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【第二部】 <自由討議>
行天座長
どうも有り難うございました。
今、お三方からそれぞれ非常に有益なお話を伺いました。80年代から急速に進んで参りましたグローバリゼーション、特に最近になりまして、これが情報技術の発展、それを背景に致しました特に金融面でのグローバリゼーションの進展というのは大変顕著になって参りまして、そういう流れに対して、アジアの金融危機等を契機として、改めてこのグローバリゼーションに対する再評価の必要ということに関心が集まってきているわけであります。この問題は、ある意味では、新しくて古い問題でもございます。新しくかつ古いという意味は、やはり市場経済というものが、一体どういう形で、先程鷲尾委員が言っておられたような社会全体としての公正な発展というものを保証できるような形になるのかという、これはまさに古い問題でございますけれども、最近の状況というのは、特にそれが非常に様々な具体的な形で現れておるということだろうと思います。
日本の立場から見ますと、やはりこの問題というのは、非常にある意味では、複雑な要素を持っている。というのは、今、長谷川委員のお話にもございましたけれども、アジアというものを考えますと、アジアという地域の世界における役割のような新しい問題が一方にございます。それからその中で、日本と他のアジア諸国との関係という問題があるわけです。日本は少なくともアジアにおいては、資本においても、技術においても、先進国としての立場に立っておるわけでございます。しかしながらまた同時に日本自身も、このグローバリゼーションに対する日本の社会としてのセーフティネットの問題というものも別途あるわけでございます。
そこでまあ非常にたくさんの問題が提起されたと思うのでありますけども、特にこの研究会の観点から申しますと、これから国際的に貿易、サービス、金融等々の自由化の基本的な流れというものはおそらく変わらないだろうと思います。その中で今、私が若干申し上げましたような色々な観点から、一体特に日本として、アジアの状況を踏まえ、かつまた日本自身の状況も踏まえた上で、このグローバリゼーションとその中でのセーフティネットの問題、その中には当然、雇用が一番大きな問題でありますけれども、それ以外の問題も入って参ります。というようなことをどう考えたらいいか、ということを中心にしてご議論を頂いたらいかがかと思っております。
先程、浦田委員のコメントがございましたけれども、世銀のウォルフェンソン総裁をはじめとして、率直に言って、先進国側あるいは国際機関の側でもバランスのとれた総合的な開発の理念に対する関心が高まっております。ただ、その問題を私もこの間ワシントンで彼と会って話をしたのですけれども、総合的な発展といった場合に、それぞれの国によって何がバランスのとれた姿であるかということについての価値の基準といったようなものは決して同じではないわけでございます。ですからあんまり単純化してしまうと、価値の基準そのものもグローバリゼーションになってしまうという危険が、私はあるのだろうと思います。ですからそういうものも含めて考えなければならない。特に私はアジアについてはその問題は、おそらく西半球とかヨーロッパと比べても、より大きな関心を持たなければならない話だろうと思うのでございます。
どなたからでも、ご質問なり、コメントをお願いしたいと思いますが。山澤委員
先ず鷲尾委員への質問ですが、一番はじめがWTOへの労働の問題があって、クローズアップされてきたことをお話になられた。おっしゃる通りで、今度初めてWTOで、国際的な貿易・投資の自由化の中で労働基準の問題がクローズアップされてきたと思います。ただ、それについて、私どもWTOなどをフォローしているものにとっては、ほとんどの声が欧米から聞こえてきましてね、日本から、日本がどういうスタンスを取っているかがわからない。日本はおそらくは、発展途上国と先進国の仲持ちをするという立場を取っていると思いますが、それはこの労働基準に関してはなかなか難しい側面がある。是非、鷲尾委員のところからもっと大きな声を出して頂いて、私たちに説明をして下さるようお願いしたいと思います。
その延長で、WTOのなかにILOを持ち込むと、こう言われましたけれども、それはいかがなものか。WTOで取り扱う労働基準の問題は、ごく労働の中の一部分の問題でして、鷲尾委員が言われたような、公正な分配、パートナーシップの主張は、むしろWTOから離れて、もっと大がかりに進めていかなければいけないものであって、ILOを盛り立てる方が、そしてILOとWTOとの連携を強くしていく方が正しいのではないか。私、良く知らないのですが、ILOは国際労働運動をバックにして、その代弁というふうなかたちを取っているのですか。それとももう少し中立的なものになるのですか。
それとの関連でちょっと冗談みたいな質問ですが、今、WTOの事務局長選のスパチャイ・ムーア論争の裏には労働問題があるわけですね。ムーアは労働党の元の党首だし、AFL/CIOの支持を取り付けたのでアメリカが支援して、スパチャイ優位がひっくり返された。これについてボンで行われた議論などで、何かムーア擁立などという声が出たんでしょうか。その辺のところを教えて頂ければありがたいと思います。
長谷川さんの方ですが、主として説明がアセアンについての説明だったような気がするのですけど、中国の市場はどうなのでしょう。これはかなり事情が違ってきます。しかしもうがんじがらめの保護と規制で成っている点ではアセアン以上だろうと思うのです。これについて中国の市場をどうご覧になっているか。
それから日本政府に対する提言が最後にございましたが、ここで言っておられることは金融を中心とした支援だと断っておられるわけですけれども、一番の解決方法は日本企業がアジアの企業へM&Aをかけて、自分で乗り込んでいってリスク負担をし、自分で近代化をやっていく方が直接的だと思うのですが。もちろん一部やってられると思いますが。そうではなくてこういう間接的なリクエストを出される意味はどうなのか。その辺のことを伺いたい。鷲尾委員
