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COLUMN

在外公館の現場から~在ロンドン日本国総領事館での領事業務~

英国には居住者として登録されている邦人が約6万人、旅行者として訪れる邦人は年間約30万人にも上ります。そうした中、当館では、邦人援護事案が増加の一途をたどっています。先日も窓口に旅券と所持金をくすねられた旅行者が当館に来られましたが、事件で精神的に不安定になり、パニックに陥ってしまいました。

私たちはまず総領事館精神科顧問医に診察を依頼し、帰国の可否を判断。次に航空会社に事情を説明し特別な配慮を要請。また、滞在費は所持していたクレジットカードの会社と交渉し、緊急キャッシングをお願いしました。その日は宿泊先へお連れし、ホテル側にも配慮を依頼しました。

翌日、その方が事件後ほとんど食事をとられていなかったので、昼食にお連れしましたが、そのころには表情もかなり穏やかになり、最後は空港までお送りし、無事ロンドンから出発させることが出来ました。後日、帰国の報告とともに、心のこもった礼状をいただきました。

上述の事案は、邦人の方の援護がうまく進んだ一例でしたが、重度の統合失調症、記憶喪失、薬物中毒など多様な方々も窓口に来られます。これらは個々に複雑な背景事情もあるためマニュアル的な対応は難しく、その都度、誠意を以て臨機応変かつ迅速な対応を心掛けています。

我々は、上記のような事例を含め年間600件以上の邦人援護事案を扱っています。仕事のため、休日返上や対応が早朝・深夜に及ぶことも珍しくありません。それでも、いざという時の邦人の支えとなるよう、微力を尽くしています。これからも、多くの方の力も借りつつ、英国に来られる邦人の安全が守られるよう、努力していきたいと思います。

在ロンドン日本国総領事館 領事  作田 誠

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