第4章 国際社会で活躍する日本人と外交の役割


(2)海外生活支援

(イ)日本人学校・補習授業校支援

 海外で生活する国民の主な関心が、現地の治安、教育、医療事情であることを踏まえ、外務省では、海外における国民の安全と利益を増進するための環境整備の一環として、文部科学省と連携して日本人学校(85校)及び補習授業校(185校)に対する支援を以前から行っており、特に、日本人学校の安全対策に重点を置いて取り組んでいる。

(ロ)巡回医師団派遣・新型インフルエンザ等の医療情報の提供

 医療事情の悪い開発途上国に在留する邦人の健康相談のために、国内医療機関の協力を得て、1972年から巡回医師団を派遣しており、2005年には31か国に派遣した。

 また、海外における感染症流行等の医療事情についても、各国政府や世界保健機関(WHO)等の情報をもとに、渡航情報等の発出を通じて広く情報提供に努めている。

 特に、アジアから欧州まで拡大が見られる高病原性鳥インフルエンザ(H5N1型)のウイルスが突然変異して、ヒトからヒトへ感染する新型インフルエンザが発生する危険性が高まっている。11月に政府が「新型インフルエンザ対策行動計画」を策定する一方、外務省も対策本部を設置し、国際協力と在留邦人支援の観点から、関係省庁及びWHOや国立国際医療センター等の外部関係機関と連携・協力しつつ、取り組んでいる。

(ハ)多様化する行政ニーズへの対応

 在外被爆者(被爆者手帳を有する者)はこれまで、被爆者援護法に基づく健康管理手当等各種手当及び葬祭料の支給申請を、日本で行わなければならなかったが、11月30日から在外公館経由で行うことが可能となった。

 日本国内と同様に、特に先進国の大都市圏においては在留邦人等の高齢化問題が深刻な問題となることが将来予想される。このため、管轄区域の在留邦人が最も多い在ニューヨーク総領事館のイニシアティブにより、現地の日系社会や高齢者介護問題に詳しい有識者等の意見交換の場が設置された。また、在フランス大使館では、領事シニアボランティアが現地日系団体「マロニエの会」と協力して、高齢の邦人への相談業務を積極的に行っている。

 社会保険料の問題については、韓国(4月)、米国(10月)との社会保障協定が発効し、ベルギー、フランスとの間で署名された社会保障協定は国会で承認された(7月)。また、カナダとの間で協定につき大筋合意に至ったほか、オーストラリア、オランダともそれぞれ交渉を行っている。

 外国運転免許証の取得については、日本からの働きかけを踏まえ、チェコで、日本の運転免許から同国の運転免許への切替えを可能とする法令改正がなされた。




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