2. |
領事サービスと日本人の生活・活動支援 |
(1) |
領事サービスの向上 |
在外公館による国民へのサービス全体の向上について継続的に取り組んでいる。2007年には、在外13公館が約1,700名の国民を対象に領事サービスへの満足度等に関するアンケート調査を実施するなど、更なるサービスの向上に向け、自らの取組につき検証・評価を行った。アンケートの結果、領事窓口や電話での対応ぶりについて8割以上の国民から肯定的な回答を得ている一方、在外公館のホームページ等電子情報サービスの内容が充実しているとの意見は3割にとどまった。外務省は、この結果を真摯(しんし)に受けとめ、引き続き領事サービス向上のための取組を進めていく。
2003年に初めて在外10公館に派遣し、国民に対するサービス向上に貢献してきた第1期領事シニアボランティアは、2006年にその任務を終了した。領事シニアボランティアは、民間企業等において海外勤務の経験を有するシニアの人材であり、在外公館において、通常の領事サービスの提供のほか、日本人からの様々な相談にきめ細かくこたえること、また、これらの業務を通じ国民に対するサービス向上のため様々な対策を講ずることを任務としている。
第1期領事シニアボランティアの活動は、海外在留邦人から非常に高い評価を受けており、外務省としては、サービス向上に係る国民の期待にこたえるため、2007年10月、在外6公館に各1名の領事シニアボランティア(第2期)を派遣した。
在タイ日本国大使館で活躍する領事シニアボランティア |
(2) |
パスポートに関する施策(海外渡航の円滑化のための取組) |
イ |
IC旅券の発行と今後の課題 |
(イ)パスポートの偽変造や第三者による不正使用防止を強化するため、日本は、2006年3月から、生体情報(現在、顔画像のみ)が電磁的に記録されたICチップを搭載したパスポート(IC旅券)を発行している。2007年12月末までのIC旅券の発行数は約760万冊となっており、これは、現在有効な旅券の約23%となっている。
(ロ)11月20日に、日本の主要空港の出入国審査場にIC旅券読取機が設置された。これらの措置により、ICチップに記録された顔画像と、パスポートを提示した人物の顔を照合できるようになり、他人によるパスポートの不正使用(本人へのなりすまし)の発見が容易となった。テロ対策の一環として、今後、各国の出入国審査においてもIC旅券読取機の設置が進むことが見込まれ、世界的なIC旅券の一層の普及が期待される。
IC旅券の導入により、盗難旅券の写真を差し換える等の変造が困難となった一方で、今後はパスポートの不正取得をいかに防いでいくかが課題となっている。そのため、これまで以上に、パスポートの申請及び交付の際に、厳格な本人確認を徹底していくことが求められており、各国で更なる取組も開始されている。
旅券(パスポート)発行数の推移
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(注)公用旅券には、外交旅券も含む。 |
ロ |
より身近になるパスポートの申請 |
(イ)日本国内における旅券事務は、以前から都道府県が法定受託して行っているが、2004年6月の旅券法改正により、2006年3月20日から、都道府県の判断で旅券事務を市町村に再委託することができることとなった。2007年12月末現在、市町村へ旅券事務を再委託しているのは1都1道9県であり、合計140の市町村でパスポートの申請と交付の業務を行っている。
(ロ)パスポートの申請から交付までの所要時間を短くするため、現在、IC旅券作成機は、日本国内60か所の都道府県のパスポートセンター及び183の在外公館(年間発給件数が非常に少ない一部の公館を除いたほぼすべての公館)に配備されている。このように、国内外に幅広く、IC旅券作成機を配備し、申請から発給まで1週間前後で対応している。これは世界的にもあまり例を見ない。
(3) |
在外選挙 |
1998年の公職選挙法の一部改正により在外選挙制度が創設されて以来、在外選挙は、衆議院及び参議院の比例代表選挙に限定されていたが、2006年6月に公職選挙法が再度改正され、2007年6月以降に行われる在外選挙から、衆議院小選挙区選挙及び参議院選挙区選挙(これらの補欠選挙、再選挙を含む)も対象となった。これにより、2007年7月の参議院議員通常選挙において、制度創設後6回目となる在外選挙が実施され、10万人を超える在外選挙人名簿登録者のうち約2万4千人が比例代表選挙及び選挙区選挙の投票を行った。また、これと並行して在外において初めて補欠選挙(衆議院岩手県第1区及び熊本県第3区)が行われた。
