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日時:1999年10月18日 8:00~10:00
場所:帝国ホテル 竹の間
【第一部】 <基調報告>
行天座長
おはようございます。お忙しいところをお集まりいただきまして、毎度のことながら大変ありがとうございます。お食事がまだの方は、どうぞゆっくりお続けください。
ご案内のとおり、本日第6回目になりますが、本日は広島大学の小松さんから「インドネシア経済の現状」、それから、青山学院の深川さんから「韓国・構造調整の持続とその展望」というテーマでお話をいただきまして、その後ディスカッションということにしたいと思っております。毎回、皆さん一生懸命やるんですけれども、時間が足りなくなって、皆様に非常に迷惑をおかけしておりますので、おふたりのお話は間を置かないで続けてやっていただいて、その後で一緒に、ご両者のお話を含めて、ディスカッションという形にさせていただきたいと思います。
それでは早速なんですけれども、よろしゅうございますか。では、小松さん、よろしくお願いいたします。
基調報告
小松特別委員「インドネシア経済の現状」ご紹介にあずかりました、広島大学の小松でございます。きょうは「インドネシア経済の現状」ということで、20分ぐらいでやらせていただきます。
インドネシアというのは、まさに混乱の中にありまして、話をしなければいけないテーマというのはいろいろあると思いますけれども、とりあえずは、あまり細かい経済の議論をせずに、大ざっぱな枠組みと、私の問題意識などをお話しして、私の後にチャーミングな深川先生がおもしろいお話をなさると思いますので、バトンタッチをしたいと思います。
ご案内のように、インドネシア経済は大混乱に陥っておりまして、危機の直前、1997年の1月、2月ぐらいまでは、私は頻繁にインドネシアに行っておりまして、いろいろと仕事をさせていただいていたものですから、あのときには、まさかこんなことになるとは思わなかったというのが率直な感じでございます。
インドネシアの経済というのはこれまでも、スハルト政権になったのは正式には68年ですかね、65年にいわゆるスカルノ共産革命がそこで失敗をして、そしてスハルトが政権を継ぐことになったわけですが、その後も何回かにわたって、すぐここで思い出すだけでも、75年のプルタミナ石油公社の危機、82年の大幅切り下げ、それから1986年の大幅切り下げというように、繰り返して国際収支危機が起こっているわけです。それは多分ブームと、例えば75年であれば石油ブームと、その結果生じた大量の資金の使い道、ミス・ユーズというんですかね、それの失敗によって生じた問題。多分ブームの時期には、後で申します経済閣僚たちの力が弱まり、危機の時期になって、彼らはそこで何とか経済を立て直すと、危機は経済閣僚にとってゴールデン・オポチュニティだと。こういう繰り返しを75年、そして第2次石油危機の後の82年、それから80年代半ばの86年、これは石油価格が大幅に下落しております。そして91年にもう一遍大きな、時の大蔵大臣のスマーリー・ショックという危機があるのですが、80年代後半から90年代の初めにかけて、急激に流入してきた資金をうまく管理することができずに、今回のような危機になったというふうに思います。
ただ、もう一方で、そういったサイクルの、もっと大きなサイクルの中で、今回問題が起きているように思います。それは、ある意味でスハルトの時代の終焉であり、もう少しあれすれば、開発独裁型の経済運営の社会の終焉。その後、一体どういうふうな体制になっていくのか。過去の状況を知っている人たちは、まさかスカルノ時代に逆戻りするのではないだろうなと。スカルノ時代というのは大混乱であって、もっと大きな利権と、もっと大きな経済的な混乱、カオスといったような状況があったわけで、そうならないことを願っているということだと思います。
今回の選挙の状況を振り返ってみますと、多分インドネシアの人たちは、スハルト政権に対してノーという返事をしたのであり、同時にその後継であるハビビさんの政権に対しても、多分ノーという評価をしたのではないかというふうに私は思うわけです。
もう一方で、スカルノの娘のメガワティさん、それからグスドゥールという、もう1 人の大統領候補で、イスラムの指導者ですけれども、彼らがこれからどういう経済運営、政策運営をしていくかということに関しては、必ずしも明確ではない。多分メガワティ、グスドゥール、またはアミン・ライスというような人たちが次の政権を担った場合には、当然コア・ミッションになるであろうし、これまでの経済政策運営を担ってきた、ある意味でのテクノクラシーというものが、きちんと継承できるかどうかということに対して、大きな疑問がある。
したがって、ハビビさんが続投する場合、今ハビビ、ウィラントといって、軍の総司令官が副大統領候補に挙げられていますけれども、その場合には多分、社会的にそれを受け入れられないという人たちが反抗する可能性があり、そしてもう一方で、メガワティ、グスドゥール、アミン・ライスという新しいグループが出てきた場合には、具体的な経済政策をどうやって運営するかという意味での大きなクエスション・マークがある。いずれになっても、しばらくの間、混乱は続くのではないかというふうに思います。
