第3章 分野別に見た外交


第3節 人間の安全保障の推進に向けた地球規模の諸課題への取組

1 人間の安全保障の推進

【総論】
 グローバル化の進展によって、今までにない勢いでヒト・モノ・カネ・情報が国境を越えて移動し、人々に互いに影響を与える時代になっている。しかしながら、その負の側面として、エイズ等の各種感染症の流行、環境汚染、国際組織犯罪、テロ等の新たな脅威に国際社会は直面している。これに加え、冷戦終結後、国家間の戦争に代わって国内・地域紛争が多発し、これを政府として十分に管理できていないために(その究極的なものがいわゆる「破綻国家」である)発生している難民の流出や国内避難民も大きな問題となっている。また、大規模な自然災害により多数の人々が深刻な影響を受けた結果、被災国のみによる復興活動が困難になるというのも脅威の一例である。2004年12月に公表されたアナン事務総長の諮問機関である国連改革に関するハイレベル委員会の報告書(175ページ参照)では、このような現代の国際社会の直面する脅威を(1)貧困・感染症・環境悪化、(2)国家間紛争、(3)国内紛争、(4)大量破壊兵器(核、生物、化学兵器等)、(5)テロ、(6)国際組織犯罪の6種に類型化し、世界システムが国家間関係から国境を越えた人々の関係へと変化したと指摘している。このような考え方を背景として、国際社会としては、人間一人一人に焦点をあて、国家・国際社会による保護に加え、各国、国際機関、NGO、市民社会が協力して、人々が自らの力で生きていけるよう、人々や社会の能力強化を図っていく必要がある。これが、「人間の安全保障」の考え方である。

 



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