先ず基本的には山澤委員がおっしゃったことと全体について私の意見も変わらないのですが、日本の立場ですが、とりわけ2月にワシントンで開かれました雇用サミットの中で、WTOとILOの共同作業というのがアメリカの労働長官を中心にして提案されたのです。それで日本の労働大臣がそれはダメだと言ってがんばったのですね。それで共同作業ではなくて事務局の連携というところへトーンダウンしてしまった。私どもも中核的労働基準がWTO本来の議論の対象であるとは思っておりません。当然、ILOがやるべきことでありますが、 ILOはどうしても経済的な措置というのはなかなかできにくいメカニズムになっておりますので、WTOで罰則をしろというのもまた極端な話ですが、しかしWTOの中でILOで議論しているような問題については持ち込んで議論の対象にはしたい。しかしだからといってこれを守らないから罰則をして、規制をかけるというようなことまでWTOに議論しなさいということを国際労働運動のグループでも言っていないのですね。ですからせめて2月に開かれました雇用サミットの時に、アメリカが提案したようなWTOとILOの共同作業というものも定期的に行うってことがあってもいいのではないかという立場に、国際自由労連のグループは立っております。個別に言ってどれが入るか入らないとかということなのですが、総論的にはそういう感じになります。
それからこれはおっしゃる通り、ILOがやらなくてはいけないことでありますが、ILOは国際機関の中でILOだけが三者構成なのです。ですから政・労・使の代表が、それぞれそれぞれ理事で全世界で40数名づついまして、政・労・使の三者構成でできている。従って必ず、労働グループ、経営グループ、それから政府の代表という形で、セクトの会議が行なわれて、そこでILOの宣言についてはどう考えるかということになる。ですから労働側の方からはまとめられるのですが、例えば新しい宣言の中で中核的労働基準は4つなのです。一つは結社の自由、並びに団体交渉権の効果的な承認。二番目があらゆる形態の強制労働の禁止。三番目が児童労働の自主的な廃止、それから四番目が雇用及び職業における差別の撤廃、この4つだけです。この4つについて確認するのでさえ、昨年の労働グループでさえ、昨年の総会で大議論になって、徹夜になったのですが、実はインド、パキスタン、エジプトの労働組合側が、我々にしてみれば労働側代表かどうか疑わしいのですが、政府と全く同じことを言ってて、そういうこと入れるの反対とこう言ったのです。取りあえず児童労働なのです。確かに彼らの言っている主張は、それぞれ国によって学齢年齢が違って、義務教育の年齢が違うのに、一律に15歳以下はダメだっていっても困ると。義務教育が12歳までだなんていう主張であります。ですからそれは色々議論はあるとして、それはそれなりにクリアーしながら、労働側グループとしての意見をまとめて調整をしてやる。ですから私は全ての国際機関が全部パートナーシップで、三者構成であるべきだなどと全然思いませんけども、かなりの部分については、そうしたILO方式の三者構成で合意形成をされるということの方が各国においての実効性があがるんではないかと思っている。とりわけ労働組合の権力を拡大する立場としては、そういう基調なんですね。もう一つのやり方は、OECDはBIAC、TUACというのがございまして、政府代表がOECDの正委員なんですけれども、経営諮問会議―BIACですね、それからTUAC―労組諮問会議というのがありまして、必ず閣僚会議だとか様々な委員会の主要な問題について諮問をされるのです。これも一つのやり方であるのではないかと思っています。従ってそうした意味合いでは、WTOの中でも、いわば労働組合の側のグループの発言を聞く機会を持てるようにしようということで、今度シアトルの会議でも、前回のジュネーブ、シンガポール、両方ともWTOの会議をやってる間に、ロビー活動を行う各国政府の奴をとっつかまえて、こうしろ、ああしろって言ってずいぶん圧力をかけたわけです。本来はロビーというようなインフォーマルな形じゃなくて、ある程度正式な機関を持って議論する、その場合にはILOとWTOの共同作業であればILOが三者構成ですからその中に意見が反映されるという形で進められるのではないかというふうに私は思っています。長谷川委員
中国でございますが、私ども中国やりますし、やってます。これはもう絶対にやります。現実に四川で既に新会社を作りまして、現在製造の準備中で、年末に、形式的ですが、一号車が、来年の後半にはコマーシャル・クラスに入るということです。そういう中で、中国は、ご存じだと思いますが、大変難しい、一言で言うとそれにつきると思います。我々、今、WTOに加入できるかどうか鶴首しております、是非入ってもらいたい。何故かと言いますと、やはり未だ国有企業を中心に大変旧態依然とした経営状態が続いてますし、さらに国有企業の資金状態も最悪でございます。日本のスタンダードを持ち込んだならば、8割から9割は倒産してるのではないかと思います。そういう中で我々のパートナーとなり得るのはほとんど国有企業なのです。従いましてそういう中でどうするかということをやはり大変悩んでおりますが、今、我々の方がやっておりますことは、既にトヨタの直接投資4社、部品工業です、出しました。それからグループで10数社、関係取引先、ここまで入れますと30社近くがすでに現地で投資しております。着々と、今、地固めしてるわけですが、何れ天津を中心に、もう一つ拠点を作りたいということで、政府と最終交渉に入っております。その中で今、大きな問題はやはりここでも金。我々が作った会社が現地のメーカーに部品を納入するわけですが、代金を払ってくれない。大変苦しい状況です。それから人の問題。計画経済時代に育った人が上の方へほとんどきておりまして、なかなか話しが通じない。こういう状況で、冒頭に言った通り、WTOに早く入って欲しいというのが一つ、少しでも国際ルールに従った仕事ができます。その中で我々は今、IFCに頼ってます。IFCに一株でも持ってもらえれば、そこを通じてやはり国際ルールに従った物言いをしてもらおうと言うことで、協調態勢となればということで話しておりますが、なかなかIFCも入りにくいようです。
