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【第二部】 <自由討論>
行天座長
どうもありがとうございました。お2人から、総括レポーターにふさわしい、内容のあるお話を伺いましてありがとうございました。
早速ディスカッションに入りたいと思います。皮切りに、私からの感想を一言申し上げさせていただきたいと思います。この研究会そのものは、来年のサミットを視野に置いて、日本として、国際経済・金融システムの将来について、どういう考え方をもって臨んだらいいだろうかという、外務大臣のご依頼から発しておるわけでございますが、やはりそういう研究会自身の問題意識というものを、我々は発し続けなければいけないのだろうと思います。
そこで、お2人のお話を伺っていまして、私、3つ感想を得たわけでございます。1つは、特にアジア経済危機のいわば反省と、それから将来に向けての、それの再発防止のための対策ということで、私としては、お2人から大変説得力のあるお話を伺ったと思いますけれども、やはり一番最後に、1つはっきりしないというか、吉冨委員自身もまだ完全に解明されていない部分があるという感じを残されておりましたけれども、その部分というのは結局、いわゆるマクロの話と、それからミクロの話。つまり、財政金融政策等々の政策が、どこで間違っており、どこでそういう間違いを起こすような実体経済面での動きがあったかという話と、それから、それぞれの経済の市場の構造、運営等々を含めた、いわゆるミクロの問題というものが両方あったということは、お2人のご指摘の通りなんですけれども、その2つが一体どういうふうに絡み合って動いてきたのかというところが、まだ十分に解明されていないのではないかという気がしたのでございます。
特にそれが端的にあらわれておりますのは、いわゆるアジア的なガバナンスの問題とか、クローニー・キャピタリズムとか、そういう問題についての評価は、ご覧の通り、まさに180度変わっておるわけで、そういうことにも表れておるように、どうもマクロの問題とミクロの問題とが整合的に解釈される、解明されるというところまで、至っていないのかなという気がいたします。
例えば吉冨委員が言われましたように、なぜ短期の大量の資本の流入があったかという問題1つ取ってみても、これは必ずしもマクロの面からの解明だけでは済まないものもあるわけで、当時とられておった各国の経済政策の形成過程が、どういう仕組みとか環境の中で行われたか、それに対する、民間の受け取り側の金融機関の行動とか政策、それからまたそれに対して、入っていったほうの金融機関の経営政策とか行動という問題も、当然、極めて密接に関連しておったはずなんだろうと思います。
ですから、やっぱりそういう問題を考えなければいけないんだろうと思いますが、それに関連して、私はこのアジアの経済危機を振り返ってみて、日本自身のそういったミクロとマクロのかかわり合いの問題と、非常に関連がある部分が随分多いのではないかという気がするのでございます。アジアの問題、特にアジア危機の解明の問題というのは、日本の問題の解明と、やはり全然別な事柄としてやるわけにはいかないのだろうなという気がいたしました。
それから2番目の感想というのは、確かにアジアの問題から、リージョナルなことについての関心が、当然のことながらアジアの域内でも日本でも起こっておるというわけで、AMF構想等々、非常にそういう意識が強くなってきていることの表れであります。それはまさに、私もその通りだと思います。と同時に、先程申しましたように、この研究会の目的というかあれが、サミットということを念頭に置かなければならないわけです。したがって、サミットの場での日本の政策という観点から考えた場合に、アジアで起こったこと、これから起こるであろうということの、グローバル・インプリケーションというものは、やはり絶えず考えていかなければいけない。またそういう意味で、説得力のある議論を展開していかなければならないのだろうと思います。ですからリージョナルな問題とグローバル・インプリケーションというかかわり合いを考えていかなければいけないなと。
それから3番目は、お2人のお話は大変、その意味ではコンプリヘンシブであったわけですけれども、やはり今度の問題、アジアに限らず、ロシアの危機にしても、あるいは中南米の危機にしても、そういうまさにマクロ経済的な、なかんずく金融的な問題が、社会的な問題にどういう影響を及ぼしたのか、それでそれに対する対応はどうしたらいいのか。アジ銀が、これからの政策の重点を貧困問題に置くということであります。アジアの経済危機の残した、恐らく最大の問題の1つというのは、これらの国における貧富の格差とか、貧困問題が非常に悪化をしたということでもあったのだろうと思います。したがって、この国際経済システムといったことを考える場合には、少なくとも社会的なインプリケーションというものも、考えていかなければならないのだろうなというふうに思ったわけであります。以上が大きな3つの私の感想でございました。
それから、将来のアジアの中で、いろいろな対策の中で、ピア・プレッシャーをどうしたらいいかというご指摘があったわけですが、私もまさにその通りだと思いますが、ブレトンウッズ体制におけるピア・プレッシャーというのは、やはりアメリカという圧倒的な超大国があった、それからまたそれの、いわばグループとしてのG7というものがあって、これが国際機関の中心的な存在であったということに、力の源泉があったんだろうと思います。アジアで、特にリージョナルな問題としてのピア・プレッシャーを考えたとしますと、なかなかそれと同じようなことはできないんで、私は従来にも増して、いかにしてマーケットの力というものを正当に活用するということが、非常に大事なのだろうという感じがします。マーケットの力というのは、非常にいいところと悪いところとあるわけでありますけれども、これからアジアの中で効果的なピア・プレッシャーを考えるというと、どうしても従来の政府ベースのというか、国の立場の力関係ということに加えて、マーケットによるプレッシャーというものをうまく活用していくように、それはさらに言葉を換えて言えば、情報をいかにうまくマネージするかということになるわけですけれども、それを考えていかなければならないだろうという気がいたします。
