平成10年版外交青書の刊行にあたって
3年後に迫った21世紀に向けて、国際社会は安定し繁栄した世界を築くための努力を続けております。冷戦終結後の混乱はあったものの、民主主義と自由市場経済を重視する基本的考え方は世界に広く根付きつつあり、様々な地域紛争においても解決に向けての進展が見られます。アジア太平洋地域における日本、米国、中国、ロシアの4カ国の間での昨今の活発な外交活動にみられるように、21世紀に向けた新たな国際秩序づくりの動きも着実に進展しつつあります。その一方で、昨年来アジア各国が直面している経済問題のように、各国が共同で対処することが必要とされる事態も生じており、次の世紀に向けて国際社会は様々な課題を一つ一つ乗り越えて行かねばなりません。
豊かで平和な社会を次の世代のわが国国民に引き継ぐためには、このような国際情勢の現状と変化を正しく見極めて、日本外交のあり方を考えていかねばなりません。この外交青書では、昨年一年間の国際情勢の動きと日本外交を振り返っています。そこで述べられている1997年の日本外交の課題と成果を踏まえた上で、98年の新たな国際情勢の展開に即して、これからの外交を進めていきたいと考えております。
外交は政府だけで行うものではなく、その推進には国民の皆様の御理解と御支援とが不可欠であります。この外交青書が国際情勢と日本外交に対する皆様の御理解を深める一助となり、私がモットーとする「国民と共に歩む外交」を推進していく支えとなることを願ってやみません。
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