あともう一つ政府と根気よくやっていますのが流通関係の自由化。公開をしてもらう相手を作ってもらう。それから素材産業、原材料に関する自由化。これもきちんとしたものを作ろうとすると、現在あまり中国で使える素材はありません。そういうようなことでですね、素材産業とも協調しつつ、素材産業に対する市場化も要求しています。これが現状でございます。
それからM&Aやらないかというお話ですけれども、現にやっております。ただ我々自動車産業ですから自動車以外ではやっておりません。これもやはりホスタイルな形ではなく、相手が話した上で合意できたものについては会社そのものを買い取った場合もあります。あるいは一部を買い取っているものもあります。あるいはどこかと結びつけるというようなこともやっております。そういうことで、できるだけ現地側の協力要請があったものに関しては応えております。自動車以外でも、自動車関連ということで、先程申しました、ファイナンス関係ですね、現実に政府に増資等を申請しておりますが、未だ許可が出ておりません。大体我々としては、百億単位で入れておかなければいけないだろうということで話ししてるわけですが、状況はそういうことでございます。M&Aも現地のエゴ、プラス民族感情等、非常にセンシティブな面もありまして、注意深くやっております。竹中委員
すごくプロボカティブで刺激されました。
それで、ちょっと発散型の質問、コメントとしたいのですけれども、長谷川委員のおっしゃった中で、経営の近代化をしなければいけない、経営は情報の開示をしなければいけない、何種類もの財務諸表を持ってはいけない、納税の問題、教育を自由化をしなければいけない。実は3週間前に、私、ハーバードで会議があって、日本はこうすべきだと言われたことばかりでございます。これはやはり制度というのは、そういう複雑な問題を持っている。まさに制度の競争だということだと思うのです。この制度の競争という観点で、おそらく浦田委員は地域統合のプロセスをどういうふうに続けるかという問題意識が入っていたと思うのですけど、これはちょっとラフな例ですけれども、アメリカで今、例えばEコマースがすごく注目されている。 Eコマースの、これは数字そのものがあまり正確ではないのですけれども、経済活動全体に占めるEコマース関連のウエイトというのは大体6%ぐらいですかね。これが今、65%ぐらい年率で伸びているわけです。そうすると6%の65%ですから、加重平均だけで、それだけでGDPを4%押し上げている。アメリカの経済が伸びているのは全部これだと。あとはせいぜいゼロサムだということになると、要するに経済の、ある意味で優劣というのは、そういったもの、新しい競争を生み出せるかどうかという制度を持ってるかどうかだと。そこで出た制度の競争というのが、従来以上に重要になってくるのだと思うのです。それで貿易の自由化、貿易というのはある意味で制度が違っています。制度が違っているからこそ、貿易をするメリットがあるのです。ということで多元的な自由化というのを、我々今までずいぶん議論してきたのですが、もちろん今でも重要なのですが、制度そのものの競争が、この自由化の中でどのようになっていくかということが、実は今、非常に重要になっていて、大変、漠然とした質問で浦田委員に申し訳ないのですけれども、地域統合の中で制度の競争というのは、これをどのように位置付けられているか。ちょっと例ですけれども、例えばヨーロッパではずっとやってきて、関税同盟からやってきて、コモンマーケットで1993年になると。そこまで非常に分かり易いのですけれども、それ以後はまさに経済統合、より深い経済統合ということで、通貨の統合が出てくる。そうするともうあとはこれ制度で調整するしかないわけで、自らをそういうところに追い込んでいる、非常にしたたかな戦略だとも言えるわけです。その制度の競争というのは、今後どのような形でこの地域化の中で進んで行くだろうかという、ちょっと漠然とした質問に是非コメントを頂きたいと思うのです。
もう一つ、制度の競争は実はセーフティネットの競争でもあるということだと思うのです。セーフティネットと言うと、普通どうしても社会保障だと。だからこれは分配の問題である。そうするとこれゼロサムの問題になるわけで、これは考えてみると、プラスサムのセーフティネットというのがあり得て、それは今の言葉で言うと、いわゆる「積極的労働市場政策」で、これは労働資源を高めるんだ、それが結局国の経済力を高めるし、個人にとってもそれはセーフティネットになる。ということで実は経営戦略会議では、教育バウチャーというのをかなり思い切ってやりましょうということを提言してるのですけれども、労働組合の方からは特に反応はございませんし、まして労働省は全然もう興味を示してくれない。これは是非、鷲尾委員にコメント頂きたいのは、積極的労働市場政策、特に人材育成、人的資源育成というものが鷲尾委員たちのフィールドでは、一体どのように位置付けられ、どのように対処しているのかちょっとこの辺を是非お願いしたい。浦田委員
制度と言っても、もちろん色々あるわけで、教育制度もあれば、その辺は私も意見は持っているのですが、競争制度のようなものもあります。