あまり悲観的になってはいけないので申し上げておきますと、ほかの東南アジアの諸国もそうであるように、インドネシアも成長のポテンシャルというのは持っておりますので、それは最後に申し上げたいと思っておりますけれども、新しい状況のもとで、インドネシアの人たちが何を望むかということにかかっているんですけれども、彼らは現在リフォームだといっており、それは多分、デモクラティックな社会とリベラライズした経済を意味しているんだと思いますし、もう1 つ彼らは、コラプション、コルージョン、ネポティズムというインドネシア語のイニシャルをとって、KKNの排除といっておりますけれども、これももし実現できるならば、新しい経済運営ができるのではないかというふうに思っております。したがって、どこかで政治的なきっかけをつかめば、現在の危機をそんなに長時間かからずに乗り越えることができると思う一方で、このまま手をこまねいていれば、ロスト・ディケード、10年という単位で成長の部分というものが失われてしまうという危険性を感じるということです。
早速、本題といいますか、レジュメに書いてあることに入っていきたいんですが、最初にちょっとインドネシアの政策運営の基本構造を確認しておきたいと思います。スハルト体制というのは、大変バランスのとれた安定した政権で、それは軍とテクノクラート、経済閣僚・官僚といいますか、それとテクノロジスト、これは今のハビビさんたちを中心とする技術屋さんの部分と、そしてその背景にスハルト・ファミリーと政商が支えている、こういう形の構造になっております。軍は、国会議員にも自動的にポストを持っておりますし、国営企業にも銀行にも、それから大使ポストもごく最近まで、そういったところはほとんど軍が押さえていた、もちろん国内の警察機構、情報機構は軍が持っている、こういう体制です。
テクノクラートと呼ばれる人たちというのは、いわゆるバークレー・マフィアとも言われる人たちで、アメリカのUCバークレー、ユニバーシティ・オブ・カリフォルニア・バークレーでPh.Dをとった連中ですけど、彼らがスカルノ時代に追放されたということで、アメリカで勉強して帰ってきて経済学者になる。これが1つの経済政策を担う強力なグループで、60年代後半から、今でもそのグループは存在している。そのボスであるブジョヨン、今の経済顧問、それからアリバールダ経済顧問というのは、相変わらず大蔵省の大臣室の隣に顧問室を持って、実際に政策のコーディネーションをやっているというのが、もう1つの大きな柱です。したがって、だれが経済政策を今後運営していくのかというのは、非常に大きな問題だと思います。テクノロジストというのはハビビさんのグループで、この人たちというのは、大規模な工業戦略、重化学工業化を進めることで、国民に夢と希望を与え続けてきた。ごく最近まで、ハビビさんの人気というのは絶大なものだったわけです。
80年代までは、その括弧の中のファミリーですとか、その次にある華僑、政商と呼ばれる人たちは、表舞台に出てきませんでした。ところが、93年の第6次スハルト政権からは、経済テクノクラートが現職閣僚から大幅に追いやられて、それと同時に、テクノロジスト、そしてファミリー、政商と言われる人たちが表舞台に出てくるということになりました。最後の98年の政権では、ファミリーの、大統領の娘であるとか、ボブ・ハッサンという、森林王ですけれども、スハルトの非常に親しい友人、こういう人たちが閣僚になって出てくるということになりました。
ただ、華僑というのは政商であると同時に、インドネシア経済全体、民間経済の大半を握っているといっていいと思います。それは、非常に大きな利権を握っていると同時に経済を運営しており、その経済的な力のゆえに、多分1965年代になって、共産革命の背景に中国共産党がいたという、そういう歴史的な背景の中で、彼らは常にインドネシアの中で標的になってきた。社会的な不満が大きくなると、彼らが暴動の標的になると、こういうことが起きます。
したがって、テクノクラートは、これまでもちろんそういう目に見える利権に対して闘うと同時に、合理的な経済政策を進めるためには、利権は必ずしも目に見える形で、汚職という形で出てくるわけではなくて、保護であるとか、優遇政策であるとか、そういう形で出てくるわけで、そういったある意味での輸入代替型政策に対して、輸出志向型の政策、または自由化政策というものを掲げて、そして利権と闘っているという構図でございました。
この危機が起こり、ある意味で、その背景にあったことは、テクノクラートとのバランス、93年からテクノクラートが勢力を失っていったと申し上げましたけれども、そういう経済の引き締めを常に図ろうとするテクノクラート・グループの勢力の低下、それからもちろん東南アジアに対する投資ブーム、こういったものが背景にあって、成功のゆえに、多分投資家の目からは、インドネシアに投資するというリスクが小さくなっていった結果、内外の金利裁定がかなり激しくそこで有効にきくようになってきた。それで、国内の金融市場が必ずしも効率的になっていない、そのために国内の金利が高どまりになって、金利裁定がきかない、したがって外から資金が継続的に流入して、債務の急激な増大を生んだと、こういうふうに思うんです。
私は今回の危機を特徴づけるとすれば、コンフィデンスの危機であり、それがさらに政治危機、社会危機を迎えたと、こういうふうに思います。先ほども申し上げましたけれども、それはスハルト体制、開発独裁という体制の終焉であるのだろうと。経済自由化政策は、政治の自由化政策というものを、ある意味で必然的にもたらす。