それから最後に、これも具体的な話なんですけれども、日本のこれからの役割の中で、お2人ともに指摘されておりましたけれども、日本の金融機関というか、金融産業というものは、より大きな役割を果たさなければいけないということは、全くその通りであります。そのことに関連して、確かに非常に1つの大きな問題というのは、いわゆるファイナンシャル・エンジニアリング分野での立ち遅れということがあります。これを何とかしなければいけないんですけれども、同時に、これは吉冨委員が確か強調しておられたと思うんですが、インベストメント・バンキングが非常に大事だというのは、全くその通りなんです。だけどインベストメント・バンキングで一番力のコアになっているのは、ファイナンシャル・エンジニアリングでのエクセレンスの問題と同時に、あるいはそれ以上に、ネットワーキングなんですね。要するに、いかにして国際的なそういうネットワーキングを作っているかということで、もう勝負は決まってしまうわけです。それは換言すれば、人間なんですよ。どういうふうにして、そういうネットワーキングをうまく作り、活用できるようなヒューマン・リソーシズを、日本の金融産業がたくさん獲得できるか、あるいは育成できるかということにかかってくるわけで、この問題というのは、非常に大事なことだろうと思います。浦田委員
お2方に、質問が幾つかあります。先ず吉冨委員なんですけれども、真の問題がコーポレート・ガバナンスだとおっしゃって、それは私も同感です。外国系企業の役割なんですけれども、ご存じのように、直接投資に対する規制というのはかなり緩和されましたし、それに対応するような形で、金融機関あるいはその他の部門においても外資系企業が入ってきているわけですが、その外資系企業が多く入ってきていることによって、コーポレート・ガバナンスの問題というのはかなり解消されるのか。つまり先程のお話ですと、ファミリー・ビジネスと銀行というお話があったわけですけれども、これはもちろん国内のというお話だと思います。ですから、そういう中に外資系企業が入ってきたということで、この問題というのは改善されるのかというのが、第1の質問です。
それから第2の質問は、IMFとAMFですか、リージョナルな機関との関係なんですが、間違っているかもしれませんが、確か新聞でサマーズが、IMFというのは中長期的なことはもうやらないで、短期的な問題だけに特化するようにというような話をしたとか、するとかというのが載っていたと思うんですが、もしそうであるとすると、それだけで多分十分ではないというお考えなのかもしれませんが、そういうIMFの政策の変化というものに対してどうお考えになるのか、それが第2点です。
それから第3の質問は、奇跡、危機、回復という話があって、回復が今進んでいるわけですけれども、この回復というのはもう少し続くのかどうか。近藤委員のお話ですと、比較的明るい将来というのを語っていただいたような気がするんですが、吉冨委員は、この危機の回復というのが、継続的な経済発展に結び付くのかどうか、そこのお考えをお聞きしたいです。
それから、近藤委員になんですけれども、沖縄サミットへ向けての政策、あるいは日本の行わなければいけないこととして、WTO次期ラウンドの早期立ち上げというのを一番最初におっしゃったわけですけれども、具体的に日本は何ができるのでしょうか。例えば、農業問題における自由化を率先して行うというような宣言をするとか、もう少しそこの中身について、何かお話しいただければありがたいと思います。以上です。小川委員
2点あります。先ず1つ、吉冨委員にお伺いしたいんですけれども、チリ型の対応ってことを強調されていたと思うのですけれど、その時にチリ型の短資規制ということが入ってくると思うのですけれども、ということは、資本規制、あるいは短資に限った資本規制が重要だというお考えなのかどうか。それが、アジア危機で反省があるわけですけれども、緊急時で資本規制が必要だという議論はあるかと思うんですが、平常時においてもやはり発展途上国にとっては、資本規制が必要かどうかというお考えをお聞かせいただきたいと思います。
それからもう1点は、近藤委員と吉冨委員の両方に共通した問題なんですが、マルチかバイか、あるいはリージョナルかということで、私もIMFに対してリージョナルな基金、あるいはそういう組織が必要だというふうに思って、私もそういう話をすると、大体マルチとリージョナルの間の補完性ということを私の方は強調したとしても、それに対してそこはぶつかるんだということで、特にアメリカとかそういうところで、そこのマルチに対して、リージョナル、バイを作るということの競合というところが問題になるかと思うので、そこをいかにリージョナルな組織を作ろうというところで、説得的に議論をしていくかということが必要かと思うんですけれども、その点に関して、お2人のお考えを教えていただきたいと思います。竹中委員