次回のラウンドで取り上げられる可能性が高いという意味ではやはり競争政策、競争制度が重要でありますし、議論をしやすいのかなと思うのですが。競争政策については、競争に対する考え方で、どのような形態が効率的であるのか、あるいはどのような形態がフェアーであるかとかというところで、異なった意見があると思います。つまり、各国における経済活動の背景には、歴史的、社会的、文化的等々、様々な要素があるわけで、それを無視して議論はできない。このような状況の中での制度の枠組み作りとしては、先ず第一歩としてはお互いに認め会う相互承認、ミューチュアル・リコグニションですか、こういうところから入っていくのかなと思います。次の段階としては、ボーダー・メジャーというか、国際経済取引の分野で枠組みを作りやすい、あるいは作らないとなかなか自由化は進まないということで、それが次の段階ですかね。その次に国内での規制に関して国際的な枠組みを作り上げていくかどうかということでないでしょうか。
やり方としては、私も発表の中で強調したつもりではあるのですが、先ずできるところからやっていくこと。もう少し具体的に言うと、相互承認から入っていって、そのあとハーモナイゼーションだとか、コンバージェンスと言われるような方向に進んでいく。最初からコンバージェンスとかハーモナイゼーションをやり出すと、途上国側が反発するのは分かっているわけで、それでは前進がない。ですから時間はかかるかもしれないけれども、一歩一歩低い段階から高い段階に進んでいくということがいいのではないかなという気がいたします。鷲尾委員
私も竹中委員のおっしゃる通り、積極的な労働市場政策については、各論でそれが有効であるかどうかというのは、また議論は別ですけれども、全面的にそういうことでなくてはいけないと考えています。戦後の日本経済の発展も、結局そういうとこにあったという認識を持ってるのです。過去の50年間は、結局、内部労働市場における労働政策しかなかったという部分があって、外部労働市場の中で、それが如何にできるかっていうことが重要なのです。ただ、声が聞こえてこないと言うのですけれど、最近ではあまり声がかからない。戦略会議の樋口さんに話したら、経済戦略会議にいっぺん呼ぶかっていう話になって、ヒヤリングをしてあげるよと言ったんだけど、あげるっていうのではだめなので、現に連合等は定期協議をやって、総理のところへ行って同じ事を言ってるのです。もちろん私どもの立場は多少、ゼロサムの世界でも、利益の公平配分をしていかないと、結果的にはマーケットができないから、雇用も増えないし。そこにゼロサムであっても、ある程度僕らの立場から言うと、比重を移してもらわなければ困るという部分について参画をしたいのですね。それは50・50がいいのか、60・40がいいのか、分配率で言ってもいいのかと分かりませんから、それは我々が議論に参加させてもらえれば、それはゼロサムの世界でも積極的な事業政策になってくる、こういうふうに思ってますし。先程行天座長がおっしゃったように、しかしそれは結果的には持続可能な成長につながるようなものでなくてはいけないということですから、当然のことながら教育等、とりわけ教育投資であるとか、あるいは雇用再訓練の機会を、チャンスを平等に与えるとかなんとかというのは、積極的な労働政策でなければいけないと思うのです。声が聞こえてないようにみえますけれども、ずいぶんいろんな文書を出して大げさに言っているのですけど、新聞が書いてくれないし、呼んでもくれないから、勝手に吠えているだけです。それは日本だけではなくて、さっき申し上げましたアジアにおいても同じことが言えると思うのです。ゼロサムの部分についてはある程度議論はしなければいけない。非常に不公平ですから、さっき言ったようにバランスシートが三つもあるというのだったら、どこか三つ目の個人のやつでぶんどっているのではないかということになってしまいますから。車だって、所得分配がある程度正されないと車は売れないと思うのですね。そうい、意味から言うと、竹中委員がおっしゃってることについては、基本は踏まえているつもりです。
原口外務審議官
鷲尾委員に質問ですけれど、さきほど山澤委員が質問されたことに関連して、WTOにILOを持ち込むという話ですが、日本はアジアの国ですから、アジアの国からさかんにこの問題については是非慎重に対応して欲しいとの要望を受けておりまして、今度のサミットでもこの問題について是非よろしくと求められている状況です。
それはある意味では当たり前のことで、開発途上国にとって安い労働力というのは、彼らにとっての数少ない資源ですから。それを活用できるような環境を作ってもらわなければ困るということだと思います。鷲尾委員がおっしゃった WTOにILOを持っていくということは、もう少し具体的に、労働組合の立場でいうと、何を考えられていらっしゃるのか。WTOで議論しようということは、結局、コアー・レイバー・スタンダードを守らない国の製品は輸入制限するぞと脅かして、それを梃として中核的労働基準を守らせるようにする。それしか考えられないと思うのですが。もしそういうことであれば、途上国から強い反発もあると思うのですが。鷲尾委員
WTOの中に持ち込んだとしても、WTOの議論ではそれは通らないと思ってるのです。制限的にするってことにはなかなかならない。しかし刺激的にはなると思うのですね。そういうことなんだよっていうことを労働組合の側から、組合がWTOに入れるかどうかは別として議論が出るということは刺激にはなる。それからILOはモニタリングすると言っているのですよ、毎年一項目づつモニタリングするのですけれど、モニタリングしてもへっちゃらなのですね。例えば低開発国の場合はILOに参加しても日本よりずっと条約は批准するのですよ。だけど国内法は整備されてなくて、日本は逆ですよね。国内法でちょっとでも引っかかると批准しない。従って僕なんか基本的には団結権を認めないということは人権を認めないのと一緒だと思うのです。ある程度制約すると主張しているのは、労働条件ではないのです。ということは、WTOへ持ち込んで、貿易制限をすることがあっても、これは意見が違うかも話が違うかも分からないですけど、僕はそれはあってもいいと思うのですね。せめて基本権。