第3章 分野別に見た外交 |
2 有事法制
国家と国民の安全の確保は、国家存立の基盤をなすものであり、そのための法制の整備は、日本の安全保障上の長年にわたる懸案であった。2003年6月、武力攻撃事態対処関連3法案が与野党の幅広い合意の下で成立し、政府の最も重要な責務である緊急事態への対処に関する制度の基礎が確立した。このことを受け、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律に加え、武力攻撃事態等に際し日米安保条約に従って行動する米軍を支援するための法制、武力攻撃事態における捕虜等の取扱いに関する法制、国際人道法の重大な違反行為の処罰に関する法制等の個別の法制の整備に取り組んだ結果、2004年6月14日に有事関連7法律が成立した。また、同日には、外務省として関係府省庁と緊密に協力しつつ準備を進めてきた3条約(自衛隊と米軍の間の物品・役務の相互提供の枠組みを定める日米物品役務相互提供協定(ACSA)を武力攻撃事態等においても適用するために改正するための協定、ジュネーブ諸条約第1追加議定書及び第2追加議定書)についても、それらの締結につき国会において承認された。日米物品役務相互提供協定(ACSA)を改正する協定は、6月29日に締結、7月29日に発効し、また、ジュネーブ諸条約第1追加議定書及び第2追加議定書については、8月31日に加入し、日本については2005年2月28日に効力を生じた。
武力攻撃事態対処法制は、外交政策の観点からは特に次の三つの点で重要である。
1)日米安保体制の信頼性を向上させ、日本の安全保障を一層確固たるものとする。
2)国際人道法の遵守を通じて日本に対する国際的な信頼を高め、国際秩序の強化に資する。
3)武力攻撃事態等が発生した場合の日本の対応について対外的に透明性を高める効果を持つ。
日本が、平和主義と国際協調の下、世界の平和と安定のために努力するとともに、国家の緊急事態への対処のため万全の態勢を整備しておくことは、日本の平和と安全を確保する上で極めて重要であり、政府としては、このような考え方の下、国民が安心して暮らせる国づくりに、引き続き努力していく考えである。
また、武力攻撃事態対処法制については、諸外国も関心を有しているが、政府としては、このような本法制の基本的な考え方や法制の全体像について各国に随時説明してきており、また、今後も必要に応じて説明していく考えである。
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