官民のパートナーシップで「日本ブランド」の発信を
毎年1月、スイスのスキー・リゾートとして知られるダボスに、世界各国から2,000名を超える経営者、政治家、有識者が集まり、「世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)」が開催されます。そこでは、世界経済、政治、社会、文化などの問題について200以上もの分科会が開催され、政府や企業を率いるトップリーダーたちが熱い議論を繰り広げています。
日本経済が緩やかに回復を続ける中で、2006年のダボス会議には日本の閣僚や経営者が例年以上に参加し、「日はまた昇る」ことを世界に印象付ける上では絶好の機会でした。しかし、参加者の関心は急速な経済成長を続ける中国、インドに集中し、私はここ数年間参加していますが、日本の存在感が年々薄らいできていることに、あらためて危機感を強くしました。
人口減少を迎え、資源も乏しい日本が、中長期的に国際競争力を維持・向上させていくことは並大抵のことではありません。日本の発展のためには、世界中の優れた人材、資本、情報が交わる拠点となり、高い付加価値を持つ「日本ブランド」をつくりあげた上で、世界に向けて発信していくことが必要です。それは、民間の努力だけでなく、ソフトパワー (注) を重視する外交戦略の一環としても重視すべき課題だと思います。
諸外国では、官民の積極的なパートナーシップで、自国ブランドをアピールする例が数多く見られます。例えば、首脳・閣僚が外国を訪問する際、その国を代表する企業経営者が多数同行し、自国製品のPRや自国への投資拡大のために一緒に活動することがあります。また、海外の建築コンペや芸術コンクールで自国の作品が入賞した場合、現地の大使館がその紹介を兼ねた記念レセプションを開催するという話を耳にしたこともあります。このような活動の背景には、自国の「ブランド」を担う企業、製品・サービス、個人などを海外にアピールすることは、一企業、業界、個人の個別利益のためではなく、国全体の豊かさへの貢献や魅力の発信につながるという明確な哲学があるのです。日本の外交においても、各国のベスト・プラクティスに 倣 なら いながら、「日本ブランド」発信に向けた創造的な官民パートナーシップが築かれることに期待しています。
執筆:社団法人 経済同友会 代表幹事 北城 恪太郎

▲日本とASEAN諸国の企業経営者の交流・議論の場である、「日本・ASEAN経営者会議」にて講演をする北城氏(写真提供:経済同友会事務局)
(注)良い理念や文化によって相手を敬服させ、魅了することによって自分の望む方向に動かす力。 |