それから現状ですと、安定を回復するためには、多分軍が出てくれば、当面の安定は回復できるんです。華僑たちは、そういう意味では軍が出てきて、大統領になってくれるほうが安心だと思っているに違いない。そうすれば裏でお金を払えば、彼らのセキュリティが確保されるわけですから。しかし多分そういうことにはならない。それは、時代の流れからいって受け入れられないからだと思います。
もう1つは、クローニーイズムの終焉ということなんですが、これは皆さんそう言っているんですが、スハルト・ファミリーに対するクローニーの終焉ということははっきりしておりますが、それ以外のみずからのクローニーに関しては、汚職というよりもう少し共同体型といったほうがいいかもしれません、相互扶助の社会と。それがもうちょっと極端になれば、テーブルの下でそでの下を貰い、それを子分たちにばらまくという社会システムは変わっていない。それを否定しているかどうかは、大きなクエスション・マークだと思います。
後で申し上げるように、KKNという標語を、国民がもしそれを望んでいるんだとしたら、それを今大きく変えるという最大のチャンスだというふうに思うのです。ただ残念ながら、スハルトの汚職追及であるとか、おとといでしたでしょうか、トミーというスハルトの三男も無罪になりまして、どうもその辺は、必ずしもスハルト時代の汚職にも決着がついてないという状況にあるように思います。
コンフィデンスの崩壊の結果、そこに書いてあるように、資本の逃避、銀行の取りつけ、華僑の逃避というようなことが起こったわけです。その過程でルピアは、1ドルが2,400ルピアから、一番下落したときで1万6,000ルピアと、6倍以上、6分の1以上になる。現在は、多分8,500ぐらいまで戻っていると思いますが、また最近のティモールの状況等々でルピアが弱くなっている。ただ、こういうふうに2,400から1万6,000とならなくても、5,000ぐらいになったときに、既にコンフィデンスは完全に崩壊していたと思います。したがってそれは、1997年12月ぐらいに、1ドルが2,400ルピアから5,000ルピアぐらいまで下落しているんですが、その時点でもうかなりの程度、コンフィデンスの崩壊がはっきりし、政治の混乱が起き、華僑の、ゴーイング・コンサーンである企業を維持し続け、投資をして、お金を銀行に返済するというような、そういう通常の動きがとまったわけです。むしろそこからはお金を持ち出すと、今のうちに金を外に持ち出してやると、そういうことが起こったということです。
その結果、社会システムが崩壊してしまったというふうに思うんです。社会システムというのは、そこに書いてある、生産、流通、銀行、貿易、こういうところも全部崩壊してしまった。この部門を中心的に担っているのは華僑なんですね。華僑が逃げ出してしまうと、このメカニズムは回らなくなる。生産にしても、流通にしても、銀行も華僑のグループが多くの銀行を運営しているわけですから。貿易にしてもそうです。そうなってきますと、華僑が帰ってきて、華僑のコンフィデンスが戻ってきて、彼らがもう一遍経済を、彼らの企業を立て直そうとしない限りは、経済の再建というのはおぼつかないわけです。さらに言えば、民間債務交渉もずっとやっているんですけど、民間債務交渉の反対側に座っている人たちというのは、民間の借り入れなんですね、大手の企業、それは華僑です。したがって、華僑が自分たちの企業を再建しようとしない限りは、幾らいろいろなフレームワークをつくっても、なかなか交渉は決着しないのではないかというふうに思います。
したがってポイントは、幾つもあるんですけれども、その1つのポイントは、インターナショナル・インベスターズ、とりわけ華僑のコンフィデンスを取り戻すようなセキュリティを確保しなければいけないというふうに思います。
時間がもう来てしまいましたので、最後の展望のところに入りたいんですけれども、インドネシア政府、それからインターナショナル・ドナーズが、今までいろいろな支援を行ってきました。そして必要な政策を、いろいろと手を打ってきておりますけれども、しかしまだ経済が回り出すというところまではいっていない。その1つは、貿易決済の支援。これは、要するに貿易決済ができないような状況になっているわけです。当然、原材料を輸入しないと輸出企業も回りませんから、原材料を輸入しようとすると、当然LCを発行しなければいけないのですが、インドネシアの銀行が発行したLCというのを、今、日本の銀行はアクセプトしないような形になっています。それは、銀行がどうなるかわからない、銀行に対するリスクが大きすぎるから、これに尽きますね。
こういう状況の中で、ではここを何とかしようというので、ます第一にインドネシアの銀行は、今銀行のライアビリティーのすべてに、中央銀行、政府のブランケット・ギャランティがありますので、政府がそのリスクをカバーする。しかし、インドネシア政府のリスクもありますので、日本の銀行はそれもとれない。そうすると、そこを何か補完するメカニズムがないかということで、日本から貿易金融をつけようということになっているわけですが、しかし金融はついても、今度は末端で輸入者が銀行にリクエストを出して、LCをオープンにしてもらうわけですが、その輸入者の企業というのも、バランスシートを見たら真っ赤なんです、これはもう不良資産化してると。そこに今、LCが発行できますか、リスクがとれますか、とれないということで、これも回らないというのが現状です。したがって、いろいろなシステムは動いているんだけれども、なかなか経済が回らない。
