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【第二部】 <自由討議>
行天座長
どうも有り難うございました。お二人からはまさに問題提起としては最適なお話をして頂きまして、ほとんどのポイントをカバーして頂いたと思います。
あと30~40分の時間しかございませんけれども、ご議論を頂きたいのですが、この金融問題あるいは為替問題につきましても、全体の観点からやはり楠川委員の金融問題のお話について言えば、主としてアジアの国というのは一体どういう、広い意味での金融制度と言いますか、が望ましいのだろうか。楠川委員の方から各国の金融システムの安定化についてお話を頂いたわけです。危機が発生した後、率直に言って、アジアの金融システムに対する批判が非常に強いわけです。透明性がないとか、クローニー・キャピタリズムだとか、聞き方によっては今までアジアの金融がやってきたことは全部間違っているという議論が非常に強いわけなのですけれども。また現にアジアの国もそういう批判をかなり受け入れて、それを直そうという方向に動いているところです。ただしかしそれでは本当にアジアの国の金融というのが、これから中長期的に見て、それが全く例えば今のアメリカの金融と同じになるのか、ならねばならぬのか、なりうるのかと。韓国のチェボル(chaebol:財閥)の話しをみていても、チェボルの改革と言っているけれども、これとてもできませんよね、はっきり言って。やったらもう経済全体が壊れてしまうわけですから。ですから、やはりアジアの金融システム、その中にはもちろん広い意味でのシステムからはじまってコーポレイト・ガバナンスみたいな話しまでも含んだ意味での金融システムというのは、一体どういうふうにしたらいいのかというのは非常に大きな問題で、すぐに結論は出ないのですけれども、やはりその問題があると思います。
二番目には、これも楠川委員に指摘して頂いた、特に最近の状況としての資本移動です。この資本移動の中には長期の直接投資みたいなものもあれば、非常に短期なものもあるわけですけれども、一体これからの国際的な資本移動というものをどう考えていくべきかという問題と、それから三番目には、そういう背景を踏まえた上で、アジアとして何か今までになかったものというか仕組みというか制度というようなものを考える必要があるのか。これも楠川委員が触れられましたけれども、昨年以来非常に話題になっているアジア金融基金、アジアン・マネタリー・ファンドというようなものを含めたアジア的な金融システムというものをどうしたらいいかと。私はおそらく非常に大雑把に区分けしますと、その三つぐらいの問題点がご議論の対象になるのではないかという気が致します。 小川委員のお話につきましても、同じような観点から考えてみますと、やはり第一にはアジアでの将来的な金融制度、要するに一体アジアというのはどうなってしまうのかと、こと金融に関しては。ますますドル圏になるのですかということとか、円圏になるのですかとか。あるいは全然別な姿、この頃中国の人は将来は人民元に、何て言う人も出てきてるわけですけれども。あるいはヨーロッパ的な、何か統一通貨的なもの。要するにアジアの通貨制度というのは一体どう動いていった方がいいのか、動いていきそうなのか。その問題というのは結局二番目に、それとの相関関係において、一体円をどうしたらいいのだという問題になって来るわけです。アジアの将来の通貨制度がどうなるかということは、円がどうなるかということとまさに非常に密接に関係のある話ですから、小川委員も言われた円の国際化なども含めた円の将来像の問題と。
最後に、より具体的な話しとして、為替相場と言うものを一体どう考えるか。やはり為替相場は一般論として適切な水準で安定した方がいいことはもう異論のないところなのでしょうが、一体そういうことはできるのか、あるいはどういうふうにすればいいのかという問題。この為替制度の問題というのは、アジアの国の通貨の為替相場の問題と、それからいわばその背景にある主要通貨の、つまり具体的には円、ドルの相場の安定の問題というのがあると思うのです。
非常に大雑把に私が勝手にとりまとめを致しますと、今のお二人のお話というのは、それぞれこういう三つの問題が指摘されたのではないかという気が致します。そこで大体そういう問題意識でもってご議論いただけるとありがたいと思いますが。長谷川委員
