第3章 分野別に見た外交


5 国連

【総論】
 近年、グローバル化が急速に進展する中で、テロ、大量破壊兵器の拡散、貧困等、国あるいは地域のみでは対応することが困難な課題が増えている。21世紀の国際社会が直面しているこのような諸課題への取組を進めるにあたり、国際社会のほとんどの国が加盟していること、また、扱っている問題が非常に広範であるという意味で、唯一の普遍的かつ包括的な国際機関である国連の果たすべき役割が増大している。国連は、国際の平和と安全の維持を担う安全保障理事会(安保理)をはじめとして、傘下の諸機関とともに、開発、人権、女性、児童、感染症、環境、国際組織犯罪、難民、文化などの諸問題について、世界各国の政府や非政府組織(NGO)が集い、討議し、規範(世界的なルール)を作るための重要な場となっている。
 安保理は、冷戦の終結以降、経済措置、国連憲章第7章に基づく多国籍軍の設置、PKO、テロ対策委員会、不拡散に関する委員会の設立等、国際の平和と安全に果たす役割を拡大している。PKOについても停戦監視等を中心とした伝統的な活動(エチオピア・エリトリア、ゴラン高原等)から、民主的統治、復興等の平和構築を含む活動(東ティモール等)まで、その分野を拡大している。このように活動範囲が拡大し、かつ新たな課題に直面する安保理が効果的に行動するためには、安保理の機能の強化が不可欠であり、今や多くの国々の間で、国際の平和と安全の維持に主要な責任を担う意思と能力を有する国が安保理の決定に常時関与するような形で安保理の構成を改革すべきである、ということが共有された認識となっている。こうした中で、2004年は総じて国連の機能強化に向けて気運が高まった年であった。日本は、外交の1つの柱として国際協調を重視し、国連に対する多大な人的、財政的貢献を行ってきており、改革された安保理において日本が常任理事国となることは、日本自身及び国際社会にとって、大きな利益になると考えている。
 なお、2005年1月より2006年12月まで、日本は非常任理事国として2年間の任期を務めている。日本が非常任理事国を務めるのは、1996年選挙(任期1997年1月より1998年12月まで)に立候補して当選して以来であり、ブラジルと並んで加盟国中最多の9回目となる。日本としては、これまでの豊富な経験と能力を活かし、安保理のメンバーとして、国際の平和と安全に関する諸問題への対処に関してより一層積極的に貢献を行っていき、安保理改革の実現及び日本の常任理事国入りにつなげていく考えである。

 



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