近年の国際社会で「紛争予防」の概念が改めて見直されている。冷戦後の国連や地域機関における様々な試みを経て、紛争予防の概念の変化や、多様な主体の連携関係の在り方など新たなテーマが浮上したからである。本シンポジウムでは、冷戦後の「紛争予防」概念の推移を踏まえつつ、学術・実務の両面から総合的な検討が試みられる。
本シンポジウムの焦点となるのは以下の二つのテーマである。第一に、紛争予防の諸段階に着目し、各段階における効果的な紛争予防のあり方について議論を深め、これを「包括的紛争予防」という概念で提示する。
第二に、国際機関(国連)と各地域(欧州/アフリカ/アジア)における紛争予防の試みと実態を分析し、それぞれの有機的な連携関係について議論する。また紛争予防と紛争に対処する枠組も、国家、地域組織、国際機関等に加え、企業やNGOといった非政府主体がかつてないほどの役割を果たすようになってきている。こうした非伝統的なアクターが紛争予防においていかなる役割を果たしうるのか、また伝統的アクターとの関係はいかにあるべきか、これらのテーマが総合的に検討される。
第1セッション
第1セッションでは、紛争予防の諸段階を包括的に取り扱う概念としての「包括的紛争予防」の概念が紹介され、(1)紛争予防の前提条件である経済的・社会的条件の整備のための努力、(2)紛争予防の諸課題(eg. 緊急展開措置、早期警戒能力の向上のための制度強化)、(3)後期紛争予防と紛争拡大防止における手段と国際協調体制のありかた、(4)紛争後の平和構築、等が議論される。
第2セッション
第2セッションでは、(1)国連が地域的機関と協力して推進すべき新紛争予防戦略の形成に必要な政策、(2)国連と地域機関等を包摂する地域的アプローチ、及び紛争の推移のあらゆる段階での努力を継続的に行う包括的アプローチを組合わせた紛争予防戦略の枠組みの設定、(3)国連と地域的機関との間の緊密かつ有機的な協力の推進、(4)国家と非政府主体の協力関係の強化等が議論される。
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