長期的にどういうシステムというか、どういう制度がいいかというのは、私、専門でないものですからこれは専門の先生方にお願いしていただいた方がいいのではないかと思うのですが、前回申し上げました通り、仕事をしていてどういうふうな、短期的な問題ですね、短期的な問題を乗り越えないと先の話しはできませんので。
前回も少し発言させていただきましたが、今一番困ってますのは、企業の金不足、皆様ご存知の通りですが、これをどうするかなのですね。今ずっと見てますと、アジアの大手の企業は大体このお金の問題に直面してまして、銀行団といろいろな形でリスケジュール、自身のリストラだとかをやっています。この場合、一番困るのは、リストラやるにしろ、リスケやるにしろ、支えてくれる人がいないということです。リストラやるためにこれを売りたいんだけれど買う人がいない。リスケやるにしてもなかなか銀行団に受けてもらえない。したがって本来の業務がなかなか回っていかないと言うのが一つのポイントなのです。ですから私、前回申し上げた点の一つは、アジア型のIFCを日本の政府の方で作ってもらえないか。デット・エクイティ・スワップの話がありましたが、その債務を買い取って、エクイティにしてしばらく持ってもらう。あるいは債権そのものを買い取ってしばらく持っていてもらう。そういうようなことをしていただかないと、本当にアジアのリーディング・カンパニーは再生しないと思うのですね。リーディング・カンパニーが再生しないと、中小企業の育成ないし再生ができないのですね。そのためのシステムと言いますか、サポートを日本ができないだろうか。このとき一番私が気になっていますのは、日本が支援をするときにどれだけリスクを覚悟するかですね。今、私が見ていますと、100支援するとやはり100返ってこないといかんというような印象を私は持っています。支援というのは言葉のゲームではないのです。支援という以上、100支援して80とか70呼び戻してもしょうがないと思うのですが。そういう覚悟があれば、エクイティ・スワップの問題にしろ、債権の解決にしろ、いろんな問題、あるいはまた新たな問題にしろ、かなり解決する目処が立つのではないか。それは何かというと、その為替のリスクを誰が持つのか。会社が本当に再生するかどうかという会社再建のリスクを誰が負うのか。そういう問題についてもう少し日本が踏み込むべきであると。もし日本が踏み込まないと、ある企業のリストラクチャリングをずっと見てたのですが、欧米の会社はエクイティにスワップすることをあまりヘジテイトしないのです。それなのに日本の銀行団は、今、大変日本自体もリストラで苦しんでいるから、短期的に回収したいという意向が非常に見受けられます。そうしますと日本の企業がパートナーとして組んでいる相閧ェいつのまにかアジアではなくて欧米の人になっているということも充分考えられるわけです。そういうことが本当に日本の企業として、あるいは日本の国益としていいのだろうか。アジアの将来の通貨制度とか金融制度に、日本の円をどれだけ組み込むかという問題に、いずれはそれがのしかかって来るのではないかと思いますので、非常に短期的な問題として、私はこの問題、もう少し日本の政府が公的な資金を動かしていただけると大変ありがたいなと。もちろんこれは日本のお金、つまり国民の税金ですから、大変難しい問題を含んでいるというのはよくわかります。しかし日本のいろいろな銀行あるいはノンバンクなどはすでに相当な金をつぎ込んで、こういうことを言っては失礼ですけれど、回収の見込みがないところが相当あるわけですから、これは日本の国民につぎ込んだのか、アジアの国につぎ込んだのか、そのアジアが日本のために犠牲になるのか、こういう問題じゃないかと思いますので、もう少しここを、いやな話しですけれども、突っ込んでいただくことをお願い申し上げます。今は何がやってるかというと、我々民間企業がやってるんです。ところが民間企業がやるとどういうことが起こるかと言いますと、やはりアジアにはアジアの人のセンチメントというものがありますから、自分たちがマジョリティでコントロールしているこういう時期にどんどん入ってきて食われてしまうのでは堪らないと、増資して何とか済まそうじゃないかと。銀行の資金調達もできないし、金利が高いですし。そうすると一つにはそういうセンチメントの問題、もうひとつは何しろ金がない。この問題を解決するためにはやはりさっき言ったように、サード・パーティーの資金が一時的に入ってもらうとたいへんありがたい。以上、大変手厳しく言わせて頂きました。行天座長
