第3章 分野別に見た外交


(2)行財政改革

(イ)国連マネジメント改革

 国連は、その活動、財政規模ともに、創設以来拡大をたどってきたが、近年、加盟国への事務局の説明責任や効果的マネジメントの在り方の重要性が、改めて認識された。マネジメント・事務局改革を課題の一つとした2005年9月の「成果文書」を受け、2006年前半は、行財政の在り方の見直しを求める議論が活発に行われたが、見直しの速度・深度について加盟国間の溝が埋まらず、十分な成果は得られていない。

 そうした中で、予算・財政に関する政策・規則等の見直しの分野では、日本の主導により、国連が緊急の活動に対応できるよう、事務総長の予算執行上の柔軟性・裁量が認められることとなった。

(ロ)国連分担率交渉

 2006年は3年ごとに改訂される国連分担率の交渉年であった(2007年~2009年分)。政府としては、国連分担率が加盟国の経済実勢に則し、かつ国連における地位及び責任が適切に考慮されるように、より衡平かつ公正なものとなるべきとの考えに基づき、安保理常任理事国にその特別な地位と責任にかんがみ最低限の負担を求める提案、及び経済規模の大きい低所得国に対する割引の見直しを求める提案を提出するなど、分担率交渉に積極的に参画した。

 2006年の分担率交渉では、各国から14もの提案が提出され、各国の主張や利害が交錯したことから、厳しい交渉となった。日本を含め各国が提出した見直しのための諸提案は、いずれも加盟国の広範な合意を得ることができず、最終的には算定方式を変更しないことで妥結した。

 日本が提案したような算定方式の見直しは実現しなかったが、日本の分担率は最近の経済力を反映して16.624%となり、従来の19.468%に比べ加盟国中最大となる2.844%(ポイント)の引下げが達成された。また、主要国との関係においても、これまで日本の負担が英国・フランス・中国・ロシアの安保理4常任理事国の計を上回っていたことから過大と認識されていたが、2007年以降は同4か国の計を下回ることになった。日本の分担率が大幅に引き下げられ、日本の負担の適正化及び主要国との不均衡改善が図られることになった。

 COLUMN

日本の国際連合加盟50周年

 2006年、日本は国際連合(国連)加盟から50周年を迎えた。加盟日に当たる12月18日には、天皇皇后両陛下の御臨席の下、国連加盟50周年記念式典が執り行われた。

 日本が国連に加盟したのは、戦後復興が始まって間もない1956年12月18日のことであった。1952年のサンフランシスコ平和条約の発効後間もなく、日本は国連に加盟を申請したが、冷戦下の東西対立の中で当時のソ連が反対し、その実現には更に4年の歳月が必要とされた。1956年、日ソ共同宣言により、両国の国交が正常化されたことで、加盟実現への障害は取り除かれた。同年12月12日、安全保障理事会での全会一致の加盟勧告を経て、18日、国連総会は日本の国連加盟を満場一致で採択した。

 日本の国連加盟が実現されたことは、日本の国際社会への真の復帰を象徴する出来事となり、重光葵外務大臣は加盟当日の受諾演説の中で、国連の事業に参加しかつ憲章の目的及び原則を自らの行動の指針とする旨を述べ、国連の目的に誠実に奉仕する決意を明らかにした。

 それから半世紀、日本は国連を一貫して重視し、その活動を支援してきた。唯一の被爆国として核軍縮・不拡散の旗振り役として活躍してきたほか、安全保障理事会で非常任理事国を9期(ブラジルと並んで加盟国最多)、経済社会理事会で理事国を15期務めるなど、世界の平和と繁栄に関する加盟国間の議論に積極的に参画した。近年では、「人間の安全保障」の理念の普及をはじめ、平和構築や人権の主流化といった国連を通じた新たな取組においても、自らの経験等をいかしつつイニシアティブを発揮してきた。

 財政面でも、加盟当初2%に満たなかった日本の国連通常予算分担率は、1986年には米国に次いで第2位になり、2007年現在16.624%となっている。また、国連の各基金・計画や専門機関に対する拠出金の額でも、日本は常に上位を占めている。

 国連加盟以来50年、様々な分野で積み重ねてきた日本の貢献は、各国からも高い評価を得ており、国際社会における日本の確固たる地位の礎となっている。現在、日本は、自らの常任理事国入りを含む安全保障理事会の改革をはじめ、国連改革の進展に向けた努力を続けている。日本としては、21世紀の世界を反映し改革された国連を通じ、責任ある大国としての地位にふさわしい貢献を引き続き行っていく考えである。



▲加盟翌日、国連事務局ビル前に掲揚される日本国旗
中央が重光外務大臣
(1956年12月19日 (c)UN Photo)



▲国連加盟50周年記念式典(12月18日)



▲国際連合加盟50周年記念貨幣(写真提供:独立行政法人造幣局)



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