それから銀行資本注入なんですが、銀行については、銀行部門の不良資産の大きさというのは、不良資産の中で、政府が資本注入をすると決めた金額が、GDPの50%を超える。当面は政府が国債を発行する形で資本注入をするので、そこの時点では、財政としては出てこないわけです。国債を発行して金利を払わなければいけませんから、金利払いが、仮にどんなに低く見積もっても10数%、12~13%だと思います。インドネシアの状況で考えれば、多分もっともっと高いと思いますが、仮に10とすると、GDPの50%の、国債を発行して金利払いをするわけですから、50%の10%が金利だと、5%というのが金利コストです。もしこれが20%だったら、年間10%の金利負担を払わなければいけない。今のインドネシアの財政収入は、GDPの11%なんです。総国内財政収入は11%であるとすると、5%を払うのももちろん大変ですけど、10%になったら、財政は崩壊になると思います。それが現状です。したがって、国際収支支援と巨額の財政支援をやっていかなければならないというふうに思います。
その前に、これまでのように、プロジェクトに援助するのではないんです、開発支出に援助するのではないんです。ある意味で、こういう経常支出に援助をするという必要が出てくるかもしれない。それに、果たして日本は踏み切れるのだろうか。日本というか、援助諸国は踏み切れるのだろうか。踏み切れるかどうか、そこは私はよくわからないんですが、踏み切れないとするとどうなるかというと、私の予想では、さらなる国債を発行して金利払いを賄うという最悪のシナリオになって、私はそれは避けるべきだと思います。
もう時間がありませんので、イシューになっている幾つかのことをだらだらと申し上げますと、対外債務については、政府に関しては現在パリ・クラブに、はっきりいっているかどうかは微妙なところなんですが、実質パリ・クラブだと私は理解しております。そこでリスケが行われている。日本についてはニュー・マネーで対応しているんですが、これはきちんと説明する必要があると思います。というのは、日本だけがリスケに応じてないとか、デット・リダクションの要請が出てくる可能性がありますので、そのときにどう対応するかという大変大きな問題なんですけれども、日本がそれをできないという対応ではなくて、インドネシアにとって何が一番望ましい、最も利益になる対応かという説明をしないと、今の国内の状況、大衆の反発、それは今ハビビ政権に向かい、スハルトに向かっているわけですけれども、その状況が一段落すると、今度は、こんなに苦しい中で、どうして対外的に債務を払い続けなければいけないんだという不満が出てくると思います。それは多分、一番大きなドナーである日本に向かってくるので、そこの説明というのは、インドネシアの立場からきちんとやってあげる必要があると。多分その結果、デット・リダクションはインドネシアにとっても望ましくない選択だという説明ができるのではないかと、私は思っておりますけれども、そこは今、大衆というのは大変エモーショナルになっている。ティモールの状況、レファレンダム(住民投票)の後の状況を見てもそうですし、そういう中で、非常に慎重な対応が要求されるのではないかと思います。
最後に、インドネシア人が何を望むかということと離れては、政策また支援はできないのだろうと思います。それは何だろうかと。それは、インドネシアの人が望んでいるのと反対の方向に進んでいる。例えば今フィスカル・ディセントラリゼーション、実際に法律でもたくさん通っています。中央銀行の独立という法律も通りました。これはもう自由化といいますか、今の政治の流れの中で、だれもとめられないんですが、例えばフィスカル・ディセントラリゼーションが起こって、もしそれが実行されたら、財政は大混乱になると思います。どうやって債務を返済するのか、どうやって収入と支出をバランスさせていくのか、そしてその実行をだれがやるのかというのは、地方政府には今のところ、そういう能力はないですね。
それから今度ニュー・セントラル・バンキング・アクトをつくって、中銀が独立しましたけれども、同時に手足を縛ることになりました。先ほど申し上げたように、銀行部門が機能していないときに、中央銀行のが何らかの形でそれをサポートする必要があると思いますが、それは大変やりにくくなったと思います。そういうことを考えたときに、インドネシア人が望むということと反対の方向に進めないんだけれども、インドネシア人が何を望んでいるかということを見きわめた上で、どういう方向に進むのかということを考えるべきだ。
それは、先ほど最初に申し上げましたけれども、1 つは、リフォーマーシーとインドネシアでいっている改革ですね。8月末にも、与党それから野党を含めていろいろな方々とお会いしたんですけれども、リフォーマーシーの内容は必ずしも明確ではありませんでした。ただ私が理解するのは、最初に申し上げたように、デモクラティックな政治とリベラライズされた経済だと思います。今もってすごい利権の中にあって、規制でがんじがらめになっている社会であるというのが、急速な自由化が起こった後のインドネシアの状況なんですね。私はやはり、さらに経済面では自由化を続ける、利権を排除する、これが必要だというふうに思います。