アジアのリーディングカンパニーというのは、地場の企業ですね。
長谷川委員
はい、まあそこがいろいろなところと合弁会社を組んで、企業集団を持ってるようなのがアジアの場合には多いのです。その優良なリーディングカンパニーが、ほとんど共通してこの問題を抱えているのです。我々もずいぶん一部の会社を買い取ってあげようとか、増資しましょうと。増資した後、これはあまり外部に話して頂くとまずいのですが、いずれお宅が健全になったら一部売り戻しますよというようなこともご提案申し上げているのです。
楠川委員
今、おっしゃった資金不足というのはローカル・カレンシーですか、それともドルですか。
長谷川委員
どちらでもいいですよ。要するに最適にはローカル・カレンシーです。ドルで入ってもいいし。ドルで入った場合はリスクの問題がありますから。ローカル・カレンシーで借りると金利が高過ぎると言いますが、結局は同じなのです、どちらで借りても。
行天座長
アジア型のIFCというのは私も非常に興味があるアイデアだと思うのですが、今のIFCがその意味で役に立たないという事なのでしょうけども、それは金が無いというか、それからリスクは取れないというか、そうなるとアジア版のIFCといっても現在のIFCとはかなり性格の違うものになりますね。
長谷川委員
要するにサード・パーティーであるということが大事なのです。日本でもない、欧米でもない、銀行でもない。サード・パーティーで、いずれ健全になったらもとの状態に戻ればいいではないですかというような。
行天座長
デット・エクイティなんかに踏み込んでやるとなると、まさに相手の企業の中身も分かってないといけないということで、相当インフラがないと出来ない話だろうと思いますけれどね。そういうリソーセスが日本にあるのか、あるいはアジア全体でどうやったらそういうものがモビュライズ出来るのか、いろいろ具体的な問題が出てくると思いますけど、それは非常に確かに面白いアイデアではありますね。
長谷川委員
今やらないと、欧米の銀行団とかですね、買いに出てますからね。そこへ行ってしまう可能性があるのです。それは我々民間企業にとってもいいことなのか、国益にとっていいことなのか、真剣に考えなければいけないと思うのです。割り切れば昨日までアジアの人だったのが、アメリカの人がパートナーになっても、そこで仕事が出来ればいいのですけれど。それには十何年一緒に仕事をしてきた人に対して悪いなという気もしますしね。
小島委員
先程、話しを整理されて、またダブルような感じなのですけれど、問題の捉え方として、アジアから始まったこの不況をずっと時間的に遡ってキャッチフレーズを付けようと思います。先ずタイ・クライシス、バーツ・クライシスがありまして、すぐにインドネシアに飛び火したのですが、アジアの問題でクローニー・キャピタリズムとなりました。その後、ロシアまで絡んで、グローバル・キャピタルマーケットのクライシスに、段々グローバル・キャピタリズムのクライシスの話しになってしまって、ボラティリティがキャッチフレーズになり、最後はアーキテクチャーの話しになる。アジアの危機が分かったのでどんどんと危機が広がりをもってきたのではなくて、やはり戦後50年経って、経済の仕組み、国際金融界の仕組みが、質が変わってきて、グローバルなシステムそのものが、構造的に新しい問題が生まれている中で、そういうアジアの危機がこういう形で起こったというふうにとらえるのがどうもいいのではないかという感じがします。
グローバル化の方向には資金の自由化があり、グローバリゼーションの方向は、方向としてはもう所与のものであるというのは、それはそうであると思います。そしてその本質は市場化でもあるわけです。市場化というのは要するにプライベート・セクター中心に物事が動き出したことであり、圧倒的に借り手も貸し手もともにプライベート・セクターという要素が強くなってくる。しかしIMFのシステムはプライベート・セクターの動きはあまり大きくないということを前提にして仕組まれているために、その対応策が結局チグハグになる。そこをどうしてこう、今の現実に合わせていくかというのが問題ではないかと思ってます。
