第1章 概 観 |
(欧州地域) 欧州連合(EU)は、2004年に中・東欧、バルト三国など10か国が加盟して25加盟国となったが、2005年には、トルコとクロアチアとの加盟交渉を開始し、マケドニア旧ユーゴスラビア共和国に対して加盟候補国の地位を付与することを決定した。他方で、EUの政治的・経済的統合の進展にとって重要な文書となる欧州憲法条約については、フランスとオランダの国民投票で批准が否決されたことを受けて、欧州理事会で批准期限の延長が決定された。 EUが1989年の天安門事件以来課している中国に対する武器禁輸措置に関しては、EU内で解除に向けた動きも見られたが、日本や米国は東アジア地域の安定の観点から反対しており、結論は先送りされている。 こうした個別の課題はあるものの、日本は、統合と拡大を背景に国際社会における影響力を一層増しているEUを、基本的価値を共有するパートナーと位置付けており、EUとの対話と協力を通じて、強固な関係を構築している。また、EU各国との間でも、二国間関係のみならず、国連改革やイラク復興、イランの核問題等の国際的な諸課題で緊密な協力を進めている。また、2005年は「日・EU市民交流年」として、日本とEUそれぞれにおいて種々の交流行事が開催され、「日本におけるドイツ2005/2006」もあわせて、人的交流が活性化した。 個別の国の状況に目を転ずると、英国では主要国首脳会議(G8サミット)が開催される中、連続爆弾テロ事件が発生し、フランスでは、11月にパリを含む大都市近郊地域で連鎖的な破壊行為が発生した。ドイツでは9月の総選挙の結果、メルケルCDU(キリスト教民主同盟)党首を首相とするCDU/CSU(キリスト教社会同盟)とSPD(社会民主党)との大連立政権が誕生した。 ロシアからは11月にプーチン大統領が訪日し、首脳会談が行われた。日露間の最大の懸案である北方領土問題については、これまでの様々な合意及び文書に基づき、両国が共に受け入れられる解決を見いだすよう努力することで一致したほか、12本の実務文書の署名等を含め、「日露行動計画」に基づく幅広い分野で協力を一層強化していくことで合意した。ロシアでは、好調な経済、安定した政権基盤の下、国民の生活改善策として大規模な社会改革計画「優先的国家プロジェクト」を発表する一方、経済への国家管理や非営利団体に対する規制の強化の動き等も見られた。外交においては、欧米諸国との協調関係を維持する一方で、天然ガス価格等を巡り一部の周辺国との間で問題が生じた。 旧ソ連諸国のうち、中央アジア地域では、ウズベキスタンとロシアの同盟条約締結等の動きが見られた。ウクライナとグルジアは、バルト、黒海地域の親欧米諸国と共に「民主的選択共同体」を創設した。 |
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