それから、セキュリティについては、先ほど申し上げました、KKNについても先ほど申し上げたとおりです。その中で、経済運営については、多分引き続き、経済テクノクラート・グループが運営し続けることが、私は重要だと。だれが政策運営をするかというと、彼らだと思います。したがって、そこにも目配りをしたおつき合いというのが必要だと思います。行天座長
どうもありがとうございました。それでは引き続いて、深川さんから、今度は韓国のほうのお話を伺いたいと思います。よろしくお願いします。
基調報告
深川特別委員「韓国・構造調整の持続とその展望」時間もないので、早速始めさせていただきます。韓国の今の状況は、マクロ的な様相は割によくて、それだけ見ると、まさにV字型回復に近い状況、しかしミクロ的にはかなり混乱もありまして、さらに来年の4月に総選挙をやりますので、この選挙に勝ちませんと、金大中政権というのは、一気にレイム・ダックになってしまうので、経済的によりも政治的な不安というのが影を落としているという状況、一言で言えば、そういうことだと思います。
経済成長率だけ見ますと、第2四半期が、去年の統計で98年が-5.1%の成長でしたけれども、ことしの第1四半期からプラスに転じまして、第2四半期が9.8、第3四半期が11%と、プラスに転じています。まさにV字型回復に近い回復の状況になっております。
急速によくなった原因というのはいろいろあるんですけれども、1つは、98年の下半期から、割に為替は早く安定しましたので、IMFと交渉して金利を割に早く下げさせてもらったので、当初、金利が非常に高かったときに、一斉に銀行等に富裕層のお金が戻ってきていましたので、これがほとんど6カ月とか3カ月の定期に入っていたことが多かったので、これを解約しまして、このお金が順調に証券のほうに回って、もともとが負債が多い企業の問題点がすごく多かったので、金利が下がれば企業業績がよくなるのは決まっているわけで、これで実際によくなったんです。お金が移動すると同時に、企業の業績がそれを受けて上向くというような形で、それで株価が上がってくるという中で、経済は明るさを取り戻してきたわけです。
全面額面割れで、指数でいうと、大体300を切るところなんですけれども、これがことしの8月には1,000を超えてまして、実質4倍近い株価の上げを見たわけなんです。企業のほうも、株価が上がりましたし、やはり社債市場が東南アジアに比べてかなりの規模でございましたので、証券市場がよくなってきますと社債を出すことができて、これで資金調達、信用収縮の問題からやや救われたなというのがあったと思います。
その富裕層のお金が順調に証券市場等に回り始めると同時に、やはり株でもうかり、金利でもうかり、そのお金をどんどん使うようになりましたので、第2四半期からは、個人消費の力強い回復、力強すぎるというべきだと思いますが、大変な回復を示しているわけです。内需部門の回復と、在庫調整が98年の1年間でほぼ完全に終わっていましたので、全般的に民間消費に非常に動きがあった。ここへ来て、ここ数カ月は、特に円高の進行というのがまた加わりましたので、輸出入が非常に伸びが大きくなってきております。
ほかの東南アジアとか中国と競争している産業構造ではありませんで、特に半導体とか液晶に依存している部分がものすごく大きく、DRAM半導体と液晶だけで輸出の5分の1をいってしまうような経済ですから、市況価格も大変好調でしたし、円高も進行しましたので、ここはまさに絶好調の様相を呈して、自動車のほうも、従来、過剰設備投資があったんですけれども、円高のおかげで新興国への輸出が伸びておりまして、危機の発端になった起亜自動車とかも無事に法定管理から外れる様相になってきていまして、全般に消費の回復と実物部門の回復というのも出てきております。
それに伴って企業の設備投資も、伸び率だけでいくと30%近いものになってきていますので、失業率も下げどまって、一時は8.6%といった失業率が、5.6とか5.5とかまで落ちてきている。
ただ当然のことながら、こうやってよくなってきますと、国際収支のほうは、まだ依然として黒字基調は続いていますけれども、黒字幅そのものは縮小している。今、輸出も伸びてはいますけれども、去年に比べればかなり減っていますし、逆に輸入が増えてきていて、経常収支のベースで見ても、去年が大体400億ドルぐらいの黒字収支でしたけれども、ことしはもう200億ドルぐらいに減ってしまって、来年は何とか黒字を維持できるかどうかというのが現状で、再来年になると、また赤字になる可能性が大きいと思います。
そういうあたりが外貨のほうに回ってますので、今は外貨準備が大体650億ドルぐらいありますので、これでしたら、格付けも投資適格に上がっておりますので、国内の政情は問題ないですし、全体的に見れば外貨危機にはなりにくい、通貨危機にはなりにくいということだと思います。