円の役割については、小川委員のおっしゃるところですが、通貨の機能を三つおっしゃいましたが、今の状況ですと、交換手段、貯蔵手段としてはなかなか大きな存在にならない。価値尺度としてはありえる。なぜかと言えば、流動性ジレンマの話しがあるのですが、要するに日本の円という通貨は、アジアに対して一方的に吸い上げなのです。構造的に黒字ですから、円が不足なのです。構造的に不足なのです。流動性が十分供給されないと、その通貨は機能として、交換手段や価値貯蔵手段としては機能しえないわけです。それをどういうふうに考えるのかというところが円の問題なのかなという感じがします。
ドルの場合は流動性も提供している。しかし一時期はそのために信認がおかしくなったのですから。相対的には信認が強くなって、ドル基本が続いてますけれど。日本の問題は、一つ考えなければいけないのは、71年に構造的な貿易黒字国になって、そのあと構造的な経常収支の黒字にもなり、ずっと構造的に対アジア、および対世界において、円資金を供給してないわけです。流動性供給の役割はほとんど果たしてなくて、そのあとの帳尻で、資本の流れで、金融の流れで調整しているわけです。そういう格好の流動性供給で、円というものの国際通貨としての役割なんて作れるのかというところが、一つ私が感じたところです。行天座長
IMFもやはり民間との接点が無さ過ぎたと、また情報が入らなかったので、今度のアジア危機に後手後手に回ったのもその辺に問題があったという事は認識してまして、最近内々に各国の民間の特に資金を動かしているようなところとの接触を始めてますけどね。そのこと自体はいいことだと思いますけれど。
小島委員
71年ぐらいまで、固定相場で、要するにお金を管理の世界で、その時までは為替はおそらくニクソン・ショックで円の切り上げを政府間で議論した時、貿易収支で我々議論すればかなり議論できたのです。これが為替に絡む経済のファンダメンタルズで、ところがプラザの時は、今度は経常収支黒字で、要するに日本が黒字国である、あるいは債権国、アメリカが債務国という経常収支ベースで議論したわけです。今起こっている、とりわけ昨年は48時間で円・ドルレートが15%もスウィングした中で出てきたキャピタル・アカウント、これがおそらく一年半ぐらい前から経常収支のバランスよりも、日本にとって資本収支のバランスの方が大きくなってくるのです。例えば昨年一年間通してみて、経常収支黒字が20兆円強、それに対して資本収支の赤字は22兆円ぐらい。当然その経常収支黒字、貿易収支黒字がどんどん、どんどん大きくなる中で、円安が進行したというのは、キャピタル・アカウントが相当重要な要素として出てきた。しかしキャピタル・アカウントは、経常取引と違って、大国間で大きくスウィングして、したがって為替のボラティリティにも昨年強烈に表れたのです。
篠原委員
最後の問題をもう少し考えてみたいと思いますけれども、円の流動性のジレンマというのは今当たらないケースになるのではないかという気がしているので、ちょっと考えてもう一回どこかで反論致します。楠川委員のハーディングというか、小川委員の群衆行動という話に反論したかったのです。これは考えてみると、いわゆるマーケットそのものなのではないか。為替市場なんかで、私、よく言うのは、市場を作ってるリーダーというのは単細胞の車夫馬丁が、付和雷同しながらみんなで渡れば恐くないということをやっているから、ああいうことになりますよと。だから結果として一つの均衡から次の均衡まですごく時間がかかるし、その間、オーバーシュートを何回もやらないと次の均衡まで来ないと。こんなのが市場であって、これが完全ですかと皮肉は言うのですが、これは全部ハーディングなのです。もっと言えば、貸し出し等々の中にもハーディングがあります。インドネシアのファミリーにシティが貸したから、みんなで貸してしまえ。こんな話です。それで逃げ足が早くなるとコンテージョンが起きます。その通りで、これは小川委員は「バンクラン」という言葉を使っています。バーッと引き揚げたら、みんな倒れたと。