それから例えば児童労働の問題なんて、それは僕は気持ちは分かりますよね、みんなね。ヒューマンな気持ちで言うと、そんなちっちゃい、いたいけのない子供を使ってやる奴は、貿易制限していいんではないかというのは、欧米の人権主義者は言いますけれど、私なんかもうちょっと現実論者で、やっぱり学齢年齢10歳だったらしょうがないかなというふうに、「おしん」の世界ですよね。団結権というのは、これは基本的人権と同じで、発言権を封じるわけですから。そういうことだろうと思うのですよ。ところがアジアの国では団結権はほとんど制圧されているのですね。韓国でもようやくあの程度。例えば第2組合であるKCTUという、現代とこはみんなそちらへ入ってるのですが、そうした方の組合はまだ法内組合ではなく、一企業一組合しか認められていないとか。あるいはタイにおいては、官公労働者は一切団結権が認められていないとか。こういう問題ですから、発言、参加する権利を持っていないというのは人権の問題であるので、これは制約して当然だという議論が、僕は成り立つと思うのです。
(原口外務審議官:ただ人権と貿易の関係といった問題はWTOのTOR(付託事項)には入っていないですよね。)
入ってないです。ですからWTOの機能がそうであるかどうかということになると、実はいろんな議論があって、国際機関の役割というのは、ILOがそうした制約権をどの程度持てるかどうかという、モニタリングで実効あるかどうかということであるのです。実効が上がらないものだから、いらついて、そっちへ持ち込めとか、あっちへ持ち込めとか、こういう話になるので。例えば世銀だとかIMFの場合でも、世銀はそれでも分かってきてるのですが、IMF体制ということが、そうしたもので全部制約すると、デフレ経済を助長して労働者の労働条件を悪くしているという意見があります。ですから八つ当たり的ではあるのですが、あらゆる国際機関に対してそうしたものを主張していくというのが動きでありまして、実際におっしゃる通り有効であるか、あるいはWTOで本当に採り上げられるのだろうかということについては、見通しを持っているわけではありません。アイデア的にはそういうことです。岡本委員
鷲尾委員がずっとおっしゃってこられた労働側からのガバナンスに対して、コーポレートの側からのガバナンスがあります。コーポレートの側は株主利益だとか言ってる間はそう大きなことにならなかったのですけれども、ハーバードとかコーネル大学とか、それから宗教団体なんかが大株主として株主総会へ行って、膨大な投資を背景に、企業の労働慣行について色々言い始めてるのです。インドで学校にも行かないでサッカーボールを作らせてるというような話、それからその国の最低賃金は満たしているけども、例えばインドネシアのナイキが、従業員が一ヶ月かかってもらう給料でそのナイキのスニーカーが一足も買えないっていうのはおかしいじゃないかというような。これは宗教団体の側からのコーポレート・ガバナンスです。ナイキの側はわかりました。確かにそうでした。すぐに労働条件の改善をしましょうと。そういうふうなことが、アジアや中南米へ出ているアメリカのいろんな企業で起こっています。労働組合として、本来、私は歓迎してもいいのではないかと思います。またそれはおしんの世界だからしょうがないんだと言うのならば、コーポレート・ガバナンスの方のステークホルダーとしての労働組合側からですね、何か影響力を及ぼすような、そういうお考えはないのか。あるいはその流れに乗って労働組合も一緒にやっていくのかということを一つお聞きしたい。
それからもう一つは、長谷川委員にも同じ質問なのですが、要するに直接投資の流入によって供給能力が増えてしまって、これからの問題は、如何に、今度は需要サイドでそれを吸収するための協力をアジア諸国でも伸ばしていくかというような。そのことをお二方ともおっしゃったと思うのですが、言い難いことですけれども、やはり需給ギャップがこれだけ大きくなってしまうと、設備廃棄の問題というのはある得るのかどうか、サプライサイドの方は一体どうなのか。その辺りの事実関係も含めて、どう考えていったらいいのかなという点を教えていただきたいのですが。鷲尾委員
簡単にお答えしますけれど、ちょっと「おしん」の世界がやむを得ないことを強調され過ぎたようなんですが、要するに今の議論で言うと、国の発展段階によってどの部分をちゃんと守らなければいけないというのか、それぞれ違うという意見は持ってるのです。従って児童労働などは本当は問題なのですけれども、そうした問題については、ある国際的な基準から相当程度酷いところについては、やっぱり言っていかなければいけないということは思ってはいるのです。ただあまりにも先進国並みで、18歳以下はダメだとか、そんなことは言ってませんが、そんなふうにはならないように議論はしたいとこういうことなのです。
それからもう一つは、宗教団体だとか、大学だとか、一番最初におっしゃった年金基金だとかっていう話から言いますと、アメリカの年金基金についても同じようなことが言えて、アメリカのAFL-CIOから言わせると、自分たちが金を払っている部分もあるという主張です。金は払ってないのだけれど、企業に出させてるというのは、自分たちの労使交渉の結果なのだから、その意味から言うと、発言してもいいのではないかということで。今年ずっと勉強会をやっています。10月にはトップレベルが集まって、世界中の年金の運用について、労働組合から発言しようと。こういう意味では、ある程度ステークホルダーという立場を間接的になのですけれど行使しようと思っていますから。宗教団体や大学まで影響行使できるかどうかは別ですけれど、少なくとも、自分たちが出しているお金、あるいは自分たちが確保したお金については、一定の、そうした機関を通じて発言しようという動きにはなっております。
