第1章 概 観 |
2.2005年の国際情勢と日本外交の展開 2005年は、依然としてテロの発生や核兵器をはじめとする大量破壊兵器の拡散という脅威にいかに取り組んでいくかということが国際社会の主要な課題とされた。同時に、新型インフルエンザの出現の脅威といった、いわゆる伝統的な脅威とは異なる課題に、国際協力及び国民の安全と安心の確保の両面からいかに対処するかということも重視された一年であった。 中東では、アフガニスタンとイラクにおいて政治プロセスが進展し、一定の成果が見られてきているが、国づくりのためには更なる国際社会の協力が必要とされている。また、復興支援を円滑に進める上でも、治安問題の解決が依然として重要な課題となっている。 核問題への取組では、北朝鮮については、日本、米国、韓国、中国、ロシア、北朝鮮による六者会合、2005年8月に国内でウラン濃縮関連活動を再開したイランについては国際原子力機関(IAEA)理事会の場やイランとEU3(英国、フランス、ドイツ)との間などで、それぞれ平和的解決に向けた協議がなされたが、いずれも解決に向けた具体的な見通しは立っていない。特にイランの核問題については、2006年2月に行われたIAEA特別理事会で、国連安全保障理事会(安保理)に報告することなどを内容とする決議が採択され、国際社会の焦眉の問題となっている。このように国際的な核不拡散体制が重大な脅威に直面する中、5月のNPT運用検討会議では、関係国間の立場の隔たりが収斂しなかったため、合意文書を作成することができず、また9月の国連首脳会合で採択された「成果文書」にも軍縮・不拡散分野に関する言及はなされなかった。今後とも、国際社会が一致して粘り強い努力を続けていく必要がある。 このような国際情勢の下で、日本は、(1)安全保障の確保と邦人安全対策を通じた「国民を守る日本外交」、(2)新たな国際秩序の構築に向けた「先頭に立つ日本外交」、(3)戦略的な情報発信による「主張する日本外交」、(4)情報収集やODA、文化を活用した「底力のある日本外交」-を2005年の重点的な目標として外交政策を進めてきた。 中でも、2005年の日本外交の最大の課題の一つは国連安保理改革であったと言える。9月の国連首脳会合に向けて加盟国の間で国連の機能強化を目指す動きが高まる中で、日本は、ドイツ、ブラジル、インドをはじめとする各国と共に安保理改革実現のため活発な外交活動を展開し、国際社会における国連・安保理改革に向けた機運を高める上で重要な役割を果たした。 中東では、日本は、イラクの国づくりのために派遣している自衛隊及び「テロとの闘い」のためにインド洋に派遣している自衛隊の派遣期間を延長するなど、国際社会への協力を引き続き進めている。 日本にとってアジア近隣諸国との関係は極めて重要である。重要な隣国である中国の経済発展は、日本の将来にとって「好機」を提供するものであり、日中関係のより一層の発展は、日本外交の最重要課題の一つである。また、韓国は民主主義や市場経済等の基本的な価値観を日本と共有しており、首脳会談や外相会談を通じて日韓両国は率直に意見交換した。日本は2005年に初めて開催された東アジア首脳会議(EAS)においても主導力を発揮し、開かれた東アジア共同体の構築に向けた外交努力を行った。 2005年には、米国のハリケーンやパキスタン等での大地震、ロンドンやインドネシアのバリ島における同時多発テロ等により多くの犠牲者が発生したほか、鳥インフルエンザが世界的に拡大し、改めて海外における邦人保護や危機管理の重要性が認識された。外務省は、海外における国民の安全と安心を確保するため、渡航情報の効果的な発信、邦人援護体制の強化や領事体制・サービスの強化等の対策をとった。 また、日本で2005年日本国際博覧会(愛・地球博)が成功裡に開催され、日本外交にとっても重要な資産となった。 |
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