これをやられたら、どんなにきれいに出来上がっている金融市場でもなんでもぶっ壊されますよといういい例は、前回、吉冨委員が言っておられた、スウェーデンなのであろうと思います。ディスクロージャーが永いから、こんなに透明できれいに出来上がっていた金融市場はないけれども、お金がワーッと入っておだてられて、そのうちボンと引き揚げられてみんな壊れましたと。ですから透明性、ディスクロージャーその他と金融危機を招かないと言う話とは、もしかすると特に関係ないのではないか。楠川委員がおっしゃった開示をしてうまくやったら、ハーディングも抑え込めないかと言うのがあるとすれば、これが一番言い話なのではないかと思ったのです。ここの所は非常に重要なポイントではないですか。
行天座長
それはまさに昔からボルカーがしきりに言っておることです。
浦田委員
今の篠原委員のコメントにも関連するんですけれども、為替投機をやって、儲かる人と被害を被る人ですね、これが誰なのかというのをもう少し明らかにする必要があると思うのです。例えば一国の株式相場であれば、単純に考えれば、その国の人が利益を得るし被害も被るということになるのであろうと思うのです。しかし為替での投機の場合に、外国の資金を持ってる人がある国に入って、その国の人がお金を借りてしまった。そして急に引き揚げたので、その国の通貨が下がってしまう。これをドルで借りているから返せなくて大変ということであれば、国内の人が被害を被る訳です。しかし先進国の中にいる資金を持っている人、金融機関でも、利益を受ける機関もあれば損害を受ける機関もある。実態としてよく分からないのは、誰が本当に被害を被っているのか。もし被害を受けているのが先進国の金融機関であるとすれば、短期資金の動きを抑制することに対してみんな賛成すると思うのです。そこのところがどうもよく分からないので教えていただきたい。
行天座長
それはまったくその通りで、ヘッジファンドが失敗した時、そのことがきっかけになって、何かヘッジファンドが悪いと言う話になったのですけれど、そのヘッジファンドに金を出しているのは、もう使い道のない金持ちがリスクを承知で出しているわけですから、その連中が損したからといって、なんでそれを罪悪行為であるかと言って騒ぐのだという議論はありますからね。
茂木委員
前回もいろんなところで、振り子の振れ過ぎみたいなことが起こっているのではないかと申し上げましたが、例えば自由という言葉と統制という言葉を並べてみると、これはみんな自由がいいというわけです。人権尊重と人権無視とを比べたら、人権尊重がいいに決まっているということになるわけです。ところが得てして、それが行き過ぎてしまうと、なんでもかんでも、例えば平和と戦争、平和がいいに決まってるんですよね。最近もそういう事例があったわけですけれども、それが行き過ぎてしまいますと、議論もおかしなところへいってしまうんではないかということを最近感じているわけです。楠川委員のご発言の中で、資本取引の自由化といいますか、国際的なマネーの動きですね、これはもはやギブンと考えるべきではないかという発言。それからまた止める手段もなければ、必要もないかもしれない。一方で宮沢さんのマーケット・フレンドリーな規制ならばいいのではないかというお考えもある。
私はやはりなるべく自由な方がいいけれども、なんでもかんでも自由というのはまずいのではないかと感じているわけでして、為替相場の決まり方、小川委員から現実的なお話があって、まことにその通りだと思うのですが、しかし私は撹乱を起こすことによって、その過程で、利鞘を取ろうという動きがもう絶対存在しているわけですね。ですから撹乱のための撹乱を起こすような動き、これは、手段、方法があるいはないのかもしれませんけれども、何らかの形で、避けるような、そういう動きを抑え込むような国際的な協調といいますかあるいはシステムといいますか、あるいは規制でもいいのですが、そういうものを導入しないといけないのではないかという気がするのです。先程、篠原委員のほうからディーラーというのはというお話しがありましたが、私もかつてはディーラーというのは花形プロフェショナルだと感じていたのですが、最近になりまして言葉、表現は悪いのですが、単なるあれはギャンブラーではないかと思うようになりました。一体ギャンブルの過程でどういう価値を生み出すのだと。