第2章 地域別に見た外交 |
2.中東和平 (1)イスラエル・パレスチナ紛争及びレバノン情勢の現状、国際社会の取組 1月25日、パレスチナ自治区では、パレスチナ立法評議会(PLC)選挙が行われ、ハマスが過半数の議席を獲得して第一党となった(3月29日、ハマス主導のパレスチナ自治政府内閣が成立)。ハマスは、イスラエルを承認せず、対イスラエル武装闘争を掲げていることから、イスラエルは、パレスチナ自治政府内閣との接触を停止し、2月以降パレスチナ自治政府への税還付を凍結した。米国、EU、国連、ロシアからなる「カルテット」は、ハマス主導の自治政府内閣に対して非暴力、イスラエルの承認、イスラエルとの過去の和平合意遵守を求め、欧米諸国は、パレスチナ自治政府への直接支援を控えた。さらに、米国の制裁を懸念して民間銀行資金の流入も減少した。このため、パレスチナ自治政府は深刻な財政難に直面し、公務員給与の未払いが生じ、公共サービスが著しく低下した。 さらに、ガザ地区を中心に情勢が悪化した。6月25日にガザ地区で発生したパレスチナ武装勢力によるイスラエル兵士の拉致事件を契機にイスラエル軍がガザ地区に侵攻、パレスチナ武装勢力はロケット砲発射で応酬した。イスラエル軍はパレスチナ自治政府内閣の閣僚やPLC議員を多数拘束するなどした。11月26日にイスラエル・パレスチナ自治政府間でガザ地区における停戦が発効し、12月23日には、オルメルト・イスラエル首相とアッバース・パレスチナ自治政府大統領との間で1年6か月ぶりに首脳会談が開催され、税還付凍結の一部解除などが表明されるなど、前向きな動きが見られた。パレスチナ内部では、現状を打開すべくファタハとハマスとの間で、国際社会に受け入れられる挙国一致内閣の樹立に向けた話合いも行われているが、他方では両者間の武力衝突も起きており、予断を許さない状況となっている。 他方、レバノンでは、7月12日、イスラム教シーア派武装組織ヒズボラがイスラエルとの国境でイスラエル兵を襲撃し、8名を殺害、2名を拉致する事件が発生すると、イスラエルはレバノンへの空爆と地上部隊投入を開始した。これに対し、ヒズボラはイスラエル北部の都市へのロケット砲攻撃で応酬した。この紛争は、安保理決議第1701号の採択を受けて8月14日に停戦が発効するまで継続した。その後は、同決議に定めるレバノン軍の南部展開や国連レバノン暫定隊(UNIFIL)の増強によりイスラエル・レバノン間の情勢はおおむね鎮静化している。他方、レバノン国内では、ヒズボラなど親シリア派とセニオラ首相ほか反シリア派の対立が激化。11月には、親シリア派閣僚6名が辞任を表明し、反シリア派のジュマイエル工業相暗殺事件が発生した。大衆行動も開始されるなどレバノンの政治情勢は不安定な状況となっている。 |
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