第3章 分野別に見た外交


(1)エネルギー安全保障

▼原油価格の推移

 

 2005年は中国・インド等といった途上国の経済成長に伴う需要の増加等を受け、前年に引き続き多くの資源価格が上昇した。さらに、米国南東部のハリケーン災害によって米国・メキシコ湾岸の石油供給が途絶したことを一因に、原油価格(WTI:ニューヨーク商品取引所における世界最大規模の原油先物指標)は8月30日、1バレル当たり70.85ドルの史上最高値を記録した。日本は高油価の継続が世界経済に与えるリスクを懸念し、国際エネルギー機関(IEA)の協調的備蓄放出(計6,000万バレル)に積極的に参加した。9月17日、ニューヨークで行われた日・GCC外相会合では、町村外務大臣がGCC諸国に対し、また在外公館を通じ各産油国に対して増産を働きかけた。

 

 

 エネルギー市場の透明性の向上、原油の安定的かつ適切な供給の確保、エネルギー効率の改善・省エネといった分野で、日本は国際協力の強化を引き続き積極的に推進した。IEAを通じて、他の加盟各国と協調し国際的な取組を強化するとともに、5月のIEA閣僚理事会や11月のサウジアラビアでの国際エネルギー・フォーラム常設事務局新庁舎開所式及び韓国でのAPEC首脳会議、12月のマレーシアでの東アジア首脳会議等の場において、各国と意見交換した。11月に東京で行われた日露首脳会談の際には、両政府間で東シベリア-太平洋パイプラインの建設や省エネ及びエネルギー効率向上の推進、投資環境整備等の協力を確認した日露エネルギー協力文書が署名された。日本は自らのエネルギー供給の確保のみならず、全世界的なエネルギー安全保障の向上に向けた積極的な経済安全保障外交を推し進めている。




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