大げさに言えば、人類社会の福祉のために一体何の価値を生み出して、どういう存在意義があるのかということが、全くこの頃理解できないのです。世の中、アメリカを中心とするああいう国際金融取引の集団が広まりつつあることは、いわばラスベガスを世界中に広げるようなことでして、全く不毛な経済行為ではないかという感じがしてしょうがないのです。片方でウィナーがいれば、必ずルーザーがいる。何か物を作り出して、人間の生活にプラスになるようなことをクリエイトしていくものならば経済的な意味があると思うのですが、そういう要素は私にはどうも感じられないのですけれども、これは戯言でしょうか。行天座長
いやいや、それは大変重要な問題なのでしょうけれども、まさにさっきからお話がでている市場原理主義とか、あるいはまさに資本主義の根幹に関する問題になってくるでしょうね。そういう問題自身が起こりつつあるということ自体は私は建設的なことだろうと思いますけれども。ただ彼らに言わせれば、まさにその金融取引が大きくなってくる。それで動機はもちろん利鞘稼ぎですから、その事自体が結局所得と雇用を生んで、それがまさに世界全体の経済福祉に貢献しておると、彼らは思ってるわけです。ですから片方、物作りの側からすると、触れない物になんの意味があるのだと言うけれど、サービスに専念している連中というのは、なんでそんな物なんか作っておるのだと。物が余りすぎとるではないかと、もうすでに今や世の中というのは、物作りからサービス作りの世の中になってきていると。別に私はここで議論をするわけではないのですけれど。おっしゃるとおり非常に重要な問題であることは間違いないですね。
下村委員
今ですね、皆さんの議論から出ている、今やらなければいけないということが二つございます。一つは、今起きている問題をどうやって軟着陸させるかという、長谷川委員が言われたような提案。もう一つは当たり前の話ですけれど、再発を防止するということです。この再発を防止するということを考える場合に、私は今出されている提言、宮沢提言というのは非常にリーズナブルだと思うのですけれども、これが有効だというふうに言うための前提が現実的だと専門家は本当に考えているのかなと正直言って思うのです。ここには二つ重要な前提があると思うのですけれど、一つはグローバリゼーションとか、資本移動の自由化というのは、これは現実的には所与の問題だということ。そうなのだと思うのですけれども、これについてやはり理論的に詰めてみる必要があるというのは、資本の移動を自由化するとどういうメリットがあるのか、どういうリスクがあるのかという点ですね。おそらくデメリットは確率は低くても起きたときのショックがすごく大きいということで、総合的に見て非常にメリットの少ないことをわれわれはやっているのではないかなと思うのです。少し理論的にそこを詰めてみないといけない。流れが戻らないんだからという現実的な受け止め方だけだと、今後の再発防止という点で甘くなると思います。それからもう一つは、小川委員が言われたハネムーン効果が非常にはっきり示しているのですが、全体として市場に参加している人の行動が合理的だという前提、これは極めて非現実的な前提だと思うのです。合理的な行動だと言う前提だと、例えば情報を開示するという方法が、何かシグナルを与えることによって合理的な反応が期待できるという、現実と離れた前提で再発防止を考える結果になってしまう。どう考えても97年のインドネシアに政府の保証のない債権が570億ドルもあったという市場の行動は、合理性では極めて説明しにくいわけで。
最後に、誰がウィナーで誰がルーザーかと言う時に、企業とか市場とか金融の次元で考えているから、何か損得がバランスするような、要するに誰かが儲かって誰かが損をするという感じで受けとめてしまうのですけれども、本当のルーザーと言うのは民衆だと思うのです。ウィナーというのは金融の世界の話です。しかしほとんどのルーザーはそれとは関係のないところにいて、一方的に影響を被ってしまう。こういう資金移動の自由化と言うのは、本当にサステナブルだと言う前提で考えていいのかなと思います。行天座長
最近、世界銀行のウォルフェンソンという総裁が、しきりに今、下村委員がおっしゃった点をやってますよ。
山澤委員