それからサプライサイドの問題、需給ギャップの問題、これはアジアのところまで僕ら考えは及ばないのですが、もっとベースの議論はアジア経済について考えなければいけないと思っているのですけれども。日本の場合には、経団連が昨日発表しましたけれども、私どもその場合には雇用対策というものを一方で準備をしながら、サプライサイドについての需給ギャップを防ぐための削減をしていかなくては、これは絶対デフレスパイラルになってしまうだろうというふうには思っておりますので。雇用政策については、先程の竹中委員のお話ではないけれども、提言をしなくてはいけないし、議論しなくてはいけないと思いますね。長谷川委員
タイでお話ししますと、まず一言で言いますと、当然、今、設備過剰です。しかし私はこれは比較的短期間の問題で、解決すると思っています。
それで大体、96年から97年にかけて、ご指摘の通り、自動車メーカーは将来の伸び、市場の伸びに備えて設備投資を終わっていますので、設備能力からいきますとですね、おそらく200万台位はあるだろうと思っています。従いましてそれからいくと大変低い状況にあるわけでございますが、ただこの96年、97年の前半あたりまでですと、三直でかなり無理をして製造していますので、日持ちのいい生産でいけば、その当時設備投資した分に若干の将来要因があったというのが危機前の状況です。そういう状況で設備増強をやっているわけですから、2003年から5年になれば、1996年の状態に多分戻るだろうと。そうすると若干の設備余裕を残して、生産するという状況になるだろうと。若干の設備余裕というのは、二直で残業すればもっとできる、部分的に三直をすればもっと出来るという状況です。従いまして、我々は、設備を破棄する計画はありません。今、遊休設備となっているものは、一日に一台とか二台、週に数台流して、設備のメンテナンスをしながら2003年が来るのを待っている。それでメーカーによっては、すでに今年、99年でもう黒転しますので、工場維持に関してはあまり神経質になる必要はないのではないか。遅いところでも大体2000年をちょっと越えるところで黒転しますから、私は、アジアの場合そんなに深刻に捉えてません。あとは需要がどれだけのテンポで回復してくるかなのですが、タイの例なんかを見てますと、我々が思っているテンポより少し早いと思うのです。黒転していく理由の一つは、回復のテンポに従って、為替の調整分の市場への転嫁が進むということ、それで収益状況が改善されるということ。同時に借入金の返済も進みますから、その利子負担が軽減されまして、急速に良くなるというふうに思います。
それから先程ちょっと山澤委員の質問に答えが半分になってしまったので後半を付け加えさせていただきますと、前回、一度お話ししているのですが、M&Aが確かに大変重要な問題だと、私、認識しております。やってないのか、我々もやっているのですが、もっとやってる人もいるのです。これは欧米なのです。従いまして、従来アジアで我々日本とパートナーを組んでいた優良企業が、このままほおっておきますと、欧米の企業のM&Aにあって顔も形も変わってしまうわけです。これは日本の国益にとって本当にいいのだろうか。私は、個人的には、アジアというのは、日本の経済に組み込む、我々で言えば、我々の生産体制に組み込んで、しっかりとした生産基地であり、市場として掴んでおく。そういう意味で、今、我々製造業は相当無理して現地に訴えているわけですが、日本全体としてみると十分に訴えていない。製造業の皆さん、結構努力していたようですけど、それ以外のところでなかなかそれが進まないものですから、こういったときには国益という観点からですね、公共資金の一部でも、というのが私の個人的な見解です。下村委員
長谷川委員から非常に具体的な興味深い提言がありましたので、ちょっとそれについて2点、質問とコメントを申し上げたいと思います。
マイナーな方からいきますと、技術教育学校の設立の話なのですが、私のおぼろげな記憶ですけれど、90年代の始めにバンコクで日本人商工会議所がタイ側と一緒にこの種のものを作るという話があって、その後、噂を聞かないんですけども、何か先程言われたような制約があったのかもしれません。どこかで一番フィージブルなところで作って、それが成功すれば、ショーウィンドウ効果になって広まっていくのではないかなと、それはおそらくタイが一番芽があるのかなと思いますけれど。
それから長期資金を供給する公的金融機関、これの必要性についてはおっしゃる通りで、不良債権を償却しても今のアジアの商業銀行は融資活動を活性化する意欲も、またおそらく能力もまだ非常に不足していると思うのです。インドネシアとかフィリピンはだめなのですけれども、タイなんかでは、公的金融機関が、こじんまりとしてますがかなり真面目にやってきたということはありますが、公的金融機関を設立、強化するべきかどうかというのは、IMF、世界銀行と日本政府の間のコントロバーシャルなテーマである訳で、やはり公的金融機関を強化するとか、あるいは優遇金利で政策金融を実施するとかいうのは、ワシントン・コンセンサスからいうと一番認めにくい部分でしょうから、それはもっと上のレベルで、もっともっと日本側から国際的な議論を体系的に出されないとまずいかなということです。長谷川委員
おっしゃる通りだと思います。
学校のことについて申し上げますと、経団連が題目を作って、徐々にスタートしていってるのです。それから私どもは、私どものトレーダーセンターの一部をようやく学校化できます。というのは学校化しないと、やはり卒業証書があるないによって結構違うものですから、トヨタの技術認定書だけで、通常、通用するようになると大変ありがたいのですけど、やはり学校にしてほしいと。我々努力しておりまして、ご指摘の通り学校が出来ましたが、たいへん時間がかかります。ですからもう少し、タイが一番そういう部分で進んでいるわけですが、タイももっと自由化あるいはスピードアップすべきでないか。その他の地域も、もう少しエリアを限定して、やるべきではないかと。
