第3章 分野別に見た外交


(2)海洋を巡る諸問題

 日本は四方を海に囲まれ、広大な海と接する海洋国家であり、航行の自由をはじめとした海洋の法的秩序の在り方は、国益に大きな影響を与える。中国との関係では、排他的経済水域(EEZ)・大陸棚の境界が未画定の東シナ海における中国による一方的なガス油田開発を巡り見解の対立が続いているほか、2006年には韓国との間でEEZの境界未画定水域における海洋の科学的調査を巡って緊迫した事態が生じた。こうした問題への対応に際して、日本は、一貫して国連海洋法条約をはじめ国際法を遵守すべきとの立場を堅持しており、このような法的な主張の適否が決定的な重要性をもっている。政府としては、国連の主要な司法機関である国際司法裁判所(ICJ)や国際海洋法裁判所(ITLOS)の判決等も踏まえ、引き続き国際法にのっとった平和的な解決を目指して努力しているところである。

 また、近年、深刻な状況となっている海賊問題については、日本が提唱した「アジア海賊対策地域協力協定」が9月に発効した。日本は、その発効に向け、各国による締結の促進に努めるとともに、その発効後は、同協定に基づく国際機関である情報共有センターへの初代事務局長の派遣など、この分野の「法の支配」の推進に積極的に貢献してきている。




<< 前の項目に戻る 次の項目に進む >>