座長も言われた、マクロとミクロのかかわり合い、それと構造とのかかわり合いということなんですけれども、吉冨委員が、奇跡、危機、回復を統一的に説明できる枠組みはないという、そこの点がやはり学者としては大変おもしろいというか興味深いところで。ただ1つ思うのは、私はやはり構造の問題というのは絶対に軽視すべきではないと思っていまして、それは期待形成を通して非常に大きな影響を与えたというポイントだと思うんですね。その期待という概念を入れて、何らかのご説明を両方に、追加的な説明をしていただけないだろうかという問題なんです。やはり構造が非常に歪んでいたから、期待形成が歪んだと、それがやはり経済変数を均衡値から非常に大きく乖離させて、それが今日に至っていると。今度はもし、たとえ構造が変わらなくても、一度そういうことを経験してしまうと、経済変数が均衡値に戻るということはあり得るわけですね。例えば日本のバブルがどうして起こったのか、これはもちろんそれ自身大問題ですけれども、やはり幾つかのモラルハザードを起こすような構造の歪みがあって、しかし日本の構造は特にその後変わっていないけれども、経済が例えば95年ぐらいに少し戻ったではないか、だから構造は問題ではなかったんだという議論には、やっぱりならないわけですよね。
そこら辺は、ぜひちょっとご説明していただきたいというのが第1点と、もう1つは、これはちょっと細かい話ですけれども、香港のカレンシー・ボードの役割というのが、私は1つの示唆にならないかなと思っていまして、要するに1つの金融政策におけるモラルを保証したという役割があったのではないか。この辺はちょっと特殊な問題がありますけれども、時間が許せば少し、短いコメントでもしていただければと思います。野上・外務省外務審議官
近藤委員の方から、サミットに関して、アジアの声をと、我々もそういうことを言っているんですけれども、実はいろいろやってみて非常に難しいのは、最後に行天座長が触れられた様に、本当にアジアというのは、例えばインスティテューショナルなピア・プレッシャーというのを望んでいるのかとかですね。例えばアジアの中で、大きくリージョナル・ファンドを求める声というのは、本当にIMFと整合的かつ補完的なファンドを求めているのか、それともそうでない、もうちょっと自分たちの割合と勝手になるようなものを望んでいるのかですね。要するにアジアの声というのは意外に、非常に極端に言えば、さっき座長が言ったように、マーケットがずっと貫徹していくようなことに対する、ある種の反発から出ているところがあるのではないか。先程のWTOの話にしても、アジアにおいてWTOを推進しようというのは、実はもしラウンドを推進しようとしてアジアで積極的に動くとすれば日本と、考えてみるとあと韓国、それから全然違う立場としてのシンガポール、香港ぐらいで、実はWTOの次期ラウンドが立ち上がるのに、アジアは基本的には消極的だと思います。ですから、アジアの危機を踏まえて、日本がアジアのために何か、サミット等を通じてやろうというときに、内心思っていることと、あまり平仄が合わないのではないかなという感じを持っているんですけどね、そこが非常に難しいところで。ですからある意味で、グローバルな基準とかそういうものを、かなり強く言うということに対するアジア側の反発がある。そういう中で、グローバルなことを敢えて言った方がいいのではないかという感じを持っているんですけれども、その辺についてのご意見を伺いたいと思います。
それから、最近FTAの話なんかでも、我々もいろいろ考えたのですが、正直なところシンガポールぐらいしかできないなというのが答えなんですね。要するに、今あるWTOのルールやなんかを無視すればかなりいろいろなことができますけれども、WTOのルールという枠内で、自由貿易協定というのをやってみると、正直いってあまりきちんとしたものはできない。だからある意味では、シンガポールというのは、イチジクの葉的なもので、シンガポールならきれいなものができるというのが1つあるということですが。もう1つは、自由貿易協定のメリットを、あまりいい理論というか、きちんとした研究というのが、実は60年代を過ぎて、地域統合というのがあまりスタディがないんですね。80年代ぐらいに、例えばバラッサの研究なんかがありますけど、ああいうのを見ていても、同質性とかそういうのがものすごく強調されていて、そういう点から見ていくと、日本はどうしても未だ依然としてアジアでは、シンガポール、香港を除いては、アウトライナーであるという問題が出てきてしまって、理論的にもなかなか、自由貿易協定なんかをジャスティファイする裏の数字がないなという感じがするんですけれども。ですから、政策の方向の感覚としては分かるんですけれども、いろいろやってみると、そういうことを裏付ける数字が、意外にアジアにはないという気がちょっとしたわけです。以上です。鷲尾委員
1つだけお伺いしたいんですが、今、吉冨委員からお話があった、奇跡、危機、回復を統一的に説明する枠組みがないという話と、それから近藤委員からもお話がありましたように、構造的な問題をどうするかという提言があるんですが、その際に、今回のアジアの経済危機で、そうした構造的な問題を比較する場合には、例えば韓国とタイとインドネシアの3つを比較して、どういう違いがあったのかということを比較することによって、多少なりとも将来方向というものの分析というか、方向性が見えるのではないかと思うんですが、その点の3カ国の奇跡、危機、回復の構造的なパターンが違うはずなので、それを比較することによって、これからの方向性を見出すことができるのかなと、国際金融や国際経済に非常に疎い者としては、その3つを比べることによって、何らかの違い、こういう方向があるのではないかということが見出せるのかなというような気がするんですが、その点についてもしお考えがあったら、お聞かせいただきたいと思います。