ここまで早く回復できた要素はいろいろあると思うんですけれども、1つは、流動性上の問題というのがすごく大きかったので、格付が上がっていきますと、しかも円高がきいたということもあって、ほかの東南アジアに比べてピッチが速い。しかも、金融機関の抱えている不良債権も、韓国は、かつての日本と同じで、外貨を借りてくるのに、実需原資が大変厳しく適用されておりましたので、借りてきた外貨、金利の安いお金を、不動産とかに回すことが実質できなかったんです。したがって、タイやインドネシアのように、そっちのバブル的な部分のお金は回っていませんで、それゆえに製造業の過剰設備投資が発生してしまったわけなんですけれども、その製造業の部分というのは、外資に行くなり、あるいは円高で輸出が戻ってきますと、工場は回るわけで、そういう意味では、規制をしていたことが幸いしたという側面はあったと思います。
それからもう1つは、資本規制が割合厳しくて、インドネシアに見られるような大規模な資本投機というのは、韓国は起きずに済んだということです。今までだって、財閥がいろいろやっていた、資本投機的なビヘービアというのはよく摘発されますけれども、韓国全体から見ると、それほど大きな規模には達していなかったようです。しかも、どうせ財閥の事業のベースというのは韓国でしかなくて、華僑とは違いますので、やっぱりまたすぐに韓国に戻るよと言ってますので、全体としてそういうことが大きかったかなという感じがいたします。
そんなことでマクロはいいんですけれども、まだ細かく見ますといろいろ問題が残っていまして、とりあえずのところは、金融部門の再建というか、不良債権の処理とかは、韓国は割に早くやってきたと思います。それは、やれるのが当たり前なんですね。どうしてかといいますと、お上がおさめる金融というので、官治金融と言われているほど、全て政府が取り仕切ってきた。実質、頭取人事あたりまですべて政府が決めていたわけで、大きな財閥の人事にも全部政府が干渉していたわけですから、逆に言えば、政府がこことここはつぶして合併と決めれば、一番いい合併ができるわけです。
したがって、その部分というのは割に早く進めていますし、あと、例えば日本のように、不動産の所有構造が非常に複雑で、証券化がなかなか進まないといったようなことがなくて、割と単純な構造になっていたものですから、不良債権の処理も証券化をどんどんやっている最中で、ひたすら処理をしているということだと思います。
金融部門は、まあまあ進んでいるんですけれども、金融部門についても、今まで一応輪郭がはっきりしたというのは、一番最初に危機になった、ノンバンク系の総合金融会社、これはタイの、ファイナンス・カンパニーに似たような組織ですね。こことマネー・センター・バンクについては、ほぼ作業は完了して、マネー・センター・バンクも第一銀行にようやく売れましたし、ソウル銀行は結局売れませんでした。残りも、合併とかをさせつつやっていて、外資もコメルツ銀行ですとかゴールドマンサックスですとか入っていますから、ここの目鼻はついていると思います。しかし、その他保険、リース、投資信託、この辺のところはまだ完全にというか、ようやく始まったばかりでして、そこに大宇の破綻というショックが大変大きいものですから、今非常に信用収縮が進んでいまして、かなり困った状況になっています。
財閥の部分に関しては、5原則、プラスアルファ3というのが一応原則になっていまして、何が原則かというと、当初政権交代したとき、金大中さんと財界で合意をしました結果、とにかく透明化に向けた努力と。それが2つあって、1つが、財閥ですから、非常に多角的な事業をやっておりましたので、連結ベースでの財務諸表を作成し、公開するということ。それから、全く一族、オーナー会社でガバナンス構造がなかったものですから、例えば社外重役の制度を入れるとか、財務監査の内容を非常に厳しくするですとか、あるいは少額株主の権限を強化するとかいったような、いろんなやり方ので強化というのをやろうという制度が進んでおります。この2つについては、さすがに財閥も反対はしておりませんで、一応粛々と進んでいるということです。
しかし、残り3つの原則にはいろいろ問題がありまして、1つは、財閥の中にも、系列企業間の債務保証というのがあって、A社は信用力がないから、A社が借りるときにA社より大きい会社が保証するという形で、企業の中でレバレッジをきかせてきたわけです。しかし、そうやっているということは、要するに大きい会社がつぶれてしまうと、一気にグループ全体がだめになってしまって、今度のような危機になったということで、これをとにかく新規保証は一切禁止、それから時限つきで債務保証というのも100%解消することが決まってまして、2001年の3月までに完全に解消するということと、それからもう1つの原則は、やたら意味のない多角化をしてきたのではないかということで、特に主要5財閥の場合は、韓国の主要産業をほぼ握っておりますし、例えば自動車ですとか、半導体ですとか、石油化学ですとか、そういう基幹産業については、過剰設備投資があったので、事業を相互に交換して、電子・電機会社は電子・電機グループだけになり、自動車グループは自動車グループだけになって、競争力を強化しようというのが4番目の原則。そして最後に、全体として、負債比率をそうやりながら下げていくということが、一応5原則で合意されています。
しかし、系列企業間の債務保証というのは、企業の資金調達面で大きな役割を果たしていますので、これをいきなりなくすということは、やはりかなり難しいんですね。そこで政府は何を考えたかというと、公正取引法の規定で、相互出資規制というのをやってまして、他グループに対する出資に限界があったんですけれども、これを青天井にしたんです。その結果、債務保証はできないんで、相互出資の形で、いいところが危ないところの株を持つという形になってしまって、結局のところ株の持ち合いというのはさらに進んで、どこかが危ないと全部おかしくなってしまうという構造というのは、全然よくなっていないといったような問題があります。
