(3)各地域情勢
(イ)東部地域
エチオピアでは、5月の国政選挙の結果、メレス首相が3選を果たした。エチオピア・エリトリア国境問題では、10月以降、エリトリアが停戦監視等を任務とする国連エチオピア・エリトリア・ミッションの活動に制限を課したため緊張が高まった。1991年以降、無政府状態が続くソマリアでは、1月に暫定連邦政府が樹立された。ケニアでは、11月に憲法改正国民投票が否決されたことを受けて大統領が一時全閣僚を解任した。タンザニアでは、12月に大統領選挙が実施され、キクウェテ新大統領が選出された。ウガンダでは、北部地域における反政府勢力の活動は沈静化しつつあるが、依然として160万人を超える難民・国内避難民が存在している。ケニア、タンザニア及びウガンダの三国間では、東アフリカ共同体(EAC)の下、1月に関税同盟が正式に発効した。
(ロ)南部地域
アンゴラは10月に独立30周年を迎えた。スワジランドでは、1973年以来憲法が停止されていたが、2005年7月に国王が新憲法草案を承認し、2006年2月に発効した。南アフリカでは、6月にズマ副大統領の元側近が贈賄及び詐欺容疑で有罪判決を受けたことにより、ムベキ大統領は、事件への関与が取りざたされていた同副大統領を解任した。ジンバブエでは、3月に国民議会選挙が実施され、与党が圧勝したが、欧米諸国は「自由かつ公正」な選挙プロセスが確保されなかったとの厳しい評価を下した。同国では5月には「ゴミ片づけ作戦」と称する不法居住区の建造物の撤去が行われるなど引き続き国際社会との緊張関係が続いている。
(ハ)中部地域
コンゴ民主共和国では、和平合意に基づき2006年6月末までに議会・大統領選挙を実施することになっており、その第一歩として12月に国民投票によって新憲法が採択された。ブルンジでは、議会選挙、大統領選挙が行われ、ンクルンジザ大統領政権が成立し、1993年に勃発した内戦からの平和的移行が完了した。ガボンでは11月に大統領選挙が行われ、現職のボンゴ大統領が再選され、1967年の就任以来、アフリカの現職大統領の中で最長の任期(7期、39年目)を務めることとなった。中央アフリカではクーデター後初の議会選挙、大統領選挙が行われ、ボジゼ暫定大統領が6月に正式に大統領に就任した。チャドではスーダン国境付近で反政府活動が活発化し、スーダンとの関係悪化を含め、2006年に予定されている大統領選挙に向け政治的不安定要素が増加している。
▼アフリカにおける主な紛争(2006年2月現在)
(ニ)西部地域
従来紛争が多発していた西部地域は平和の定着に向け、一進一退の一年だった。2004年11月以来情勢が悪化していたコートジボワールでは、AU及び国連の調停を受け、10月に任期を満了したバグボ大統領が最大12か月元首にとどまることになったものの、12月にバニー新首相が就任し、和平プロセスを引き続き進展させることとなった。2月のトーゴにおけるエヤデマ大統領死去に伴う内政混乱は大統領選挙の実施により、8月のモーリタニアにおけるクーデターも民主化プロセス進展により、いずれも沈静化している。10月から11月には、リベリアで大統領・議会選挙が平和裡に実施され、2006年1月にジョンソン・サーリーフ女史がアフリカ初の民選女性大統領として就任した。このほか、暫定政権下だったギニアビサウでも7月の大統領選挙で選出されたヴィエイラ大統領就任により正式に政権が発足、11月にはブルキナファソで大統領選挙が実施され、現職のコンパオレ大統領が再選された。

▲(左)ローラ・ブッシュ米国大統領夫人、コンドリーザ・ライス米国国務長官と共にリベリア大統領就任式に出席する伊藤外務大臣政務官(2006年1月16日、リベリア・モンロビア)。(右)就任演説を行うエレン・ジョンソン・サーリーフ・リベリア新大統領
アフリカにおける日本のマラリア対策支援 ~住友化学(株)のオリセットネット~
熱帯・亜熱帯地域を中心に、世界中で感染例が報告されているマラリアは、ハマダラカという蚊によってヒトに感染して起こる寄生虫疾患です。特にアフリカでは被害が深刻で、世界中で年間約3億人が新たにマラリアに感染し、100万人以上が死亡していますが、そのうちの約9割がサハラ砂漠以南に集中しています。その大半は5歳未満の子供で、彼らの死因の第1位となっています。また、アフリカ全体で120億ドルのGDPがマラリアによって失われ、経済的影響も無視できない状況にあるのです。
この世界的に取り組むべき問題に、日本の企業が重要な役割を演じています。マラリア対策には蚊帳の使用が効果的ですが、住友化学(株)は、独自の技術により蚊帳を織る糸の原料である合成樹脂に防虫剤を練り込み、徐々に有効成分がにじみ出して洗濯をしても5年もの間効果が持続する「オリセットネット」を開発しました。タンザニアのウサリバ村ではすべての家にオリセットネットが配布された結果、マラリアに感染する人が激減し、子供を病院に連れていく回数も減少しています。この長期残効型蚊帳は世界保健機関(WHO)により正式に認定されましたが、その供給能力増強と輸送コスト軽減のため、住友化学(株)はWHOの要請を受けて、製造技術を無償でタンザニアの企業(A to Z Textile Mills社、以下A to Z社)に提供し増産に努めています。また、同社が出資するタンザニアの法人に対し、国際協力銀行は蚊帳の増産に必要な資金の貸付けを行っています。オリセットネットの生産が開始されてから、A to Z社では900人を新たに雇用しました。増産体制が整えば更に1,000人以上の雇用が創出されることになります。
日本政府は、アフリカに対する長期残効型蚊帳1,000万張の2007年までの供与を決定するなど、マラリアを含む感染症対策に重点的に取り組んできています。日本はこうした官民の連携により、マラリア予防のほか、アフリカへの投資推進を通じて、現地の雇用創出等の経済効果向上にも貢献しているのです。
▲ オリセットネット(薄い青色)の中で眠る子供。(提供:株式会社テレパック) |
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