下村委員
非常に体系的なお話を伺いまして、大変勉強になりましたけれども、今後のことを考える上で、ちょっと視点を変えて途上国側から見ると、このような危機が起こるということと、危機が起こった後どういう問題が残るかという点について、少しニュアンスの違うところがあるかなと思います。1つは、なぜ危機が起こったかという点で、私は、今の途上国は、マーケットへのアクセス、あるいはマーケットへのインテグレーションというのを非常に国際的に強く求められて、その圧力のもとでマクロ経済運営をしているということではないかと思うんです。身の丈に合った形でアクセス、あるいはインテグレーションをするということではなかなか褒められなくて、もうちょっと踏み込め、踏み込めということを常に言われている。
私はこの前ウガンダの中央銀行の人の話を聞いていて、アジアで起こったことの原型ではないかと思ったんですけれども、ウガンダでも資金の取り入れが自由化されて、資金が入ってきている、民間が直接借りられるようになっているそうですけれども、中央銀行では、どんなところから、どこへ、どれぐらいお金が入っているかというのは全くわからない。まあウガンダですから、そんなにたくさんお金が入ってくるわけではないので、今は何とかおさまっていますけれども、これがもっと発展に成功している経済だったら、たちまち破綻を来すのではないかなという印象を持ちました。アジアはかなり発展していますから、さらに現象が複雑だと思うんですけれども、これが原点ではないかというふうに思いました。
それから、危機が起こってみて、今後、残った問題として、持続的成長を求めて、いろいろな課題があると思いますが、やはり後遺症が非常に深刻だという感じがいたします。それは日本と似ているかもしれませんけれども、金融部門がこれだけノン・パフォーミング・ローンで、不良債権でしこっていると、今、財政を通じたお金の流れと輸出でしか、経済を活性化できないという状態になっていて、本来なら建設的、生産的な方向へ向けられるべきである国内の資源とか外国からの援助が、みんな後処理の方に回らざるを得ないという格好になっているわけです。これはしばらく続くと思いますから、アジアが経済成長を回復してきても、しばらくはこういう変則的な形での回復しかないということを踏まえた上で、今後の回復支援というのをしていく必要があるのかなと思います。荒木・外務省経済協力局審議官
1つだけ近藤委員に、ご質問をさせていただきたいと思います。委員のプレゼンテーションの中の、我が国へのインプリケーションの中に、ODAの強化というのが入っておりまして、この中で、いわゆるソフト化、知的支援とか人材育成、その他というご提案をされておられます。まさに現実のODAもその方向に向かっています。その背景といたしまして、日本の財政構造改革及びこういう経済情勢という下で、それが求められているということと、それから、国民、納税者の側から見たODAに対する感情という観点から見ても、変わらざるを得ないという方向があります。最近の奥田ミッションの報告書、あるいはその他の予算要求を見ましても、ODAのソフト化及び人材育成、知的支援に重点を置く方向に向かっているわけです。そこで、私の質問は、日本が持っているノウハウ、それから委員のいわれる様な、アイデンティティの総括で得られた知見、そういうものが、東アジアにおいてどれほどの国際競争力を持っているのか、その評価に基づき、日本としてどういう分野で知的支援を強化すべきとお考えになているのかということをご質問したいと思います。
小島委員
IMFとリージョナルの話が出ましたが、IMF自体のガバナンスなのですが、IMFはいわゆる株式会社みたいに組織されているのですが、戦後50年余り経って、グローバルな経済のバランスとはどんどん乖離していってる。これをもうちょっと、多少でも現実的な方向に、それからリージョナルなものを作るにしても、単にリージョナルでは不足で、グローバルな視点を入れたような仕組みにしないと、両方の補完性というものが初めから切れてしまうのではないかという感じがしますが。国連は1国1票ですが、国連にはセキュリティー・カウンシルがあって、ベース・グループがあるわけですけれども、IMFは少しそういうガバナンスをどうしたらいいのかということを、もっともっと日本も発言して、考え方を示した方がいいと思います。
それから、アジアの危機があった過程で、IMFがやったことというのは随分変わってきたわけですね。それをもう一度、点検し直す作業が必要ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。篠原委員
ちょっと一言だけ感想ですが、吉冨委員のお話も近藤委員のお話も、あるいは竹中委員、小川委員の話も、みんな同じようなところに来ていたし、行天座長がそれをまとめられたと思いますが、このアジア危機が始まって、ところで何が始まったのかみんなで考えようといって集まりがかさんできた時に気が付いたことは、アジアのこと、あるいはもしかすると日本のこと自体も含めて、意外と解析が進んでいない、あるいは基礎的な知識がない、あるいは基礎的な理解がないということだったような気がします。ですから、今ある理論フレームワーク、今ある、例えば理念系の経済体あるいは経済運営の仕方、今ある市場論みたいなものをイメージして、それからどのくらい外れている、どのくらい合っているというような部分的な解析みたいなことは、それぞれいろいろな人が、いろいろなことをおやりになられたでしょうけれども、生きているアジアの国々の今の状況を踏まえた、僕たちが安心して委ねられるような理論テーマというのを、どうしても作らなければいかんのだろうという気がします。