誰がルーザーで、誰がゲインしたかということについてですが、アジア危機のような事が起こると、パイ全体が非常に小さくなってしまったわけですから、みんなが全体として損をしていることは間違いないと思うのです。その中で、ごく一部儲かっている人がいるかもしれませんけれどね。私の質問は、小川委員の一番最後の部分の、最適通貨バスケットのコーディネーション・フェイリアということなのですけれど、結果から見て言うことですよね。結局あれはフェイリアだったということになって、私はこれが一人歩きしましてね、そのコーディネーション自体を抑制するような効果を持ってしまうのではないかと危惧します。前の方で言われたバンドワゴン的に乗かっていればいくらでもエクスキューズが出来るからということになってしまう。おそらくコーディネーション・フェイリアは、かなり狭い意味で、本当のコーディネーション・フェイリアだけに限定して、使っていただく方がいいのではないか。それとの関連ですが、この最適通貨バスケットという時に、各国がドルや円にリンクするわけですが、そのマーケットバスケットで、ドルや円の構成比が一般には共通である方がいいのですか、それとも国毎に、それぞれの貿易状況に応じて差を付けた方がいいのでしょうか。それによってこのコーディネーション・フェイリア的な要素が出てくるのではないかと思いますが。その点いかがでしょう。
近藤審議官(外務省)
本日大臣は外務委員会出席のために出席できず、皆さんに宜しくという事であります。 前回もそうでしたが、かなり地域に密着したきめの細かい対応をするためのAMF的なもの、あるいはアジア型IFCといったものの望ましさについてのお話が出ておりますし、どうもこの一年半ぐらいの議論を聞いておりますと、段々、段々と、いわゆる完全なレッセフェールを旨とするアメリカ型資本主義は危険だという意見が高まっている気がしますが、他方、アメリカ人の方は全くそういう意識はありません。ソーシャル・セーフティー・ネットと言っても、結局なにか起こった後の手当にすぎないように思えます。予防という感じではないのです。この研究会は最終的に日本としてどういう貢献を来年のサミットですべきかというところに最後は流れ着くとお考え頂きたいのですが、そういう視点から見ますと、私ども、今、ある意味でかなりコンセンサスになりつつあるマーケット・ファンダメンタリズムの修正という課題をどうやってこの一年ないし一年わずかの間に、国際的に広めることが出来るのか。どうやってアメリカ人も含めてファンダメンタリストたちに我々のメッセージを具体的にデリバーできるのか。一方でグローバルスタンダードとか、コーポレートガバナンス、透明性と言ったことを言いながら、他方、アジアは特殊だとは言いませんけれども、アジア型のIFC、今ないような物を作っていこうとすることには、どこかに矛盾があるのではないかという感じもしないでもないのです。それをうまく整理しないと、国際的に我々のメッセージがデリバー出来ないような気もしますし、そういうことを、今後のご議論で、是非念頭に置いて頂きたいと思います。
近藤委員
三点ほどコメントさせていただきます。
先ず楠川委員の資本取引自由化についてですが、私どもも、タイやインドネシアなどASEAN諸国で200近い事業経営をやっておりますが、長期資本の自由化と短期資本の自由化のインバランスが、今回の危機に相当責任があったのではないかという実感がございます。実例的にも我々いくつかその点を感じております。具体的に申し上げれば、長期資本に対する保護主義が短期資本に依存せざるをえない状況を作り上げてしまったということです。したがって問題の本質は資本の自由化の是非ではなくて、むしろ長期資本と短期資本の自由化のシークエンスの問題にあると思うのです。
二つ目は、楠川委員の言われた借り手と貸し手の問題です。これは発展途上地域だけに限った問題ではないのですが、借り手と貸し手の双方に規律を与えるという意味で役割を果たしつつあるのが、レイティング機関です。そこでそのレイティング機関のあり方を現在のままで放置しておいていいのだろうかという問題が出て来ます。この点については是非これから議論して頂く必要があると感じています。
