行動のためにパートナーシップの強化及び自らのオーナーシップによって進むとの共通の意識を強化する画期的な機会となり、2005年の第2回中間会合及び 2006年の検討会議に繋がっていくものと期待。
- また、通常兵器については、昨年11月、CCW(特定通常兵器使用禁止・制限条約)締約国会合において、紛争後の人道的問題に対処するための重要な措置となる、爆発性戦争残存物(ERW)に関する第5議定書が採択された。
- 対人地雷禁止条約の意義は世界的である。地雷除去を含め、地雷に関する活動は、同条約を通じて強化された。本年後半に開催される第1回運用検討会議に期待。
- このように、多国間主義は、人道的分野などいくつかの分野では機能している。しかし、軍縮会議が対象とする包括的な多国間軍縮においては機能していない。軍縮会議は、1978年の国連軍縮特別総会で採択されたアジェンダも実施していなければ、新たな問題の解決に取り組んでもいない。軍縮会議加盟国は、この行詰まりを打開するため、多国間主義に対する強い決意を以て取り組んできており、新たな考え方が必要となっている。
- 五大使提案は、新たなモメンタムを吹き込んだ。本使自身も軍縮会議に新たな空気を吹き込もうと様々な努力をした。たとえば、カットオフ条約に関する実質的な議論を深めるべく、昨年8月には、カットオフ条約に関する作業文書を軍縮会議に提出した。
- ジュネーヴにおける最も記憶に残る経験は、2003年会期の最後の議長として年次報告書の作成に取り組んだことである。この報告書が、作業計画に関する共通の立場を作る一助となることを期待する。昨年12月19日の非公式のオープンエンド協議における本使のステートメントは、新たな方向性を作り出す一歩となったと信じる。このステートメントについては、引用を容易にしてもらいたいとのいくつかの国からの要請を受け、公式文書として登録するよう事務局に要請したところである。
- 軍縮会議の本年の会期は開始されたところであり、再活性化に向けての重要なターニングポイントにさしかかっている。川口大臣を含め数カ国の外務大臣からも最近要請されたとおり、打開に向けての世界の期待は高く、刻々変化する世界の状況に対応していく必要がある。
- グローバリズムの現代において、脅威は直ちに国境を越えるものとなるのであり、これに対処するためには、多国間の取組みが不可欠である。多国間主義は、選択の問題ではなく、必要性の問題である。
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