それから、事業の多角化を統一するという話も、ビッグディールと称していろいろとやろうとしたんですけれども、さんざんかねや太鼓で宣伝したんですが、実は成功したのは、半導体と精油しかないんですね。例えば自動車等も、非常に大きな負債を抱えて行き詰まってしまった三星自動車を大宇が引き取って、大宇が電子部分を三星にあげる、このビッグディールで解決しようと思っていたんですが、三星が大宇の家電部分の引き取りを拒否し、三星自動車は自分で処理すると言ってしまったために瓦解したんです。このビッグディールが成立すれば、大宇は政府が支援するであろうと思っていた投資家たちが、一斉にお金を引き上げたことから、大宇グループの危機というのが始まったわけです。したがって、そのビッグディールをめぐる今度の混乱が尾を引いているということ。そんなことなので、5原則の中で透明化原則ですとか、財務諸表を入れるとかいう話はうまくいっているんですけれども、産業調整部門、それから過剰設備投資の処理の部分というのは、まだ終わっていないということですね。
しかも財界の側には、どうしてこんなに細かく、手とり足とりということで政府が口を出してくるのかという反発が相当強くありましたし、実際にビッグディールの枠組みというのも、かなり英米系のコンサルタントですとかがついて考えたんだと思うんですけれども、当然のことながら、非常に財務に偏重した考え方として、しかも彼らはもちろん財務がよくなるという目的のためにプランを出してくるんですけれども、そこに政治の、雇用をもたせたいとか、あるいは韓国全体の産業はもたせたいとかいう、また違う思惑というのが入ってきて、全体としては、一体何を目指しているのかがよくわからないビッグディールというのが出てきてしまったということです。
したがって半導体は、LGグループが持ってた半導体を、例えば現代が引き受けるというような形で合併しましたし、しかもその市況がたまたま神風のように調子がいいので、今は非常に成功しているんですけれども、ほかの部分については、例えば4兆ウォン近い債務を抱えています三星自動車とかは、全くだれが引き受けるかも、今となっては混沌としているわけなんです。もちろん三星グループは、今は半導体がお金はありますから、自分のところに自動車を持っていたいということで、非常に財界と政府の間の綱引きというのは激しいものがあると思います。
そこで政府がこの8月に、我々にとっては終戦記念日ですけど、8月15日は韓国にとっては光復節で、大体重要な政策を決めるんですけれども、新財閥3原則というのを発表してまして、財閥は、結局今はお金が回るようになりましたので、外国に対して、これまであった規制が全部取り払われて自由化された金融部門に、自分たちも進出したい。つまり、マネー・センター・バンクを自分の傘下に置きたいと。どうして外人はいいのに、国内企業の私たちだけが差別されて、金融機関を持てないのかというのが出てきまして、しかし政府の側は、ガバナンスのしっかりしてないところにマネー・センター・バンクを持たせれば、またぞろ不透明なところにお金をつぎ込んで、また税金でというわけにはもういかないというのがあって、財閥の金融進出も非常に厳しく規制する。
それから、韓国語で循環出資といっていますけれども、要するにグループの中で、株の持ち合いというのがすごく進んできているんですけれども、これもかなり厳しい制限を課して、これ以上進まないようにする。それからさらに、これは一種の人気取り政策なんですが、オーナーたちの巨額な相続税脱税を摘発していくということです。これは、やはりオーナー会社である以上、企業的な意味でのガバナンス・ストラクチャーは難しいので、なるべく所有と経営を分離しろという政策として、政権側はやっています。
しかしこの3原則は、当初の5原則に比べても、今、オーナー経営者たちが考えていることは、ひたすら経営権の防衛ですので、そこに政府が踏み込んでくるということに対する、しかも自分たちが勝手知った慶尚道系の政権ではなくて、敵対する全羅道系の人たちが踏み込んでくるということに対する生理的な反発というのは大変なものがあって、マクロが混乱している大きな要因になっているわけです。
したがって、今後どうなるかといいますと、1つは大宇の解体作業というのがうまくできませんと、また金融市場は相当不安になる可能性というのは大きいわけです。大宇グループは、大宇経済研究所という、韓国の研究所ではかなり、日本でいうと野村総研みたいなものなんですが、ここがキーになるんですけれども、ここがみずから、自分のグループが破綻した場合、金融部門にどれだけ負担が出てくるかというのを試算しているんですけれども、それによると、相当負担は大きくて、今韓国の不良債権分類は大変強化されてきているんですけれども、その新しい不良債権分類でいって、今はまだ大丈夫と言われているものが、もし本当にだめだった場合は一体どうなるのかというと、例えば大宇系の今の全部の銀行の与信の不良資産化というのは、40%で済むとあるんですね。それでも金融機関の不良債権は103兆7,000億ウォンで、これを大体10で割ると円ですので、103兆が10.3兆円ぐらいです。もし、さらに焦げつきが広がった場合には、136兆ウォンです。いずれにしても、大変な金額が焦げつく可能性があるということです。