三つ目は、小川委員がお話になった円の国際化に関連する問題です。小島委員は円の流動性拡大の必要性につき問題点を指摘されましたが、ご指摘の点につき共感を持ってお話を伺いました。わが国のマクロ経済政策と深く関係する話でございますので、今後、是非当研究会で突っ込んだ議論をして頂きたいと思います。楠川委員
私も、実はいろいろと話しましたけれど、結論めいたことはあまり言っておりませんので、その意味でご不満があったかもしれませんが、非常に問題が多岐にわたりますものですから、ちょっとそこまで、時間の制限もございまして出来ませんでした。
グローバライゼイションの問題は確かに先進国の論理であるということは言えるかもしれません。それから全ての問題において、短期資本の問題も全て、先進国の場合はこうだ、後進国の、新興国の場合はこうだと言う、なにかやはりそこに二つに分離された理由付けがあるように思いますから、二つは分けて議論しなければいけないのかなという感じを私は持ってます。グローバライゼイションの問題は、結局、世界中電子マネーが飛び交っているような状態、そしてインターネットが世界中をカバーしてしまっています。この与件をもはや訂正することは出来ない。その上に乗っているマネーをコントロールすることは本当に出来るのであろうかという意味あいで、私はギブンのものになったのではないかと申し上げたのです。しかしこれはこのままでいいのかというと、問題もたくさんあるわけですから、それに対しての知恵の出し具合がなかなか大変だと思っています。これからもこの点の議論は続くと思います。いろいろとご示唆がございましたけれども、私としても、先ずこの問題が一番大きい問題だろうと思います。IMFの在り方とか、特に世銀が出している貧困者対策とか、今日触れませんでしたけれども、これも社会的に大きな問題としてあるのだろうと思います。小川委員
皆さんからいろいろお聞かせ頂いてどうも有り難うございました。
コメントだけかい摘んでお話し致します。二点だけ話をすると、先ず円の流動性の問題ですが、私は、資本収支、資本移動の方から円の流動性というのを出来ないのかなというふうに考えています。まだ考えている段階で、これからもう少し真剣に分析をしていかなければいけないと考えてます。
そして楠川委員のご報告と私との重なるところかと思うのですが、ヘッジファンドの問題があると思います。ヘッジファンドを考えるときに、二つに分けて整理しなければいけないかなと考えています。一つはヘッジファンドそのものが為替などに影響を及ぼす、ヘッジファンドを見て行動しているハードビヘイビアが為替に影響を及ぼすということと、それからもう一つは、ヘッジファンドにお金を貸して、ヘッジファンドが高いレバレッジをかけて行動しているというところを分けなければいけないと思います。ヘッジファンドと、ハードビヘイビアの問題というのは、これはもう為替の問題なんですけれども、もう一つの、金融機関がヘッジファンドにお金を貸して、レバレッジを高くしているというところで、そのヘッジファンドがつぶれると、金融機関にまで影響を及ぼすという問題があります。そうするとこれは波及効果というのがすごく大きくなるわけです。ですからそこのところは区別して、ヘッジファンドそのものの行動というのがいい悪いという議論と、それとその金融機関がヘッジファンドにお金を貸してるというところで、ファンドがつぶれたら金融機関に影響を及ぼすというところは分けて、そして違う対応の仕方があり得ると思いますので、そこのところは、私のところの問題とも関係していますので、今後勉強していきたいと考えています。行天座長
有り難うございました。案の定やはり少し時間の足りない部分がありますけれども、また次回以降にしたいと思います。次回は5月19日水曜日、今日と同じ時間帯で予定をしておりますので、是非ご出席を賜りたいと存じます。次回は国際貿易、投資の現状、雇用問題の現状、国際機関の在り方ということで、浦田委員と、鷲尾委員、長谷川委員のお三方からお話を伺いたいと思っております。当初、レポーターとコメンテーターというふうに分けているのですけれども、特にこれは分けてお考えいただかなくても、要するに三人の方にお話を伺うということでよろしいかと思いますので、一つ宜しくお願い申し上げます。今日は本当にどうも有り難うございました。
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