第3章 分野別に見た外交


【文化協力】
 文化協力は、途上国国民の誇りであり生活の一部でもある自国文化に対する支援として、国民の活力と自尊心を支えるものであり、貧困削減等を目的とする経済協力と並行して実施する必要があり、日本としてもこれを積極的に進めている。

(1)二国間の文化協力(イラクについては121ページ参照)
 日本は、二国間協力の枠組みで、開発途上国に対して、主に文化・高等教育活動に使用される機材を供与する「文化無償協力」を行っている。2004年には、ウズベキスタンで日本語教育・普及を推進する国立サマルカンド外国語大学に対するLL機材の供与や、ペルーにおける天文学研究・普及の拠点であるペルー地球物理学研究所に対するプラネタリウム機材の供与等、全世界で44件実施した(総額約19.4億円)。また、同じ枠組みで、人類共通の財産である文化遺産の保護を目的とした「文化遺産無償協力」も行っている。2004年には、エジプトを代表するユネスコ世界遺産の「王家の谷」にビジターセンター建設等の協力を行った。また、日本は、NGO等草の根レベルを対象とした小規模できめ細かな文化協力(「草の根文化無償協力」)も行っており、カンボジアのプノンペン市に対する楽器の供与、ブラジルのサンパウロ市のパウリスタ柔道連盟に対する柔道器材の供与等、全世界で22件実施した(総額約1.6億円)。

(2)ユネスコを通じた文化協力
 日本は、従来から、国際連合教育科学文化機関(ユネスコ(UNESCO))を通じ、有形及び無形の文化遺産の保存・振興に積極的な貢献を行ってきている。
 有形文化遺産(遺跡等)の保存については、ユネスコ文化遺産保存日本信託基金を通じて、これまでにカンボジアのアンコール遺跡、アフガニスタンのバーミヤン遺跡、パキスタンのガンダーラ遺跡など24か国において保存・修復事業を支援している。1月には、2003年末の大地震により甚大な被害を受けたイランのバム城塞遺跡を救済するため、50万ドルの拠出を決定した。イラクについては、文化面での戦後復興支援として、イラク国立博物館(文化財の修復研究作業室)の再生支援を実施しているほか、イラク復興開発信託基金への拠出を通じて、ユネスコが実施する各種事業を支援している。
 無形文化遺産(伝統芸能、陶芸・染色等の伝統工芸等)の保存については、ユネスコ無形文化財保存・振興日本信託基金を通じ、保存・振興のための支援を行っている。なお、日本は、2003年10月の第32回ユネスコ総会において採択された「無形文化遺産の保護に関する条約」を2004年6月に締結し、三番目の条約締約国となった(ただし、同条約は2004年末現在未発効)。

(3)第28回世界遺産委員会
 2004年6月28日から7月7日まで中国の蘇州で開催された第28回世界遺産委員会において、日本が推薦した「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界文化遺産に登録された。また、同会合では、アンコール遺跡が「危機に晒されている世界遺産リスト」から除外され、日本をはじめとする国際社会の同遺跡に対する協力・支援が実を結んだものとして高く評価された。

 



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