第1章 概 観 |
2.2006年の国際情勢と日本外交の展開 (日本と世界の安全の確保) 2006年には、日本の平和と安全に対する重大な脅威となる事件が発生した。 北朝鮮は、7月5日、テポドン2を含む7発の弾道ミサイルを発射し、10月9日には、核実験を実施した旨の発表を行った。日本は、これらの挑発的行動に対し迅速に行動した。ミサイル発射直後には、これを日本の安全保障や国際社会の平和と安定等の観点から重大な問題であるとする官房長官声明を発表するとともに、北朝鮮の貨客船・万景峰92号の入港禁止や北朝鮮からの入国審査の厳格化等の措置を発表した。さらに、国連安保理非常任理事国として積極的な外交努力を行い、その結果、7月16日、ミサイル発射を非難する安保理決議第1695号が採択された。核実験実施発表の際には、同じく官房長官がこの核実験実施発表は断じて容認できない旨を発表するとともに、北朝鮮籍船舶の入港禁止、北朝鮮からの輸入禁止、北朝鮮籍を有する者の原則入国禁止等の措置を決定した。そして、10月の北朝鮮が発表した核実験については、国連安保理議長国として、安保理理事国に積極的に働きかけを行った結果、10月15日、北朝鮮及び国連加盟国がとるべき措置を定めた安保理決議第1718号が採択された。また、12月に約1年1か月ぶりに再開された第5回六者会合第2セッションは具体的な成果なく終了したものの、2007年2月に開催された同第3セッションは、北朝鮮による寧辺の核施設の活動停止及び封印等を内容とする文書を採択し、朝鮮半島の非核化に向けた第一歩を踏み出した。さらに日本は、北朝鮮に対して、拉致された日本人の安全確保及び即時帰国、真相究明並びに拉致実行犯の引渡しを求めてきているが、いまだに解決していない。 東アジアにおいてはこのほかにも、中国の軍事力の近代化や国防費の増大について依然として不透明さがある。また、両岸関係についても、経済関係や人的交流が発展する一方で不安定な状況は続いており、引き続き注視していく必要がある。 日本は核兵器を持たない国であり、世界的な核軍縮や不拡散のための取組を進めてきている。国際社会は、北朝鮮やイランの核問題等、重大な挑戦に直面しており、日本もその解決に取り組んでいる。 2006年にはエネルギー安全保障も活発に議論された。国内でエネルギー資源を十分に確保することができない日本にとって、エネルギー安全保障は重要な課題である。この問題は、ロシアが主催した主要国首脳会議(G8サミット)でも主要な議題となった。しかし、そのロシアが、EU諸国との関係をより重視しているウクライナやグルジアに対して天然ガスの供給停止や価格引上げ等の措置を行ったことは、エネルギーの一部をロシアに依存しているEU諸国の懸念を生んだ。また、中央アジア・コーカサス諸国を中心に、石油や天然ガスのパイプラインが建設されているが、新たなルートの設定を巡り、関係国の間でさや当てが見られる。複数のエネルギー関連プロジェクトをロシアとともに進めている日本は、ロシアがエネルギー供給国として責任ある役割を果たすことを求めている。 世界的な感染症問題として、鳥インフルエンザのヒトへの感染が拡大し、新型インフルエンザ出現の脅威はますます高まり、予防・安全対策に関する日本の取組及び国際協力が強化された。 |
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