第2章 地域別に見た外交 |
5.湾岸諸国等情勢
湾岸諸国は、外交面では、湾岸協力理事会(GCC)の結束、アラブ・イスラム諸国との連帯を外交の主要な柱としているが、現実的には、対イラク政策、中東和平問題への対応に不信感を持ちつつも、米国との関係を最も重視している。イエメン・GCC関係については、サウジアラビアがGCCとイエメンの関係強化に前向きの姿勢を示しており、11月にロンドンで開催されたイエメン支援国会合ではGCC加盟国による積極的な支援姿勢が示された。 湾岸諸国は、過去と比較して依然高い水準にある原油価格の影響により、潤沢な歳入を享受しているが、石油・天然ガス輸出に過度に依存し、労働力の多くを外国人労働者に依存するという経済構造は大きく変化していない。若年層の雇用問題は依然として深刻な社会問題であり、自国民労働力の能力向上と経済の自国民化の推進が共通の課題となっている。 国政選挙の実施が続き、民主化の流れとして注目された。クウェートでは6月に国民議会選挙が実施され、初めて女性が立候補し、当選者は出なかったものの政治参加が実現した。イエメンでも9月に大統領選挙及び地方評議会選挙が行われたほか、バーレーンでは11月、12月に第2回下院選挙が行われ、初の女性議員が誕生した。アラブ首長国連邦でも、12月に初の国政選挙として連邦国民評議会選挙が行われ、女性議員が誕生した。また、サウジアラビアでは、これまで国王の決定にゆだねられていた皇太子の選出など王位継承のための手続きが明文化された。 治安問題については、大きなテロ事件の発生は見られなかったものの、2月にサウジアラビアで、イエメンでも9月にテロ未遂事件が発生し、潜在的なテロの脅威は継続していると見られる。 要人往来については、麻生外務大臣が、1月に政府特派大使としてクウェート(ジャービル首長逝去の際の弔問)を、5月には第5回アジア協力対話閣僚会合のためカタールを訪問した。また、8月には、イラク訪問に際して、サマーワで活動する自衛隊視察のためクウェートを訪問した。額賀防衛庁長官は7月にクウェートを訪問し、航空自衛隊が対イラク支援のための活動拠点としているアリー・アル・サーレム空軍基地を視察した。4月には、サウジアラビアのスルタン皇太子が来日し、重層的かつ戦略的パートナーシップの構築を表明する共同声明を発表した。 経済関係については、貿易・投資分野での関係緊密化を背景に、日本とGCC間のFTA交渉が9月に開始されたほか、アラブ首長国連邦及びクウェートとの租税条約交渉の開始、サウジアラビアとの投資協定交渉及び航空協定交渉の再開など、関係強化のための具体的取組が活発化した。また、カタールとの間では、11月に日・カタール合同経済委員会の第1回会合が行われ、麻生外務大臣、甘利経済産業大臣、アティーヤ第二副首相兼エネルギー・工業相が参加し、投資・エネルギー分野で関係強化を図っていくことで一致した。 |
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