それから2番目の問題はまったくおっしゃる通りですが、冒頭で申し上げました通り、私どもは当然、自由化推進論者ですが、ことアジアに関しては本当に今のようなやり方でいいのだろうかということに関しては、特に私はアジア・中国担当の人間として疑問を持っております。おそらく各国の為政者もそのへんは十分に気づいていると思うのですが、欧米のプレッシャー、あるいはIMFとか世銀のプレッシャーが強いと。割と乱暴なことをやってしまいますから。そうしますとインダストリーの一部は閉鎖せざるを得ないところが相当出てくるのではないかと。小島委員
長谷川委員が最後におっしゃられたことに関連するのですが、アジア向けのビジネスの中で、特にマレーシアのビジネスが、昨年の9月に、新しい投資規制の一環として新しい短期資金の規制をやったりしましたが、自動車を含め各製造業、日本だけではなくて、むしろ世界のビジネスにとって、ビジネス上どういう結果が出てきたか。これはよかったのか、評価しているのかということ。それからマレーシアにとって、あれは総合的にどういうふうな評価をしたらいいか。一時はIMFがカンカンになったりしたのですが、その後の動きになると、国によって、発展段階、それぞれの事情に従って、いろんな制度の入れ方が、いろいろ工夫をしたらいいという話に変わっているわけです。我々の議論の主題であるグローバル化の中で、どういう段取りでやるか、あるスタンダードに合うかというところで、マレーシアのやり方というのは、ちょっと評価の仕方が重要なところだと思いますし、そこのところ、もしありましたら専門外でありますがお伺いしたいと思います。
長谷川委員
難しい質問なのですけれど、自動車に限って言いますとですね、今、マレーシアがASEANの中で一番市場が大きいのです。従来はタイ、インドネシア、マレーシアの順番。これはやはり今回のマハティールさんのいろいろな規制のおかげではないかと我々は思っています。自動車に関する限りはそういう意味では良かったのではないかなと。少なくとも今までは良かったと思うし、もうしばらくいいのではないかと。ただ残念なことは、その政策がやはりマハティールさんのプロトンに集中してますので、国民車のシェアが従来60%位だったのが80%まで乗せています。そういう意味で我々の恩恵は国民車に比べると少ないのですが、他の市場に比べればいいということが言えると思います。
先程の議論に戻るのですけれど、私は、おっしゃる通り、アジアの場合にはもう少しいろんな形で、緩やかな自由化をしながら、もう少し足下を固める必要があるのではないかなという気がしてます。トヨタは保護主義じゃないのかと言われるんで、大変言いにくいのですが、アジアの企業を見てますと私はそういう気がいたします。小川委員
二つありますけれども、一つは浦田委員がご指摘された地域化の件ですけれども、WTOという、そのマルチの貿易協定の中で、例えばアジアあるいは二国間で、バイの貿易協定という位置付けをどう考えるかと言うところで、お聞きしたいんですけれども。先程、補完的ということで、開発協力というお話があったのですが、貿易面で補完という時に、WTOの自由化の程度をおそらく越えた自由化というのを二国間あるいはアジアの地域で考えるということになるかと思うんですが、その時に日本はどういう役割を果たすかという時に、例えばアジア危機の問題で各国が輸出を伸ばさなければいけないという、外貨を稼がなければいけないというところで、日本が輸入を促進するようなところでの、二国間とか地域間の貿易協定を積極的に日本もやっていくということが必要ではないかなと考えております。そういう意味で日本がそういう主導にいるということが必要ですし、それから私が自分が研究している国際通貨の方ですと、IMFに対してAMFを作るというと、IMFからいろいろ批判があって、いろいろ問題が発生して来るのですけれども、WTOという枠組みに並列させて、二国間とかあるいは地域間でもっと自由なものを作っていくっていうことがWTOとの関係はどうなっていくのか、ということを一つお聞きしたいと思います。
それからもう一つは、鷲尾委員、長谷川委員から、国際金融、そちらの方のご指摘があったので意見させていただきたいと思うのですけども、先ず投機に対して批判的なご意見だったと思うのですけども、私も、その悪い投機はそうだと思うのですが、ただ投機にもいい投機と悪い投機の違いがありまして、全部締め出すっていうわけにはやはりいかない面があると。それではそれをどう区別するかというと、これは非常に難しくて、例えば短期資金が流出する時に、流出するのが本当にヘッジファンドの資金が流出するのか、あるいは国内のその国民が資金を出してるかというところの問題がありますので、そこはいろんなところで検討しなければいけない問題だと思います。
それからもう一つ、長谷川委員の方から、地域としての為替の安定を図る機関の設置ということで、これはおそらく日本を中心としたアジアの話だろうと思うのですが、その時にドル決済をして、あるいはドルの通貨圏の中で、日本とそれから日本以外のアジアの国々でそういう為替安定の機関を作ると言っても、ドルの玉を使ってやるというとやはり限りはあるわけですね。そういう意味では大蔵省が円の国際化ということを進めてきてますから、そこに産業界が乗って、円の国際化というのを進めていく。円で決済する中で、日本が中心になって円に対する例えばウォンとかバーツの価値を安定化するという為替協定というのを結んでいくという必要があると思います。ですからそういう意味で、今、外為審でそういうのが出てきた段階で、それでは産業界も円の国際化に乗っていけるのかどうかと。もしまだ足りないのであれば、こういうところを要求するというようなことが必要ではないかなと。茂木委員
