第2章 地域別に見た外交


4.南アジア

【総  論】

 2005年の南アジア地域は、前年から続くインド・パキスタン関係改善への動き、近年の経済成長等を背景に、安定を志向する機運が維持された。

 インド・パキスタン関係の改善に向けた動きでは、4月にパキスタンのムシャラフ大統領がインドを訪問して同国のマンモハン・シン首相と会談を行い、さらに、9月の国連総会、11月の南アジア地域協力連合(SAARC)首脳会議の際にも首脳会談が行われた。首脳レベルで関係改善の継続が確認される中、カシミール地方を分割する「管理ライン」を越えて同地方を横断するスリナガル-ムザファラバード間バスの運行開始、弾道ミサイル発射の事前通報に関する協定の調印等、具体的な信頼醸成措置もとられた。さらに、10月のパキスタン等大地震の際には、インドからパキスタンに援助物資が提供され、救援活動目的の人の往来や物資輸送を可能とするために「管理ライン」上の5か所が開放された。

 11月には約2年ぶりにSAARC首脳会議が開催され、南アジア自由貿易協定(SAFTA)、貧困削減対策、テロ対策、自然災害対策等に関して各国の協力の方向性を示すダッカ宣言が採択された。具体的進展は今後の課題であるが、高い経済成長のために、地域における通商貿易の拡大と安定を確保すべきとの点で意見が一致した。



▲アジーズ・パキスタン首相を表敬する麻生外務大臣(2006年1月5日、イスラマバード)


 日本との関係では、小泉総理大臣のインド・パキスタン訪問(4月)、バングラデシュのジア首相の来日(7月)、パキスタンのアジーズ首相の来日(8月)といった首脳級はじめ多くの要人往来があった。11月のSAARC首脳会議では日本のオブザーバー参加が原則として認められ、日本と南アジア諸国との友好関係が一層深化・強化された。また、前年末のスマトラ沖大地震及びインド洋津波、10月のパキスタン等大地震による甚大な被害に対する日本の支援も、南アジア諸国との関係強化を促進するものとなった。2006年1月には、10月に就任した麻生外務大臣が二国間協議のためのアジアで最初の訪問先としてインドとパキスタンを訪れ、両国との関係の更なる強化が図られた。




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