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軍縮・不拡散


BWC東京セミナー
「BWC強化のための今後の方策」
(結果報告)

2002年7月


 2002年7月16~17日の2日間、東京において、日本外務省及び日本国際問題研究所軍縮・不拡散促進センターの共催により、生物兵器禁止条約(BWC)東京セミナー「BWC強化のための今後の方策」が開催された。民間のBWC研究者を中心とした11名のパネリスト、及びオブザーバーが出席した。

 このセミナーでは、BWC強化に向けての国際的努力に関する現状報告の後、(1)生物兵器(BW)の脅威の評価、(2)検証を中核とする伝統的アプローチの評価、(3)検証以外の新しいアプローチの検討、という3つの課題を設定し、主に技術的・専門的見地から、今後どのようにBWC強化を実現していくかについて検討が行われた。

 BWCの枠内では、既存の第4条(条約の国内実施)、第5条(協議及び協力)、第6条(国連安全保障理事会への苦情申し立て)といった規定の実施を促進すべきであるとの見解が示された他、従来の軍縮条約であるBWCの枠を越える形で、様々な措置が提案・検討された。

 議論の過程において、米国のBWCその他の国際条約に対する姿勢に関し、ユニラテラリズム的傾向を批判しマルチラテラリズムの必要性を指摘する声も上がったが、米国はマルチのアプローチには積極的に取り組んでいるのであり、米国のアプローチがマルチラテラルかユニラテラルかという議論は当たらないとの意見もあった。


1.BWの脅威の評価

 現在のBWの脅威について、バイオテロと、国家による計画及びテロ支援行為の2つの問題に分けて議論が進められた。バイオテロについては以前からあった問題であり、またそれによる疾病率・死亡率は一般的に低いので、昨今特に危険性が増えたわけではないものの、その脅威は心理的インパクト(恐怖とパニック)であるという点で意見が多くを占めていた。他方、国家によるBWC違反行為は今後も増える可能性がある点が指摘された。

 一般に、自然界に存在する危険な生物剤を単離することは比較的容易であるため、それらの移譲を規制することには意味がないという議論もなされたが、特に危険な生物剤については、国家による管理や条約等による規制は有効な対策であるとの指摘もあった。また、生物兵器の開発には特別な技術が不可欠であることから、剤よりもむしろ技術の規制を行うべきである、また、全ての国家による生物兵器防衛計画は国際的モニタリングの下に置かれるべきであるとの意見もあった。
 対処としては、ファースト・リスポンダー(警察、消防、病院)の整備、疾病サーベイランス、危機管理などの重要性が指摘された。また、テロリストはその目的に応じて方法や犠牲者の規模を選ぶことから、その目的を正確に評価する努力も必要であるとする意見も出された。


2.伝統的アプローチ:検証措置

 検証議定書統合テキストについては、締約国の公衆衛生にとって利益となり、全体として国際的な安全保障に資するものであるとして評価すべしとの見解が示された。その一方で、統合テキストに規定される検証措置については、査察及び明確化のための訪問はBWの開発・生産等の検証のために有効であるとしつつ、それが実効的であるためには、化学剤と異なる生物剤の特性を考慮して、検証の手法を改善する余地がある旨が指摘された。被査察サイトへの迅速なアクセスを確保する必要があること、生物剤は少量であっても短時間で増産することが容易であるため数量敷居値には意味がないこと、また、生物剤は遺伝子シークエンスによって出所の特定が比較的容易であることから、幅広く申告を求めることが望ましい等の意見も出された。

 BWCを巡る現在の状況を判断すると、法的な検証手段の導入について締約国間で合意される見通しがないため、むしろBWC強化のための有効な措置をどのように進めていくかを考えるべきであるとの指摘がなされた。その一方で、長期的には何らかの検証システムの創設が必要であるとの意見もあった。