アジア通貨基金というのは必要な話なんで、作っていきましょうということを、僕は今後とも言っていくつもりですけれども、アジア開発銀行ができてから、吉冨委員のインスティテュートができるまでに30年かかったんですけれども、このアジア通貨基金は、もしかすると研究所のほうが先にできるのではないかと思うぐらいなところであって、例えばそこで本気のアジア学みたいなものを作って、それと今ある知恵というのを突き合わせた上で、物事を考えていくという方向というものを、僕たちは信じてやっていこうと言うこと位しか言えないのだと思います。だからアジアは好き勝手なことを言って、グローバル・スタンダードになかなか合わないのではないかという野上さんの指摘も、そういうところから来てしまうような気がします。
何が言いたいかと言えば、全く感想ですけれども、鶏の卵を一遍に産むという努力を、僕たちは今後ともやっていかなければいけないし、それを日本は引っ張っていかなければいかんような気がしてます。吉冨委員
1つ1つやっていった方が公平だと思います。コーポレート・ガバナンスで外国企業の役割で、各国の企業の中にオーナーシップとして相当入ってくると。それは、ボードのメンバーを変えるということにもなってきますから、差し当たり見ると、インターナル・コーポレート・ガバナンスのメカニズムは強化されるだろうと思います。ただ、インターナル・コーポレート・ガバナンスが本当に充実してうまくやったのは、アメリカでも90年代で、インスティテューショナル・インベスターが大量を占めて、その間接、直接に広がったアウトサイドでディレクターが入ってくるということが主だったというふうに思います。だから、部分的にはそういう改善があっても、大宗として見たときに、エクスターナル・コーポレート・ガバナンスのメカニズムは、マーケット・ベースとかバンク・ベースで働く必要があると思います。改善にはなりますけれども、チェボール自体の大きな改革までになるかどうかというのは、実際にいろいろ聞いてみると、とてもそこまでは行けない、これは実態の、エンピリカルな研究を待たなければいけないと思いますけれども。私は、先程申し上げた問題が依然として残るだろうというふうに思います。チェボールの構造改革に、部分的に外国企業も役立つだろうということです。それから金融機関はどうチェボールが持つかというのもはっきりしていないので、切り離すことになるのかならないのかは、分かっていないように聞いておりますから、そこら辺も問題かと思います。
それからIMFがどうせ短期的なことをやるのだったらいいだろうという。これはIMFのチャーターも相当書き換えをしないと、量的にクオーターでは間に合いませんので、SDRをボコッと使う、要するに国際流動性危機に対する対応の準備ということですから、そういうことが間に合わないときには、リージョナルの方で補わなけばいけないかと思います。IMFが出来ればこしたことはないわけで、補っているわけですから、ないところを補うという考えで、CCLにしても、あれもこういうアジアの経験とか、流動性の危機や流動性が不足していると、日本等々を含めた声が強くなって、そういうものをつくらざるを得なかったということもあるわけでしょうから、アジアの声が、結果的にグローバルな形でちゃんと反映されれば、それはそれで役割を果たしているわけで、ファンクションを見れば私はいいのではないかと、リージョンはそのファンクションを補っているだけだというふうに私は見ておりますから、リージョナリスト的になるつもりは全くありません。
ただ非常に問題なのは、リクヴィディティといっても、インソルベンシーとどう関連するかという話も当然出てくる可能性もありますから、それと、やっぱり担保は取らざるを得ないわけでしょうね。ラリー・サマーズはメキシコの石油を担保に取ったわけですね。では韓国の担保というのは何なんだろう、ないのではないかと。中国になると相当あるけど、あとはもともと資源はあまりないですから。というわけで、この担保の議論が出てくると、果たしてグローバルにどんな議論ができるのか。やっぱり宗主国的なところが被るということで、非常に重要なのは情報であり、リクヴィディティ・クライシスであれば、まさにリクヴィディティ・クライシスですから、早く突っ込めばもとに戻ってくるわけです。しかもペナルティー・レートはうんと課していいわけで、ラリー・サマーズはもうかったわけですね。でもあれは正解なんです。担保を取って、ペナルティー・レートをかけますから、もうかったというのは、介入と同じで、もうかる介入は成功ということですから。そういう仕組みがすぐにファンドにできるというふうに私は思っていないので、リージョナルなところでやっていったらどうかと思っております。
回復が長く続くかどうか。これは先程の3つの局面をどう統一的に説明するかということにかかわってくるんですけれども、先程申し上げたのは、我々の理由で今考えている仮説なんですが、要するに危機の直接的な原因というのは、国内に限ると、要するに2つあったわけです、ツイン・クライシスですから、そのツイン・クライシスを解決すればいいというのが、非常に単純な考え方です。というわけで、前者の国際的情勢は解決する、それで為替は回復していく。それから後者の銀行危機は、キャピタライゼーションとかナショナリゼーションとかいうので解決する。そうすると銀行危機が後退する、クレジット・クランチが後退する、システムの安定が戻る。そうするとそれによって生じていた内需の問題点、それから金利の高さ等々も解決するわけですから、そういう要因が全部なくなりますので、基本的には金融問題がなくなって、回復に転ずるというのは、私はマクロ的に説明できる、日本もそれなりに説明できると。違うのは、アンダーライン・グロース・レートが、アジアの諸国では、これまでの平均8.5%に比べれば、6.5ぐらいになるのかもしれませんけれども、6.5でも、テンポラリーには8%、9%に回復してもいいということを示します。日本の場合は2%位だとすると、せいぜいうまくいって95、96年のように3%というふうになりますから、テンポが違うというので驚きますけれども、それはアンダーライン・グロース・レート、潜在成長率のようなものの違いではないかなというふうに思います。