海外で投票するためには、事前に在外選挙人名簿に登録して在外選挙人証を入手する必要がある。在外公館では、在外選挙制度に関する広報や遠隔地に居住する在留邦人を対象に登録受付出張サービスを行うなど、その登録数の増進に努めている。
1. 在外公館投票
在外選挙人名簿に登録されている有権者は、投票記載場所を設置している在外公館(大使館や総領事館等)で、在外選挙人証と旅券等を提示して投票することができる。投票できる期間・時間は、原則として選挙の公示日または告示日の翌日から在外公館ごとに決められた日までの、午前9時30分から午後5時までとなっている(ただし、投票できる期間・時間は、在外公館により異なる)。 ※有権者は在外公館投票と郵便投票のいずれかを自ら選択して投票することができる。 |
2. 郵便投票
郵便投票を行うためには「在外選挙人証」と「投票用紙等請求書」を登録先の市区町村選挙管理委員会に送付して、あらかじめ投票用紙を請求し、日本国内の選挙期日における投票終了時刻(日本時間の午後8時)までに投票所に到達するよう、登録先の市区町村選挙管理委員会に送付する。 ※投票は公示日または告示日の翌日から開始されるため、投票用紙への記載及び記載した投票用紙の送付は公示日または告示日の翌日以降に行う。 |
3. 日本国内における投票
在外選挙人は、選挙の時に一時帰国している場合や帰国後国内の選挙人名簿に登録されるまでの間は、国内における選挙人と同様の投票方法(期日前投票、不在者投票、選挙期日における投票)を利用して投票することができる。 |
(4) |
海外での日本人の生活・活動に対する支援 |
イ |
日本人学校・補習授業校への支援 |
海外で生活する日本人にとって、子供の教育は大きな関心事の一つである。外務省では、海外においても国民が適切に教育を受けることができるよう、文部科学省と連携して日本人学校及び補習授業校への支援(校舎借料・現地採用教員謝金・安全対策費等の一部援助等)を行っている。近年、海外に在留する日本人子女数は増加傾向にあり、今後もこれらの支援を継続・強化していく方針である。
ロ |
医療・保健対策 |
外務省では、医療事情の悪い国に滞在する国民の健康相談実施のため、国内医療機関の協力を得て巡回医師団を派遣しており、2007年には37か国55都市に派遣した。
また、海外で流行している感染症等の情報、各国・地域の一般的医療事情等の情報を収集し、海外安全ホームページや在外公館ホームページ等を通じて広く国民に対する情報提供に努めている。この一環として、高病原性鳥インフルエンザのウイルス(H5N1型)が変異することにより、ヒトからヒトに感染する新型インフルエンザが流行する危険性が高まっているとの指摘を踏まえ、関連する情報の収集及び在留邦人に対するこれら情報の提供に力を入れている。
ハ |
多様化するニーズへの対応 |
被爆者健康手帳を所持する在外被爆者は、2005年11月から在外公館経由で各種手当等の申請を行うことが可能となり、2007年末までに在外公館で420件の申請を受け付けた。
また、在外公館では、海外に在住する日本人高齢者への支援として、現地日本人団体、ボランティア団体等による日本人高齢者の医療・介護問題等への取組(会議、セミナー、イベント等の開催や高齢者からの各種相談受付等)に対し、各種会合に参加して助言を行うなど側面的支援を行っている。今後とも高齢者の海外渡航が増加すると見込まれることから、国内関係機関とも連携の上、支援の継続・強化を検討している。
さらに、外務省では海外在留邦人の滞在国における各種手続き(滞在・労働許可、運転免許切替え等)の煩雑さを解消するための取組を継続して行っている。具体的には、EU諸国との間では各国に対し滞在労働許可や運転免許切替えに関する手続きの迅速化・簡素化等を働きかけているほか、米国に対しては、米国査証の米国内での更新手続きの再開や各州運転免許制度の改善を働きかけている。また、2007年に開催されたタイ、フィリピン、トルコ、中国及びイランとの各領事当局間協議において、日本人に対する査証や滞在・労働許可等の早期発給、運転免許切替え手続きに係る申入れを行った。2007年には、日本からの働きかけにより、デンマーク、ノルウェーにおいて運転免許の切替えに際しての試験の免除が実現し、デンマーク、ドイツ、ベルギー、ノルウェーについては、それまで現地の運転免許取得に伴い当局に没収されていた日本の運転免許証の返還措置(ベルギーは一時返還措置)が実現した。さらに、台湾においては、一定期間は日本の免許証で運転することが可能となった。
在外における子女の就学形態の推移