ただ一言ちょっと申し上げておきたいのは、鷲尾委員のお話の中にですね、長期的に安定的で持続的な成長を如何に達成していくか、これは私非常に重要な問題だろうと思ってるのですね。目の前にいろんな問題がたくさんあるわけでございますから、いわば目の前に火が燃えてるんですから、消さなければならないということが当然必要なのですが、それと同時に、いわば耐火建築、不燃都市を作るにはどうしたらいいかみたいな議論がやはり一方では必要ではないかと思うのですね。言うなれば、大げさなことをいいますけれども、人類社会の長期ビジョンみたいなものをですね、漠然としたものでもいいから考えて、それに向かって今何をやるかというスタンスの議論ですね、これが殆ど今の経済論議の中にはないような感じがするのです。つまり経済学というのは、多分地球のキャパシティーみたいなものがまったく分析体系の中に入ってないのですよね。
その辺について何れ、私、改めて申し上げたいと思いますけれど。(行天座長:それでは今の小川委員のご質問に対して)
鷲尾委員
私はご意見、その通りだと思います。
ただ経済政策として色々なことを踏まえて考えていくというものと、やはり言わなくてはいけないことは一方の側として言わなくてはいけないというのがあると思っています。難しいことは分かっているけれど、こっちの側から言わなければ、常にそういうチェックが働かないだろうという気持ちですね。ですからご意見はその通り、難しいし、区分けしなければいけない。そんな仕組みが出来るのかどうかというのは、これは私の専門ではありませんので、先生方に考えていただかなければというふうに思ってます。
それから茂木委員がおっしゃっているのは全く同感でありまして、その際には議論する場合にはやはりこれまたすぐ自分の権益を拡大しようとするのですけれど、さっきの呼ばれないっていう話と同じで、呼ばないんですよね。素朴な議論かも分からないけれど、皆がどう思ってるかということを、労使関係はそうでしょ、要するに日本の企業の場合には、呼ばれて意見を、即ちつまらない現場の意見だけど言ってるという話が大事なのでね。そういう不燃構造の都市を作る場合にはやはりそこに住む人の意見が、発言のチャンスがあるってことがものすごく大事なので、それはさっきから言ってるように、コア・レーバー・スタンダードの中で団結権を一番大事にするというのはそういう意味なのです。浦田委員
小川委員から質問が出された、いろんなレベルでの貿易自由化を進めていくということに関して、そのような進め方の一つの成功例として挙げられるのは、ウルグアイ・ラウンドの合意に向けての、APECでの貿易自由化の貢献が挙げられると思います。実際、始めからWTOのグローバルレベルで自由化への合意を実現するのは大変難しい場合が考えられますので、例えば日韓の投資協定とか、自由貿易協定というように二国間で自由化を進めていく。それがAPECのような地域レベルへ広がっていく。そしてWTOでの自由化に繋がるといったやりかたが考えられます。ただそこで注意しなくてはいけないのは、地域化を進める場合にはGATTの24条を侵害しないこと、つまり、域外のメンバーに対して差別的な措置にならないようにすることが重要だと思います。
先程の発表の時、言い忘れたことなのですが、WTOの議論の中で、鷲尾委員のお話にもありました労働の問題ですね。それから触れなかった環境問題に関係するのですけれども、これらは議論としては重要なのは分かるのですが、果たしてWTOという枠組みの中で議論するのがいいのかどうかということを考えなければいけないかと思います。WTOの目的は貿易政策や投資政策の自由化ですが、労働問題や環境問題を改善するための手段として貿易政策や投資政策を用いることがファースト・ベストではないことは経済理論からも明らかなことです。労働問題や環境問題の改善・解消にあたっては、労働政策や環境政策がより効果的であるのですから、労働であればILO、環境問題であれば国連といった国際機関で議論されることが好ましいのではないでしょうか。
長谷川委員のご発言の中で、教育の問題で、スタンフォードとかに出てきてもらって、アジアで教育してもらえばいいというお話がありましたが、ここで日本の大学の名前が出てこなかったことは悲しむべきであると思います。確かに、日本の大学の教育の質は、文部省によって保護されていることなどから、アメリカなどの大学と比べて、低いと思います。日本の教育が自由化され、国際化されて、マレーシアとかシンガポールでもスタンフォードとかMIT等と競争できるように質が改善されなくてはならないと思います。長谷川委員
小川委員のご質問にお答えしますけれど、円は全く問題ありません。一時、半分位円にしましたが、使い勝手が悪いということで。調達が出来ない、コストが高いということで、相手側から止めてくれと言われました。
近藤審議官
今日も大変、勉強させて頂きましたが、今日のテーマの関連で一言。最後のレポートを頂く時に、ちょっと頭の隅に置いて頂きたい点をお願いしておきます。
貿易と労働の話が大きく出ましたけれども、単にWTOにおける貿易と労働の問題だけではなくて、その自由化と、いわゆる社会条項の関連を考えていく上で、鷲尾委員の言われたようなソーシャル・セーフティネットを絡めていくということは賛成なのですが、同時に、途上国の開発政策とのバランスの問題と、もう一つは、いったん社会的あるいは政治的な基準のレバレッジとして経済ツールを認めることになると、アメリカのスタンダードを経済を通じて押しつけようとする戦略を要は許すことになるというような結果になるという見方もあると思うのですが、そこらへんのバランスについて、ちょっと、念頭においていただきたいと思います。行天座長
今日はこれで終わりたいと思います。
次回は、7月16日、今日と同じようなスタイルで行いたいと思います。
次回は「アジア・太平洋地域における政治・経済の安定化のための日本の取り組み」とこれも非常に大きなテーマなのですが、田中委員、岡本委員、山澤委員と、このお三方からお話を伺いたいと思います。
本日はどうもありがとうございました。
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