3.新しいアプローチ:検証以外の措置

 国際社会は、国家によるBW拡散及びバイオテロの脅威に対処するという目的にとって必要な手段を考えるべきであり、そのためには多層的かつ多様な措置・道具が必要である、軍縮条約としてのBWCはその手段の一つに過ぎないとの意見が出された。これまでは国家によるBW拡散とバイオテロは別々に捉えられてきたが、2001年9月11日以降両者が一体化したこと、科学技術が急速に進歩しつつあり、伝統的軍備管理の枠では対応が困難になったこと、また産業におけるバイオ技術の普遍化によりBW対策に企業を組み込むことが不可欠になったことから、BW対処のためには伝統的な軍縮条約を越えた新たな考え方を持ち込んでいくことが必要であるとの見解が表明された。その際、BWCの規範を側面的に支援する様々な措置の積み重ねが重要である旨の指摘もなされた。

 2001年の第5回運用検討会議における米提案、及び2002年4月に公表された英国のグリーンペーパーについては、今後のBWC強化策検討のためのベースになるものとして一般的に評価された。

 また、BWCを強化する上で、ごく小規模な事務局を設置することが必要との意見が出されたが、これに対しては、具体的な目的・役割及び費用の問題があり、また、他の軍縮条約においては問題を抱える事務局もあるなど、そのフィージビリティについて疑問が投げかける声があった。核不拡散条約(NPT)の経験から、検討・調整を続けるためには、事務局ではなく、締約国会合、地域会合、非政府のセミナー等を通じて、ボールを転がし続けることが重要であるとの指摘もあった。

(1) 法的拘束力を有する措置

 生物・化学兵器の犯罪化条約、物理的防護に関する条約等について検討された。

 犯罪化条約についてはハーバード・サセックス・プログラムが提示したモデルがあり、今後例えば国連第6委員会で検討することも考えられるとの意見、また、犯罪人の引き渡しを義務づける法的枠組みが必要との見方もあった。その一方で、BWC第4条に基づく国内法による犯罪化で足りるとする発言もあった。

 物理的防護に関する条約については、モントレー研究所の提案に言及があった。

(2) それ以外の措置

 BWC違反の調査については国連事務総長による調査団の派遣という方法があるが、国連加盟国の要請に基づくしかないこと、被調査国の許可が必要なこと、対象は国家のみであってテロリストは含まれないこと、BWの使用を防ぐには不十分であること、等の問題点が指摘された。BWについて、CWCにおけるチャレンジ査察と同様のシステムについて検討することが必要であるとの発言がなされた。

 科学技術の発展がBWの深刻な脅威をもたらすことのないよう、科学者の作業グループを設立し、どのような科学技術の組み合わせがBWの脅威になりうるかを特定する作業を行わせるとの提案があった。また、個々の科学者の責任の問題について、行動規範を政府レベルで策定することは困難ではないが、国内・国際的な科学的団体にその必要性を納得させる必要があるとする意見も出された。

 信頼醸成措置(CBM)の拡大については、締約国間の信頼醸成を促進するものとして評価できるが、国家安全保障及び産業界へのインパクトがあるため、反対する国があるだろうとの発言があった。

 また、疾病管理については、有益な提案であるが、インテリジェンス情報の収集とも関連するため、世界保健機関(WHO)、国際獣疫事務局(OIE)といった国際機関は、自らの所掌範囲を超えるものについて消極的になるかも知れないとの見方が表明された。

 生物技術関連産業(製薬、バイオ組み替えなど)との関係では、日本の産業界がBWC強化のための報告書を作成したことが報告された。産業界と政府との間でフォーラムを作り公衆安全について話し合うなど、両者の関係を密にすることが重要である、特に査察のシステムが導入される場合には、産業界に対し、査察を受けることの利益(メリット)を納得させる必要があるとの意見があった。


4.11月の第5回BWC運用検討会議再開会合への取り組み方

 検証議定書策定のためのアドホック・グループの継続、締約国による条約遵守の問題など、再開会合の成果については予測不可能な問題がいくつか存在する。

 2001年11月の会合に引き続き、再度何も合意出来ない事態になると、国際社会に誤ったシグナルを与えてしまうことになる。そのため、セミナーでは、仮に最終文書を策定することは出来なくても、少なくともフォローアップ・プロセスは立ち上げたいとの見方で一致した。最終的には投票を行ってでもフォローアップ・プロセスを立ち上げることもオプションに入れるべきであるとの意見もあったが、投票は各国の立場の相違を際だたせるだけでプラスにならないとして、あくまでコンセンサスで合意に達するべきであるとする意見が大勢を占めた。


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