持続するかどうか。これは非常に難しいですね、誰も分からないといってよろしいかと思いますけれども、もちろん構造改革をきちんとするほど、つまりインスティテューションというのは、マクロ経済が変動するたびにアダプトしていかないといけませんから、アダプトをうまくやっていけばいくほど、長く続くだろうという一般論しか私は持っておりませんが、先程申し上げたコーポレート・ガバナンスというのが、その有意の真の構造問題はそこにあるという意味で、そこを解決したほうがサステーナブルな状態が長く続くだろうと思います。
チリ型の短資は、私は平常時といいますか、大量の資本移動と短資がドミナントな構造を持っているようなものに対してこれが効くという意味です。どっちに効いたのかという議論は、ご存じのように、小川委員の方がご専門ですけれども、マクロ的に考えると、マクロ経済的な意味で発生する大量の資本移動、BOTの黒字から来るアプリシエーションはどうか。これは効果があったのかどうか、つまり量全体の規制をできたのかと。量は変わらなくて、コンポジションだけが規制できたのか。コンポジションも規制できて、短資も小さくして、量も小さくできた。この3つあるわけですけれども、大体今のところは、量はあまり変わらなくて、コンポジションは少し変えることができたのではないか。
ミクロ的な問題は、ダブル・ミスマッチの問題は、銀行の強化、それから、大量に入ってくる中に、為替リスクというパーセプションが非常になかったというのが今度のアジアの原因であります。為替リスクがなぜなかったのかというのは問わなくてはいけないわけで、フィックスしたからいけないというのは一番ナイーブな解釈で、フィックスというのができていたというのは大変な奇跡の1つなわけで、ラテンアメリカはフィックスできないから、ドルをアンカーに使わざるを得ないという、アフリカはまたそれ以前だというわけですから、非常に遅れている。つまりマクロ経済のファンダメンタルズがよかったということが、アメリカ経済と同じぐらいの為替レートの力で30年間来たということですから、本当は12年間ですが、大変なことなんです、そのこと自体が奇跡です。だから今度は短資が入っていったわけでしょうから、魅力があったということです。
というわけで、ここまで来ますと、一気にフロートに行くよりも、いろいろな理由から、チリ型のマネジメント・フロートでよろしいのではないかと。それで10数年かけて、ちゃんとフロートに持ってくるようなインスティテューション・ビルディング。何がインスティテュート・ビルディングに必要なのかというのも、相当研究する必要が私はあるかと思います。基本的にはバンク・ベーストでありながら、短資が相当入ってくる可能性が残っている時に、変動相場制をやると、非常に為替レートがオーバー・シュートする、アンダー・シュートするという可能性が、私は残っているだろうと思いますので、経済発展にとってはマイナスだろうというふうに思います、それから不安定性も高くなるだろうというふうに思います。
というわけで、期待の形成が歪んでいるかどうかというときにも、一般的にそういっても、ちょっと中身は分かりませんので、どういう意味で歪んできたかというのはちょっとやったんですけれども、ファミリー・ビジネスはファミリー・ビジネスですから、この30年間の最初の20年ぐらいは、やっぱりインターナル・ファイナンスで相当できていってる。インターナルというのは非常に大きいですから、リラティブスを増やしていけばインターナルになる。友達も入りますし、同じ大学の卒業生、ウォートン卒業生、ハーバード大学、プリンストン、全部入ってきますので、そういう人も入れて、ファミリーとしてのファイナンスが相当できていった。ところがここまで成長が続くと、やはりエクスターナル・ファイナンスに頼らざるを得ないというので、銀行からの金が要る。そこで、モニタリングが失敗していると、私たちは見ておりますが、この実証研究を今しているところですが、大体当たっているのだろうと思っています。
その時にコーポレート・ガバナンスで、アロケーションが間違うという問題を起こしているだろうと思いますけれども、ちょうど日本の80年代の銀行のビヘービアと同じで、1988年頃から、アジアは一斉に国内金融の自由化が始まるわけです。そうすると銀行の数がボコボコ、タイ以外は増えるわけであります。これは非常に難しくて、銀行の数が増えた時に、かえってリスク・テーキングに走りやすいというふうに動きます。その時にマクロ的に今度は短資がどんどん入ってくるような国際金融の自由化をしているというのは、これが真のシークエンシングの問題なんですね。だから国内銀行制度が強くなくてはいけないと一言で言いますけれども、国内の自由化のプロセスとの関係で、そういう問題が発生しているというのは非常に濃厚ですから、そういう中での期待が、エクセス・インベストメントの方に結び付いていったというふうに、具体的に解釈した方が、私は分かりやすいのではないかと。そういう意味での具体的な期待形成の歪みを、銀行構造の改革等々によって是正していくというのが課題だし、コーポレート・ガバナンスの課題にしていくということです。