この大宇グループで、もし10兆円までいかなかったとしても、かなりの不良債権が出ることは確実ですし、それからほかのビッグディールとかについても、三星や現代の石油化学部門だけで、5兆ウォンぐらいの債務があって、これをどうするかというのは状況がまだちょっとわからないので、債務があるところにはやはり要注意ですね。
したがって、一部が、マクロがよくなり、実物部門もよくなっているので、確かに起亜自動車のように、不良債権ということにならないで、どうやら済んでくれそうだという明るいニュースもありますけれども、一部はまだ終わっていない。したがって、金融機関は公的支援をとり続けていかざるを得ないんですけれども、来年、例えば30兆ウォンか40兆ウォンをということになったときに、既にもう90兆ウォン近く突っ込んでますから、130兆から140兆ウォンの資金投入になってしまうわけです。
でも幸いにして、赤字国債は一度も出したことはありませんで、今年から出していくような状況ですから、日本よりはいいかもしれませんが、しかし150兆も出してしまいますと、財政的な負担というのはかなり重いものになってくると思います。特に韓国は、資本取引規制が従来厳しかったのを、もう本当に香港、シンガポール並みに今は与えていますので、今度金融市場が不安になり、国内の情勢が、北朝鮮の問題というのもある非常に特殊な国ですので、不安になったときの資本取引がもし起きてしまった場合には、考えられないことが起きることもないとは言えない。今のところはいいんですけれども、これからそういう可能性というのは出てくるということです。
それから、最後に内政的に、やはりいろいろスウィングがありまして、金大中政権、韓国というのは非常に時代主義の伝統を持っていますから、どこかの大きな国、かつては日本でした。日本のパフォーマンスが悪くなって、同じような金融危機に陥って、もう日本の時代は終わり、うちはもう今日からアングロアメリカン式でという大改革を、政権交代当初はみんな吹聴したわけですけれども、やはり時間がたつにつれて非常に日本に近くなってきていて、1つは、そう簡単に人を切れない、整理改革を導入したからといって、やはり人を切りにくいという構造があって、しかも政権基盤が割に弱いので、失業が2けたになるのはどうしても避けなければいけないというのがあって、結局人は切れないということになるわけです。しかも外貨はあるので、人に口出しされたくないという考えが頭をもたげてきてまして、IMFの資金も9月に134億ドルの緊急資金を全部返してしまいましたし、あとはゆっくりうちのペースでやらせてもらいますという様相に、どうも今はなってきて、一度極端なアングロアメリカン方式を志向したけれども、今はだんだん韓国式人本主義みたいのが、強い労組とともに、労組は今、IMF高金利緊縮政策というのは間違いだと訴えているらしいんですが、そういう状況が出てきております。それで、やや混沌としている。
それから、国内全般に、結局これからどうするんだという、非常に不安な要素があるんですね。この前、大前研一氏の論文が非常に韓国に衝撃を与えた話というのがあって、要するに韓国はまた破綻して中南米のようになって、政権はポピュリストに走り、いい企業は全部アメリカの資本に買われ、売りさばかれて、国営企業も全部とられて、もともと技術力はなくて、サポーティング・インダストリーもないから、メーンの産業は全部競争に敗れて転げ落ちるという、非常に悲惨なシナリオを描かれたのが、やっぱり韓国にすごい衝撃を与えてた。そんなに自信を持っているわけではないんです。
日本に関して言えば、金大中政権の周辺は、金鐘泌氏にしても朴泰俊さんにしても、やはり日本をよく知っているおじいさんたちのグループですので、対日感情だけは画期的に改善しています。どちらかというと、アングロアメリカンのほうにすごく振れたんですけれども、考えてみたらやはり間髪を入れずにお金を出してくれたのは日本で、考えてみたらそんなに悪い人たちではないと、やっぱりこの人たちとやっていくのがいいのではないかというので、今また頭をもたげて、非常にふらふら揺れ動いているという感じだと思います。
日本が気をつけなきゃいけないのは、この政権が磐石であるかどうかというのはわからないですし、次の政権になるときに、またバック・フラッシュというのがあるわけで、常に前任者否定の政権交代をする人たちですので、そのときに前の政権と一緒くたに、また日本が悪いというふうにみなされるのはかなわないので、バランスをとりながら、今、日韓自由貿易協定をやっていますけれども、割とリーズナブルなつき合い方、OECDに入っている国ですから、そんなに手とり足とりやってやる必要はないんですけれども、困ったときに助けてもらったという印象を、次の政権になっても持ち続けてもらえるような枠組み、特に前回、経団連が行って、先週ですか、お互いに過剰設備投資を回避して、もうちょっと不毛な展開はやめましょうという話が行われていたようですけれども、ある種の日韓産業協力の再構築みたいなことが、やはり一番実質的な政策として必要ではないかと思います。
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