第3章 分野別に見た外交


8.国際社会における「法の支配」の強化

【総  論】

 国際社会における「法の支配」については、近年、その意義がますます高まっている。例えば、2006年には、国連において法的な問題を扱う国連総会第六委員会で初めて「国内・国際レベルにおける法の支配」が議題としてとりあげられた。

 国際社会における「法の支配」には、(1)各国国内における「法の支配」を条約の締結等を通じて確保していくというルールづくりの側面と、(2)国家間の紛争を国際法に基づき平和的に解決していく-という紛争処理の側面の双方が含まれていると考えられる。

 国際社会における「法の支配」の有するこのような2つの側面は、いずれも日本の外交政策上重要な課題である。また、国際社会における「法の支配」の推進は、国際社会の平和と安定を維持するために役立つのみならず、日本と近隣国をはじめとする各国との関係を強化するための基礎となり、また、経済活動を含む個人の活動の自由を確保することにもつながるものである。

 上記(1)の観点からは、様々な分野での「国際的ルールづくり」に積極的に参画し、これを普遍的なものにしていく努力が重要である。例えば、国際人権・人道法の分野では、活動を本格化させつつある国際刑事裁判所(ICC)への協力等の取組があり、経済活動を円滑化するとの観点からは、世界貿易機関(WTO)やEPA/FTAの締結等により経済面での国際ルールを発展させていくことがある。

 上記(2)の観点からは、具体的な外交政策の立案・実施及び紛争の解決に際して、国際法を適切かつ積極的に活用することが重要である。特に、海洋を巡る問題の交渉等を通じた平和的な解決に当たって、国際法の重要性が増している。また、国際社会における有力国である日本が国際法を活用していくことを実績として積み重ねることで、国際社会における「法の支配」の定着に積極的に貢献できるとの側面を見逃すべきではない。

 このような中、日本としても、国際社会の「法の支配」の基礎となる国際法規範の形成に向けた国際社会の取組に積極的に参画している。具体的には、国際法の漸進的な発達と法典化の促進を目的とした国連国際法委員会(ILC)や国連総会第六委員会における議論や、様々な分野での条約作成作業に積極的に貢献しており、11月には山田中正委員がILC委員再選を果たした。




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