カレンシー・ボードは非常に特殊でして、これはもともとマネタリー・ディスシプリンがない国がやるわけですから、アジアはもうマネタリー・ディスシプリンを十分持っておりますので、私はカレンシー・ボードは一般的に不必要だと。だから香港の場合にも本当は、ドル・ペッグではなくて、あれの輸出入構造を見ると、コンポジットにしたほうが、バスケットと言うんですか。我々の真の目的は、リアル・エフェクティブ・エクスチェンジ・レートをなるべく安定にするというのが目的ですので、ドルだけにペッグ、円だけにペッグ、ユーロだけにペッグというのは、私は間違いだろうと、フラクチュエートしてます。3極圏の間をうんと安定させるということをすればまた別でしょうけれども、それは今すぐには不可能なことだというふうに思っております。それから、カレンシー・ボードの場合は、米国と同じような景気循環パターンを描かなくてはいけないわけですので、これも非常に難しい。それから香港は、香港の場合いろいろ襲われて、カレンシー危機そのものには陥らなかったんですけれども、成長率はアジアの危機諸国とほとんど変わらないようなミゼラブルな状況に陥ったというのは、非常に教訓であります。
それから、野上さんがおっしゃった自分勝手なこと。それは、先程申し上げた、アジアに対する最大のチャレンジなんですね。ホーム・ドクターがどこまでホーム・ドクターと言えるのか。韓国はかなり熱心に私、今はいっていると思いますけれども、分からないのが中国ですね。何か相当変わってきているんですが、オーガニゼーションによって言うことが違うし、ランクによって言う人が違う。ASEANはそれなりにホモジーニアスですからまとまるんですけど、ASEANプラス3の3は非常にヘテロなものですから。そういうことであります。中国をいかに今納得させるかということが、私にとってはキーポイントであります。
それから3国の比較研究というのをやって、銀行機能解決の仕方を見ると、強制的に行った韓国、プライベート方式でやろうとしたタイ、発展段階が違いますので、同じバンクラプシー・コードを作っても、あそこは借金している大部分の人が上院議員だったものですから、上院議員の人は破産法を適用されると破産してしまいますので。しかしそのときに非常に問題になったのは、申し上げたマクロ・エコノミック・システミック・クライシスと、ミクロ・エコノミック・システミック・クライシス。ミクロ用の、バンクラプシー・コードは破産するわけですから、景気がよくても破産する人がいて、そのときに適用するわけですけれども、それはその人の、マイクロ・エコノミック・マネジメントがパシッセントに悪かったので、破産するというわけですけれども、これはパシッセントである程度よくても、為替が5割下がる、金利が半年間暴騰するということがあると、相当な部分でやられてしまいますので、そこのNPLの中でも、マクロNPLとマイクロNPLの仕分けというのが必要ですから、ある程度グローイングアウトしたら分かってくるのだろうというのが私の考えであります。そういうふうに見ると、ご存じのようにインドネシアが一番遅れていて、韓国が進んでいるというのは、これは今やや細かく研究しているところであります。
下村委員のおっしゃった、身丈に合ったというのが非常に重要なので、この間、我々の2周年の大研究会でやったときに、中国のプロフェッサー・チャンのレポートというのが非常におもしろいわけで、つまりオーソドックスなエコノミストが、トラディショナル・エコノミーに対して言ったことというのは、マクロ・エコノミック・スタビライゼーション、4つの条件は必ず要ると、それさえあればすべてうまくいく。マクロ・エコノミック・スタビライゼーション、リベラリゼーション、プラバタイゼーション、デモクラシーと。中国はこのうちでやったのはただ1つと、マクロ・エコノミック・スタビリティと。しかし見事にうまくやってきたではないかというのを、どう分析するかというのが最大の課題であると。非常にマイクロ・エコノミクスを使って、どうやってインセンティブが働いていって、一番問題があったのはTVEですね、タウンシップ・ビレッジ・エンタープライズと言うんですか、郷鎮企業。郷鎮企業というのは政府なんですね、市町村ですから。市町村のガバメントならなぜうまくいったのか。SOEはだめだといってる、これは中央政府。同じ政府でも、中央とそういうタウンシップ・レベルではどう違うのか。それはそういう政府の違いというのではなくて、与えた財政の構造のあり方、インセンティブのあり方とかが全部違うんです。そこを非常に細かく調べていって、メーンストリームのエコノミストが言った4つの条件なんかというのは、そういうのをいきなり達成しようとすると、ロシアみたいになるというのが彼の結論でありますから、身丈に合ったというのは、内容は何なのかというのを、今、猛烈な勢いで研究が進んでいるんですね。
これは言葉で日本では言いますけれども、ここが日本の非常に弱いところです。トヨタの看板方式でも、乾いた雑巾を絞るぐらいの分析しかしていない時に、MITではリーン・プロダクション・システムという形でもって、マイクロの方からちゃんと分析すると。だから我々は感覚的には知っているんですけれども、リバランスにやっていく能力には、残念ながら日本の場合は欠けているらしい。実際には欠けているのではなくて、そういうポテンシャルに、20代、30代の若い人々が持っている能力を引き出す、マネジメントをする50歳以上の人が、なにかしら今の日本の場合にはぼけてくると。ここの仕組みをきちんとしていかないと、アジアで本当にリーダーシップは取れないんだろうと思います。
