第1章 概 観 |
(世界の繁栄に向けた協力) 関税及び貿易に関する一般協定(GATT)に基づく自由貿易体制の下で、各国の高い関税率が引き下げられ、日本製品の輸出競争力も高まっていき、日本は豊かになった。世界の多くの国によって築かれる多角的自由貿易体制を構築し維持することは、世界の経済的繁栄をもたらし、貧困を除去する上で重要である。日本は、GATTを受け継いで貿易の自由化を進める世界貿易機関(WTO)での交渉に積極的に参画してきた。同時に、日本と相手国との間で共通の経済ルールを構築し、両国間の貿易・ 投資の自由化・円滑化を進めるため、経済連携協定(EPA)を通じた経済連携を推進している。 また日本は、1954年以降の51年間で185か国・地域に対し総額約2,300億ドルのODAを供与した(1991年からの10年間は、世界最大のドナー国)。特に東アジアや東南アジア諸国、インドに対する日本の支援は、これらの諸国で高い経済発展を呼び起こし、世界の重心をアジアに引き寄せることとなった。1990年代後半に起こったアジア通貨危機に際しても、日本は国際協力銀行(JBIC) (注2) を通じて供与されるODAやODA以外の政府資金(OOF)を通じて大いに貢献した。また、国際社会の安定と繁栄のためには、アフリカが抱える貧困、飢餓、感染症、紛争といった問題を解決することが重要であるとの認識の下、日本はこれまで、1993年以降3回にわたってアフリカ開発会議(TICAD)を開催するなど、TICADプロセスを通じて積極的に対アフリカ支援を行ってきた。 ODAの中でも技術協力を実施する国際協力機構(JICA) (注3) は、これまで166の開発途上国等に対して約28万人の専門家や調査団等を派遣し、ほぼ同数の研修員を受け入れている。また、JICAが派遣した約2万8,000人の青年海外協力隊員が各地で現場の関係者と一緒に汗を流して活動する姿は、「平和国家日本」が発展してきた姿を直接示すものともなっている。 そのほか、2004年12月のスマトラ沖大地震及びインド洋津波や2005年10月のパキスタン等大地震などに際しては、自衛隊の部隊や医療チームを含む国際緊急援助隊が派遣されており、災害地域の復興にも積極的に協力している。また、ジャパン・プラットフォーム(JPF)傘下の非政府組織(NGO)により現地のニーズに応じた緊急人道支援が展開された。 |
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