第2章 地域別に見た外交 |
(2)ロシア情勢
(イ)ロシア内政 プーチン大統領は高い支持率と経済の好調を背景に安定した政権運営を行った。 社会面では、「優先的国家プロジェクト」に基づいて、各分野における改革を推し進めた。また、人口減少の克服を最重要課題と位置付け、旧ソ連諸国に居住するロシア人の自発的移住を支援する国家プログラムを作成するとともに、出生率の向上を目的とした補助金の交付や、死亡率の減少のための保健分野の改革を行う等の対策に着手した。 政治面では、2007年12月に国家院(下院)選挙、2008年3月には、プーチン大統領の任期満了に伴う大統領選挙が予定されており、2006年後半は、これら選挙に向けた政党の再編が活発化し始めた。なお、プーチン大統領は、自らの三選の可能性を累次否定している。また、緊急の政権課題であるテロ対策の取組の一環として、「国家反テロ委員会」を設置するなど、テロ対策に対する国家システムの基盤を固めた。 チェチェン問題に関しては、独立派武装勢力の最強硬派と目されていたバサエフをはじめとする一連の独立派指導者が、政権側の掃討作戦により死亡し、また、国家院によるテロリストの恩赦決議の採択や連邦政府側による投降の呼びかけに応じる形で、多数の戦闘員が投降したが、チェチェン及び周辺地域では小規模なテロ行為が依然として発生しており、不安定な情勢が続いた。 (ロ)ロシア経済 2006年のロシア経済は、8年連続でプラス成長(対前年比6.7%)を維持し、8月には対パリクラブ債務を繰上げ完済した。経済の成長は、主として石油の国際価格高騰を背景とするものであり、エネルギー輸出に大きく依存した構造は変わっていない。このため、加工・ハイテク分野で計6か所の経済特区の運用を開始し、国内産業の育成・発展や地方の開発を通じた経済基盤強化を図っている。 また、石油及び天然ガスの分野に加え、原子力、非鉄、製造業、運輸等の分野においても国家管理の傾向が強まった。 (ハ)ロシア外交 プーチン政権は活発な首脳外交を展開し、市場の確保など経済的要素を重視しつつ、欧米との関係を維持するとともに、アジア、中南米、アフリカなどあらゆる地域との関係強化を図った。また7月には、G8サンクトペテルブルク・サミットを成功裡に開催した。 プーチン大統領は、CIS諸国をロシア外交の優先地域と述べており、中央アジアにおける影響力回復やウクライナとの関係改善の兆しが見られた。その一方で、親欧米国であるグルジアとの関係が複雑化した。 また、ロシアは欧米諸国との協調の維持に努めているが、欧米諸国からはロシアのエネルギーをてことした外交や国内の民主主義状況に懸念を表明するなど、批判も見られた。なお、11月には、ロシアにとって長年の課題であるWTO加盟に向けた米露二国間交渉が妥結した。 アジアでは、7月に初の中印露首脳会談が開催されるなど、中国、インドとの良好な関係を維持した。また、韓国、東南アジア諸国との関係促進の動きも引き続き見られた。 |
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