(1)イ ン ド
コングレス党を中心とするシン内閣は、左派政党の閣外協力を得つつ、比較的安定した政権運営を行った。政権発足時に掲げた規制緩和や社会的弱者救済等の基本政策に基づき、農村開発や雇用対策に優先的に取り組むとともに、外資規制緩和や国営企業の民営化等の経済自由化政策を継続している。経済面では、引き続きIT産業の成長がめざましく、2004年度の実質GDP成長率は6.9%を記録した。なお、内政面では、国連のイラク・石油・食糧交換計画不正疑惑により12月にナトワル・シン外相が辞任した。
インドは、急速な経済成長を背景に各国との関係を強化し、国際社会における存在感を高めている。7月にはシン首相が訪米し、経済、安全保障、ハイテク等の分野での協力に加え、民生用の原子力エネルギー協力を行う方向で合意した。欧州諸国との間では、ブレア英国首相がインドを、シン首相がフランスを訪問した。9月の第6回インド・EU首脳会談では「インド・EU戦略的パートナーシップ」と題する共同行動計画に基づく関係強化が合意された。こうした西側諸国との関係強化と同時に、伝統的友好国であるロシアや隣国の中国との関係強化も進めている。特に中国との間では、4月に温家宝総理がインドを訪問し、「中印戦略協力パートナーシップ」の構築や、国境問題、経済、航空、文化交流等の分野での協力・対話の実施で合意した。中印間では経済関係の拡大が著しく、2004年度の貿易額は前年度比約7割増の120億ドルに達した。韓国、ASEAN等と経済連携に関する協議を進めるなど、他のアジア諸国との関係強化も積極的に進めており、12月のEASにはシン首相が参加した。
▼世界が注目するインド
日本との関係では、4月に小泉総理大臣がインドを訪問した際に、シン首相との間で、日印関係に戦略的方向性を付加することで合意し、共同声明「アジア新時代における日印パートナーシップ」とその行動計画である「8項目の取組」を発表した。これを受け、日印双方の産学官で経済関係強化の方途について包括的に協議する「日印共同研究会(JSG)」が作業を開始した。2006年1月の麻生外務大臣のインド訪問時には、外相間で戦略的観点から対話を進めること、JSGの作業を踏まえ経済連携協定の可能性を真剣に検討していくことが合意された。

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小泉総理大臣とシン・インド首相による首脳会談。会談後、日印パートナーシップが署名された(4月29日、デリー 写真提供:内閣広報室)
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