第1章 概 観 |
(アジア・大洋州地域)
中国と韓国は、それぞれ日本との間に年間400万人を超える人的往来があることに表れているとおり、日本にとって極めて重要な隣国である。 中国との間では、日中21世紀交流事業を開始した。この事業により、1,000名規模の中国の高校生が日本に招聘され、また、日本の高校生が中国に派遣された。10月には安倍晋三総理大臣が中国を訪問し、胡錦濤国家主席との間で、「政治」と「経済」という2つの車輪をそれぞれ力強く作動させ、全世界の課題の解決に共に取り組む共通の戦略的利益に立脚した互恵関係を構築していくことで一致した。また、2007年日中文化・スポーツ交流年の実施を発表するとともに日中有識者による歴史共同研究を立ち上げることでも一致し、12月に第1回会合が開催された。一方、東シナ海資源開発問題については、東シナ海を平和・協力・友好の海にするとの認識で一致した。 また中国は、経済発展のための安定した国際環境確保のため、積極的な全方位外交に乗り出している。その一環として、11月に中国・アフリカ協力フォーラムを開催し、多くのアフリカ諸国の首脳が中国を訪問した。また、上海協力機構(SCO)を通じて中央アジア諸国との関係を深めている。日本は、中国が国際社会の諸問題の解決に関与する姿勢を歓迎しているが、他方で、対外援助の在り方を含め国際社会の規範にのっとった行動をとることを求めている。 安倍総理大臣は10月、中国に引き続いて韓国を訪問し、盧武鉉大統領と会談を行った。両首脳は、日韓関係が日韓両国のみならず東アジア地域、さらには国際社会にとって極めて重要との認識で一致するとともに、未来志向の友好関係構築に努力することで一致した。 日本は、東アジア地域協力の中心的役割を果たしているASEAN諸国とも引き続き関係強化を図っている。2006年には、安倍政権成立後最初の3か月間でベトナム、インドネシア及びフィリピンとの間で首脳の往来が行われる等、各国との連携が更に進展した。また、東アジアでは、地域協力も進展しつつある。2007年1月にはフィリピンで第2回東アジア首脳会議(EAS)が開催され、安倍総理大臣は、アジア・ゲートウェイ、エネルギー安全保障、21世紀東アジア青少年大交流計画、平和構築分野の人材育成等を柱とする東アジア協力案件を提示した。 さらに、日本は、外交の新機軸として打ち出した「自由と繁栄の弧」の形成をアジアにおいても推進し、普遍的価値の共有を基礎とした長期的な安定を実現していこうとしている。その推進に当たっては、インドやオーストラリアといった、域内に存在する安定的な民主主義国との協力を特に重視している。2006年は、麻生外務大臣のインド・オーストラリア訪問やマンモハン・シン・インド首相及びダウナー・オーストラリア外相の訪日、日米豪閣僚級戦略対話の実施等を通じて、両国との関係が緊密化した。 |
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