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 2.

日本の対中南米外交政策(3つの柱)


 (1) 

経済関係の強化


日本は、中南米地域を、グローバル経済における生産・輸出拠点、天然資源・エネルギーの一大供給地、有望な市場として重視し、経済関係の強化に重点的に取り組み、活発な政策対話を行っている。

ブラジルとの経済関係は、貿易高が約5年でほぼ倍増、2007年には大型投資案件の発表が相次いだ。3月、両国経済人をメンバーとして、「日伯戦略的経済パートナーシップ賢人会議」が発足、7月に、鉄鋼業、バイオ燃料、インフラ整備等における協力の進展が両国の経済関係を強化する上で重要であるとの提言を、安倍総理大臣及びルーラ大統領に提出した。これを踏まえ、8月の麻生外務大臣のブラジル訪問時にも、経済関係の再活性化、高度化に向け協力することで一致した。

メキシコとの間では、2005年に発効した日墨経済連携協定(EPA)の下、両国間の貿易・投資の実績は飛躍的に拡大し、同国は日本にとって中南米最大の貿易相手国である。4月~5月には松島みどり外務大臣政務官が、ジャマイカ、キューバとともにメキシコを訪問し、日墨EPAのビジネス環境の整備に関する委員会に日本側議長として参加した。8月に麻生外務大臣がメキシコを訪問した際には、カルデロン大統領との間で、日墨EPAがメキシコの雇用促進、競争力強化に貢献しており、さらに中小企業、裾野産業を育成することが重要であることで一致した。

チリとは、9月に日本・チリ経済連携協定(EPA)が発効した。発効時には、バチェレ大統領が訪日し、日本・チリEPAの発効を祝し、その最大限の活用をうたう共同声明が発表された。

ボリビアからは、3月にモラレス大統領が訪日し、日本側と意見交換を深めた結果、同大統領は、投資家と対話しつつ改革を進めていきたい旨こたえている。

このほか、パナマ運河拡張計画への日本企業の参画、デジタルテレビの日本方式普及、クリーン開発メカニズム(CDM)等の新しい分野の協力の可能性も拡大している。特にデジタルテレビに関しては、12月、海外で初めて日本方式を導入したブラジルで放送が開始された。



 (2) 

地域の安定的発展への貢献


日本は、中南米各国政権の、貧困や社会格差是正に向けた適切な努力を支援していく方針である。これまでにも、日本は、1990年以降、33か国中27か国でトップドナーとなったことがあり、また、1995年から2007年5月中旬までに、2,356の学校、8,964の教室を整備する等、大きな実績を上げた。今後も貧困・格差是正、教育・人材育成、医療分野等での支援を実施していく方針である。

また、中南米地域はハリケーン、地震、火山噴火等の自然災害に脆弱な地域であり、日本は災害時には、緊急援助物資や緊急無償資金協力の供与により迅速な支援に努めている。

さらに、米州機構(OAS)の選挙監視活動を通じ、中南米地域の民主主義の定着にも貢献している。2007年には、グアテマラ大統領選挙、コロンビア地方選挙の際にOAS選挙監視団に財政支援と要員派遣を行った。

国際社会の支援の下で治安の確保と民主主義の定着を目指すハイチに対しては、食糧援助や感染症対策のための予防接種強化計画等、平和の定着に向けた支援を実施している。


2007年の中南米地域への災害緊急援助実績

8月  ペルー地震の際、約1,600万円相当の緊急援助物資、130万米ドルの緊急無償資金協力を実施。
8月  ハリケーン・ディーンの被害を受けたジャマイカに対し、約1,500万円相当の緊急援助物資を供与。
9月  ハリケーン・フェリックスの影響による集中豪雨の被害を受けたニカラグアに対し、約1,100万円相当の緊急援助物資を供与。
 11月  熱帯性暴風雨「ノエル」の被害を受けたドミニカ共和国に対し、約1,300万円相当の緊急援助物資を供与。
 11月  メキシコ南部で起こった大規模洪水等の災害に対し、約1,400万円相当の緊急援助物資、約4,800万円の緊急無償資金協力を実施。


 (3) 

国際社会での協力


民主主義・市場経済が定着した中南米諸国は、今や「共益」を語れるパートナーとして、国際社会の諸課題に共に協力していく重要な国々である。

気候変動をはじめとする環境分野での協力関係については、6月、ジャグデオ・ガイアナ大統領が訪日した際に、「クールアース50」の発表後初となる首脳レベルでの共同声明を発出し、9月のバチェレ・チリ大統領の訪日時にも、同様の共同声明が発出された。さらに、メキシコのカルデロン大統領は、9月の日墨首脳会談において、「クールアース50」の提案を評価し、両国は、気候変動問題に関して具体的な協力を検討するため、協議を行うことで一致した。

また、アジアと中南米地域との関係強化を目的として設立された東アジア・ラテンアメリカ協力フォーラム(FEALAC)において、日本は両地域間の経済関係の強化とともに国際社会の諸課題について意見交換を積極的に進めてきている。8月にブラジリアで開催された第3回外相会合においては、麻生外務大臣がスピーチを行い、気候変動、貿易・投資促進、開発、国連改革等の課題について日本の考え方を説明しつつ、両地域間の一層の関係強化の重要性を指摘し、次回FEALAC外相会合の日本開催を表明した。

その他の協力例として、例えば、「人間の安全保障」の概念を国連において広めるため、日本とメキシコが共同議長となって非公式会合を開催したり、包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准を促すため、コロンビアから関係者を招聘するなどした(2008年1月批准書寄託)。


写真・来日したジャグデオ・ガイアナ大統領と会談する安倍総理大臣

来日したジャグデオ・ガイアナ大統領(左)と会談する安倍総理大臣(右)
(6月26日、東京 写真提供:内閣広報室)


写真・第3回FEALAC外相会合でスピーチをする麻生外務大臣

第3回FEALAC外相会合でスピーチをする麻生外務大臣(8月22日、ブラジル)


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