アジアに行っていつも思うのは、日本は何で黙っているのかということですね。アジアの人から聞くんですけれども、50歳以上の偉い人に会って聞くと、1時間話をして、55分間は「うん、うん」と聞いているだけで、何もリアクションが来ないというわけですね。何かもっと言ってくれというんだけど、意見はないのかというと、「いや、よく考えてみる」と。というわけで、政府の答弁と同じことが、プライベート・オーガニゼーションでも本当は起こっているんですね。これがなぜかということだと思います。私はこれは、いろいろな回答を持っていますけれども、相当我々自身が、ここに集まっている我々が、上からの改革をやっていけばできるのではないかと思いますが、いずれにしてもそういうことがあります。
IMFのガバナンスについては、そういう具体的に今やっているということで、問題になっておりますので。ただ、このガバナンスの問題というのは、最後にはフー・モニター・ザ・モニターに到着するんです。だからそこをぐるぐる回していくと、総理大臣をモニターするのはだれかというと選挙になるわけで、選挙はだめだという話をしているわけですから、ぐるぐる回るのを1つ解決したのがやはりアメリカだと思います。エクスターナル・アウトサイド・ディレクターは、結局情報はマネジメントから取るしかないわけです。だからIMFのボード・ディレクターの情報は、スタッフから取るしかないわけです。しかしスタッフは、一番情報を持っているけど、全部それを探し出す。そうするとまたボードは政府に流しますから、うまくいかないときの問題はたくさんありますので、情報は取るけれども、それをインディペンデントにジャッジできるというプロフェッショナリズムが必要になって、日本で欠けているのはこのプロですよ、プロを登用するマネジメントの力が非常に弱いと思います。プロはプロなんですね。日本のプロはまたちょっと、インバラプロが多いものですから、その後マネジメントをやらせると、とんでもないことをやるような感じの人が多いわけです。何か人間の度量というか技量全体が小さくなっているところもあるわけで、そういうところを突破していく必要があるだろうと、かねがね思っています。研究をやる人はマネジメントができない、マネジメントをする人がトップにきて研究をマネジメントすると、とんでもないことをやっているわけですね。
最後にそういうのが、日本の貢献は、知的貢献をしていくということで、それが最大の課題だと思います。近藤委員
お答えを全部出していただきまして、どうもありがとうございました。私の方からは、時間もありませんので、2~3感想だけ申し上げておきます。
行天座長のおっしゃった、社会的インプリケーションは大変重要なテーマだと私も思います。この問題への適切な対応があって初めて途上国における構造改革が可能になるものと考えます。
それからピア・プレッシャーの問題。確かにマーケットを正当に活用しながらのピア・プレッシャーは、本来のあるべきものだろうと思いますが、そこに到達する前の予防的ピア・プレッシャーもあってよいのではないかと思います。そういう意味で、社会的なインプリケーションへの対応、加えてピア・プレッシャー、中でも予防的ピア・プレッシャーを加えるための出来るだけ多くのフレームワークかあった方がいい。我が国にとって使い勝手がいいフレームワークとしては、APECがある。そのような視点からAPECの活用の方法について、より戦略的な研究が必要ではないのかという感じがいたします。
それから、浦田委員のご指摘についてですが、WTOで我が国は具体的にはどういう役割を果たすべきなのか。一言で言えば、合意形成に向けてのイニシアチブをどう発揮するのかということでしょう。これには2つの意味がありまして、1つはG7の合意形成。しかしこれだけではうまくいかないというのが、シアトルの教訓でもあります。そこで途上国をいかに巻き込むか、途上国の合意をいかに形成していくのかが問題になる。要するに連立方程式を解く必要がある。そういう意味でASEANプラス3などは使える枠組みの1つとして考えてもよい。ただ、ここで我が国としての合意形成に向けた努力のシンボリックな動きとして、農業問題は避けて通れない。
次にマルチ、リージョナル、バイの関連については、小川委員のご指摘はまさにその通りだと思います。ただ、吉冨委員がおっしゃったように、先ずはマルチが、先ずありきという姿勢が必要だろうと思います。リージョナル、バイは、マルチに貢献するものでなければならない。その主眼は、マルチの目的に合致していること、そしてその目的到達への過程を加速させるものである点に置かれなければならない。そのような考え方が、リージョナル、バイへの取り組みの基本でなければならないと思います。
荒木さんのご指摘になられたODAの知的貢献とその内容の問題ですが、人材育成ということがその中心にあるべきだと思います。そのポイントは日本における官民のベスト・プラクティスをどう移転できるかということにあります。移転すべきベスト・プラクティスがいろいろある。それらをどう選択するのかという問題もある。これらを専門的に取り扱う機関があってもいいのかもしれない。
鷲尾委員、篠原委員が、直接、間接に言われたことですが、日本ではアジアのことを意外と分かっていない。少なくもアジアの現状について精緻な分析がなされていない。地域研究の強化の必要性を、我々はもう一度認識をする必要がある。そういう意味でも、政府機関や学会のみならず、経済界をも巻き込んだ形で、地域研究に重点を置いた真の意味でのシンクタンクを持つことも、そろそろ本気で検討すべきではないかとも感じます。行天座長
どうもありがとうございました。最終回にふさわしい、大変熱心な討議をいただきまして、ありがとうございました。
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