第3章 分野別に見た外交


(2)海賊対策

 日本は、石油や鉱物等のエネルギー資源の輸入を海上輸送に依存し、特に石油はほとんどすべてが東南アジアの海上を通過している。アジアにおける海上の安全確保は、日本の海上輸送にとって重要なだけでなく、この地域全体の安定と経済の発展にも極めて重要である。

 アジアでは1990年代後半から、海賊事件が急増傾向にある。2004年に全世界で発生した330件の海賊事件のうち、約65%に相当する214件が東アジア及びインド洋を含むアジア地域で発生した(図表「海賊事件報告件数」参照)。なお、2005年3月に日本船籍のタグボート「韋駄天」が、マラッカ海峡で襲撃を受け、船長ほか2名が誘拐される事件が発生している。

 近年の深刻な海賊発生状況を受け、2001年11月のASEAN+3首脳会議において、小泉総理大臣が海賊問題に対する地域協力促進のための法的枠組みを提唱した。それ以後、日本の主導の下に交渉が継続され、2004年11月に「アジア海賊対策地域協力協定」が採択された(日本は2005年4月に締結)。本協定の早期の発効を通じ、アジア地域における海賊情報の共有体制や各国協力網の構築を通じた海賊対策の促進が期待される。

 

▼海賊事件報告件数




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